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101.秋季リーグ・東洋大戦

第3節は東洋大学戦

第3節東洋大学
1年からレギュラーを務めるPL同級生前田も、これがラストシーズン。
昨秋、1部復帰の置き土産を残したエースの福原忍(広陵/阪神)はプロの世界へ。
今年のピッチングスタッフは、甲子園ボーイの鈴木功(越谷西/日本通運)、2年前の入替戦で苦汁をなめさせられた三浦貴(浦和学院/読売→西武)の2枚看板。そう簡単には崩れないだろう。
春に首位打者を獲得した久保田智(浦和学院/川鉄千葉→元ヤクルト)も要注意だ。
おもな出身のプロ野球選手は、達川(広島商/元広島)、松沼兄(取手二/東京ガス→元西武)、松沼弟(取手二/元西武)、仁村徹(上尾/中日→千葉ロッテ)、今岡(PL/阪神)、桧山(平安/阪神)、清水(浦和学院/読売→西武)、大場(八千代松陰/ソフトバンク)、大野(岐阜総合/日ハム)、田中大(如水館/中日)、永井(東農第二/楽天)で、中退ではあるが中日の落合博満監督も所属していた。
いずれにしても、過去の対戦では全くといっていいほど歯が立たなかった。
この辺りで勝ち点を奪わないと、2部との入替戦の可能性が高くなってしまう。
「せっかく1部に上がったのになんやこのザマは。入替戦だけはごめんやで」
僕らは悲壮な決意で試合に臨んだ。

1回戦で右の頬にボールが直撃

第1試合。
東洋大左腕・鈴木前評判通りのピッチングを披露。
今や苦手意識がついてしまった左ピッチャーに対し、凡打の山を築いていく。
「なんとかしよう。なんとかせなあかんで!」
勝つしかない僕らにとっては、右も左も関係ない。
ベンチの前で円陣を組み、気合いを入れる中央ナイン。気持ちだけは負けてたまるかと、心をひとつに声を張り上げる。
そんな矢先のことだった……。
   
――ガン!
   
アクシデントが僕を襲った。送りバントを試みた際、顔の付近に来たボールをよけきれずに、右の頬を直撃した。
「うわっ!」
静まり返るグラウンド。
僕はその場で倒れ込んだ。意識はあったが、激痛が走る。マネージャーに連れられ、慶應病院に向かう。
すぐにレントゲンを撮り、待っている間はアイシングで患部を冷やした。みるみる腫れ上がっていく顔を見たら、間違いなく折れたと思った。
試合の行方も気になるが、今はそれどころではない。頬をさすりながら絶望の淵を彷徨う。
そうこうしているうちにドクターに呼ばれた。
診断の結果は、なんと骨には異常がなく打撲だけだった。
不幸中の幸いだったのが、ボールの当たった箇所。少し左なら鼻を骨折、上なら失明になりかねないと言われてゾッとしたのを覚えている。
一目散に神宮へ戻ると、試合は終わっていた。
2対0の完封負けだった。これで5連敗である。

念願の1勝はしたが遠い勝ち点

寮に戻った僕らは、いつものメンバーで飲みに行った
「気晴らしにパーッと行って切り替えてこい」
監督の計らいだった。
何をしてもうまくいかない状況を見た上での、意図的なアドバイスだった。
酒の席についたところで、患部によくないからアルコールは飲めない。
ひとりで烏龍茶を飲みながら、リーグ戦の巻き返しを誓った
   
第2戦
ケガで欠場を余儀なくされた僕は、ベンチから声援を送った。
試合は接戦へもつれ込み、昨日投げたばかりの花田をリリーフに登板させるなど、監督も執念の采配を振るう。
この作戦が実を結び、6対4で勝利
ようやくリーグ戦での1勝を手にした。
   
続く第3戦。
勝ち点を奪うべく臨んだ僕らの前に立ちはだかったのは、第1戦に完封負けを喫した左腕の鈴木
最後まで捉えることができず、3対1の惜敗
優勝の可能性は完全に消え、勝ち点もお預けとなった。

102章につづく

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