オープン戦が始まり、急ピッチでチームが仕上がっていった。
僕は原点に戻り、長所を生かした活躍を心掛けた。
理想は「打って、守って、走れる」3拍子揃った選手になることだが、ここまで野球を続けてくると自分の持ち味ぐらいは当然わかる。
僕の武器はあくまで「足」だ。
ここ一番で盗塁を決めたり、誰も生還できないような浅いヒットをホームインしたり、塁に出てピッチャーにプレッシャーをあたえたりと、足が速い選手がいるとチームにとって必ずプラスになる。
自分なりの走塁を磨き、塁に出るための打撃を磨きと、毎日やるべきことは山盛りだった。
ポジションも高校時代に守り抜いてきたサードを任され、守備面でのストレスはなくなった。
清水監督のおかげで、野球をする楽しみが甦った。腐っていた僕を生き返らせてくれたのだ。
試合での起用も段々と増え、期待に応える活躍ができた。
そして1年生の秋以来のレギュラーを、ほぼ手中にしたのである。
この年のセンバツには、母校・PL学園が2年連続で出場していた。
そのことが、僕の野球に対するモチベーションをさらに高めてくれていた。
1回戦は、昨夏に延長17回の死闘を繰り広げた王者・横浜高校。
昨年、春夏ともに辛酸をなめさせられた相手でもある。
試合はまたもや接戦となり、6対5でPLが雪辱を果たした。
当然、応援していた僕のテンションも最高潮に達し、春のリーグ戦への大きな活力となった。
PLは準決勝まで進み、延長12回のすえ、8対6で沖縄尚学に惜敗した。
結局、センバツは沖縄尚学が水戸商業を7対2で破り、沖縄県に初めて優勝旗が渡るという歴史的な大会となった。
奇しくも3季連続で、PLを下したチームが優勝したことになる。
そして昨年に甲子園を沸かせた松坂大輔投手は、西武ライオンズに入団。この年の4月7日にはプロ初先発でデビューし、155q/hの直球を披露。8回2失点の好投で初勝利をあげた。
この少しあと、千葉ロッテの黒木知宏と投げあい0対2の惜敗をしたときのコメント「リベンジします」は流行語にもなった。
それを知って、僕らもリーグ戦へリベンジしようと気合を込めていた。
春のリーグ戦が開幕した。
このシーズンで上がらなければ、神宮球場でリーグ戦をすることは完全になくなる。
優勝候補は長年2部でしのぎを削ってきた国士舘大学と、昨秋に1部から落ちてきた立正大学。そしてこれに中央大学が加わり、三つ巴の様相が漂っていた。
優勝の条件は、直接対決で勝ち点を取ることと、その他の大学で取りこぼしをしないこと。
1つ勝ち点を落とすだけで自力優勝の可能性がなくなってしまうし、1つの敗戦が致命的な結果になりかねない。
要するに勝ち点5をあげればいいのだ。
第1節の相手は国学院大学。
1戦目は花田が完封勝利で6対0、2戦目は打線が爆発し、13対6で勝利。上々の滑り出しを見せた。
第2節は国士舘大学戦。
早くも前半戦最大の山場が訪れた。
初戦は両者譲らず2対2の引き分け。国士舘の粘り強さに圧倒されながらも、僕らは踏張りを見せた。
絶対に落とせない2戦目は、1年生の古岡が先発。ルーキーながら圧巻の投球を見せ、見事に3対0とシャットアウト。
そして迎えた第3戦。この試合が僕らにとってのハイライトになるとは、この時点では誰もが思いもよらなかった。
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