迎えた第2戦。
勝てば1部残留が決定する、大事な一戦である。
初戦を白星で飾った僕らは、幾分余裕を持って試合に臨むことができた。
スターティングラインナップが灯された電光掲示板には、中央・古岡、立正・武田勝(→日本ハム)と、それぞれの先発投手が紹介されている。
「秋は今ひとつ調子があがらなかった1年生左腕のためにも、早いところ点を取って楽に投げさせてあげよう。先取点は絶対与えない!」
そう思わずにはいられなかった。
だが、悪い予感は大抵当たるというのが野球の妙だ。
古岡に対し、立正は初回にあっさりと先制。武田勝も上々の立ち上がりを見せ、いきなり重苦しい試合展開を強いられてしまった。
一方、中央も黙ってはいない。4回裏、久保のホームランで追いつき、一気に反撃ムードが高まった。
「いける、いけるぞ!」
しかし、その直後の5回表、リリーフした芦川の代わりばなを攻められ、またもや立正に得点を許し、再び追う展開にしまった。
なんとしても食らい付きたい中央も、その裏ノーアウトでチャンスを広げた。しかし、送りバントでランナーを進めることができず、これが勝負の分かれ道となった。
野球ではよく言われることだが、得点を奪った後あるいは奪われた後は、非常に重要だ。
奪った側は、「得点した」という安心感が油断に変わりやすく、失点されるケースが多い。
奪われた側は、「すぐに得点を返さないと相手に主導権を与えてしまう」という思いから、必死に食い下がろうとする。
こういう心境の変化が、試合を動かす要素になる。それを象徴するような展開だった。
リードを許した直後の5回裏にバントミスが出たのは、前打席でホームランを放った久保だった。
彼は第1戦での気迫の走塁、この第2戦でも本塁打を放つなど大車輪の活躍をみせていた。
打ち気満々の彼の心境と、ここは手堅く1点を返しにいくと送りバントを命じた監督との間に、気持ちのズレがあったのかもしれない。
一度傾いた流れは簡単には戻せず、7回、9回と立て続けに得点を奪われ、終わってみればスコアは6対1。
1部残留の青写真は、たちまち絵に描いた餅へと姿を変えた。
「なかなか簡単にはいかんもんやな。最後の最後まで大学野球ができる奴なんて、むしろ幸せやんか。明日は今まで培ってきたものを全て出そうぜ!」
敗北を引きずっている場合ではない。緊張の糸は絶対に切らしてはいけない。
この日注ぎ込んだ4人の投手は全て下級生だ。
明日の大一番は「エース・花田で有終の美を飾る」という監督の想いも伝わった。
最後はどれだけ1部に対する執着心があるかがカギとなる。
体力的にはもう限界だったが、ここまで来たらもう関係ない。
「勝って引退」
それだけだった。
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