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32.波乱の銚子商戦の結末

ヒットでサヨナラのランナーに

7対7の同点で迎えた9回裏、先頭打者は僕だった。
「ヒットでもフォアボールでもなんでもいいから、必ず塁に出てやる!」
甘いカーブを見逃さずにミートした打球が、三遊間を抜けた。レフト前ヒットだ。
サヨナラのランナーが出た。
「よっしゃ! サヨナラのホームを踏むのは俺や!」
ここは当然、送りバントがセオリーの場面。ランナーの足は速いし、打順も上位打線に回る絶好のチャンス。
しかし、一番打者の諸麦がバスターを敢行し、内野ゴロでセカンドフォースアウトになってしまった。
結果的に、スコアリングポジションにランナーを進められなかった。
結局、このあと2番の渡辺が送り、2アウト2塁のかたちを作った。
1アウトと2アウトとでは、相手にあたえるプレッシャーは明らかに変わるし、打者にとっても気持ちの余裕が違ってくる。
後続が打ち取られ、この回は無得点に終わった。

瓦解したPLの不敗神話

ピンチのあとにチャンスあり
このフレーズを考えた人は、きっと天才に違いない。不思議なもので、ほとんどそうなる。
この試合が、まさにそうだった。
直後の延長10回表に、連続ツーベースヒットであっという間に勝ち越された
しかも、続くバッターにはレフトスタンドにツーランホームランを浴び、とどめを刺される始末。
万事休す……。
試合は10対7で負けた
目の前で何が起きているのか、いまだに信じられない自分たちがいた。
公式戦では12連勝中、一度も負けたことがなかったからだ。
僕らの不敗神話は、音を立てて崩れた
甲子園通路の足取りも、どんよりとしている空模様も、そして胸の中も、どれもこれもが重苦しかった。
「また出直そう。悔しいけど負けは負けや……」
こうして優勝候補筆頭のPL学園は、大会初日で甲子園をあとにした。
そして初戦でPLを破った銚子商業は、この大会、準優勝を飾ることになる。
優勝をしたのは、香川の観音寺中央だった。

守備を鍛え直すことが先決

センバツが終わり、浮き彫りになったチームの弱点克服が急務になった。
僕個人の成績だけをみれば、打っては4打数2安打、守っても全ての守備機会を無難にこなし、チームに貢献したといえる働きができた。
しかし、チーム全体ではどうだったか。
野球は団体スポーツであり、1人の力ではどうにもならない。逆に1人がダメでも、全員でカバーすることができる。
銚子商業戦で出たPLのエラーの数は5つ。記録にならないミスも何個かあった。
守りがいかに重要かは前にも述べたとおりだが、これだけ自滅すれば、いい結果が生まれないのは当然である。
ちなみに銚子商業のエラーの数は3つ
その差で負けたようなものだ。ミスをした方が負け、ミスをしないチームが勝つのが道理といえよう。
力勝負で負けたのなら諦めがつくが、ミスで負けたのでは悔いも残るというもの。
夏に同じことを繰り返さないよう、もう一度徹底的に守備を鍛え直すことを決意した。

33章につづく

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