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75.ベンチ要員に降格

心の乱れがプレーに影響

ロサンゼルス・キャンプでは、野球に関していえば、スランプのどん底に陥っていた。
この頃からスローイングがおかしくなり、思うようにボールが投げられなくなっていた。
原因はわからないが、心の乱れがボールに表れていたような気がする。
スローイングが悪くなると、不思議なもので捕球にも影響が出てくる。そのことで気が沈んで、バッティングも実が入らなくなるなど、全てにおいて悪循環になった。
そんな状態で、レギュラーになどなれるはずがない。
メンバーから外されることはなかったが、代走守備要員としてベンチを温めることが多くなっていったのである。

先輩との気まずい雰囲気

中央大学野球部は、かなり規律が緩かった
髪の毛を長くしたり、二日酔いのまま試合に出たり、試合中にタバコを吸ったりと、好き放題にやっているイメージが他の大学にも知れ渡っていた。
2年生という立場になったばかりの僕には、上級生としての自覚が出るはずもなく、また入寮したときのフレッシュな気持ちは消え始め、どっぷりとその自堕落な道に浸かろうとしていた。
先輩たちとの間にも、溝ほど大きくないかもしれないが、ギクシャクした空気を感じていたのも事実だ。
「稲荷、オマエちゃんとやったらレギュラーやぞ。なんで腐ってんねん」
「いいんです。適当にがんばりますわ」
そういう不毛な会話が、ロサンゼルスの青空の下でも交わされていた。

帰国後のオープン戦

アメリカキャンプが無事に終わって帰国した。
オープン戦が始まると、僕は予想どおりベンチに座っていた。
慶應義塾大学との試合では、高橋由伸(巨人)のバッティングに度肝を抜かれ、明治大学戦では川上憲伸のピッチングに絶句し、亜細亜大学赤星憲広の走塁に見張った。
早稲田大学では今治西の藤井明治大学では上宮の的場立教大学ではPLで一緒だった出井など、僕の同期生も主力としてがんばっていた。
そんな彼らの姿を見て、試合に出られない歯痒さはあったが、僕の野球への情熱が再燃するまでには至らなかった。
そういう精神状態のまま、オープン戦の日程を終え、いよいよ春のリーグ戦を迎えるのであった。

76章につづく

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