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68.キャンパスライフの始動

入学式はオープン戦のため欠席

4月になっても、寒さがやわらぐ気配はない。4月なのに大阪では雪が降ったという。
センバツで鹿児島実業が優勝したニュースが流れてからほどなくして、ようやく入学式の日を迎えた。
中央大学の春は美しい
学内に植えられた無数の桜の木が、僕らを祝福するかのように出迎えてくれた。 坂道をかけ上がると、学部別の校舎が立ち並ぶ。
真ん中に位置するのは、日本一の学食といわれる通称「ヒルトップ」。連日多くの学生が利用している。
残念ながらオープン戦のメンバーに選ばれたせいで、僕は入学式に参加することはできない。しかし、遠目からでも充分楽しそうな雰囲気を味わえることができた。
これで、正真正銘の大学生活が始まったのである。

専攻は文学部文学科国文学

数日後、初めて大学に顔を出した。
右も左もわからないまま、ひたすら文学部のある3号館を目指した。
僕は、文学部文学科国文学専攻だった。
じつは、推薦をいただいたときの希望は商学部だった。黒田さんのアドバイスでは、「簡単に卒業したい」と考えているなら、それが最善だったらしい。
文学部は卒業論文が辛いので、あまり勧められなかった。
でもよくよく考えたら、僕は文章を読んだり書いたりすることに興味があったので、あえて自分の学びたい道を選択してみた。
法学部だけはやめとけ
黒田さんからは、そのようなアドバイスも受けていたが、なぜ駄目なのかもわからないまま入学してしまったくらい能天気だった。
よくよく聞いてみると、法学部のレベルは高いってものじゃない。
中央大学の法学部はステータスにもなるほどずば抜けていたのだ。
親戚のおじちゃんに、「野球辞めて弁護士になれ」と、よく冗談を言われたのも、これでようやく理解できた。
今さらながら、おじちゃんの冗談に乗せられて、法学部を選んでいなくてよかったと、ほっと胸を撫で下ろしている。
そして、文章のすばらしさを学べた文学部を選んで、本当に正解だったとつくづく感じるのである。

クラスメートたちの歓迎

文学部の教室に入ると、クラスメートたちが快く出迎えてくれた。
どうやら担任の宇佐美先生が、なぜ僕が入学式を欠席したのかを、みんなに伝えていたみたいだ。
   
「野球部なんだって?」
「甲子園出たの?」
「高校はどこ?」
   
予想もしていなかった反響に少し戸惑いながらも、僕は嬉しさを隠せずにはいられなかった。
正直、野球以外の友達なんてできるとは思わなかったし、学校に通うのは億劫だなと思っていたので、みんなの優しさがたまらなく嬉しかった。

69章につづく

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