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10.野球部寮生活の決まりごと

1年生が担当する寮の「仕事」

まず1年生は3班に分けられる
炊事当番、ロッカー当番、風呂当番の「仕事」と呼ばれるローテーションが組まれ、毎週担当する役割が変わっていく。
炊事当番は、練習が終わると基本的に食堂にいなければならない。先輩がおかわりと言えばご飯をつぎ、食事が終わったあとの下げ物などをする。全ての先輩が食事を済まされるまで食堂を出られない。
ロッカー当番は、練習が終わったらボールがグラウンドに落ちてないかチェックして回ったり、ノック用ボールとバッティング練習用ボールに分けたり、尚且つ内野ノックのボールは、ユニフォームにこすりつけるなどして、ビカビカに磨かなければいけない
風呂当番は、全員が風呂に入ったあと、掃除をする
1年生は全部で19人。だいたい6人で一つの班ということになる。
シニアリーグ出身者が5人、残りの14人がボーイズリーグ。地域別にみると、大阪が11人、奈良が2人、兵庫、京都、和歌山が各1人、遠くは岡山、静岡、鹿児島からも1人ずつ入寮していた。

野球部に入れるのはスカウト組だけ

PL学園は、前にも述べたように全寮生である。
野球部は「研志寮」と呼ばれる専用の寮があり、一般生の寮からは2km程離れている
8人用の部屋が8室あり、1、2、3年生が共同で生活をする。
中学生のときにスカウトされた者だけが野球部に入ることができ、一般生の入部は認められない。
同じ年に入った僕の仲間も、もちろんスカウトによってPLの野球部に来ている。シニアであろうがボーイズであろうが、また大阪出身だろうが、遠くから来てようが、とりあえずわかっていることは、ライバルたちのレベルは相当高いということ。
「こいつうまそうやな」
「こいつはでかいから、バッティングは負けそうやな」
「こいつはピッチャーやから、気にせんでもええな」
初日から、色々と考えたものである。
ちなみに僕は、井元先生という方からスカウトしていただいた。
現在は青森山田高校のスカウトをされているが、当時の寮生のほとんどが、井元先生によって集められたと聞いている。
八尾フレンドはもちろん、各伝統チームとは抜群の信頼関係があったのだろう。さらに、後にも紹介したいと思うが、高校野球が終わるときの進学や就職についても積極的に協力されている。
入口だけではなく、出口もしっかりとされるので、親御さんとの信頼関係も絶大であったと推測できる。

八尾フレンド出身でよかった!

入寮初日の夜、全員の前で自己紹介があった。
名前、ポジション、出身チームを声を張り上げ先輩方に伝える。
「稲荷幸太です。ポジションはセカンドです。八尾フレンドです。よろしくお願いします」
八尾フレンド出身でよかったと思うことが多々あるが、この日は特にそうだった。
当時の3年生のキャプテン寮生長八尾フレンドだったため、その先輩方も少し嬉しそうだった。誇らしげに周りにアピールされている。
特別に何かを免除されたり、優遇を受けたりするわけではないのだが、偉大な先輩方が培ってきたものが大きいので、違う目で見られる。
八尾フレンド出身というだけで優位に立てることはしばしばあった。
本当に感謝している。

一番きつかった「仕事」は洗濯

夜のミーティングが終わると、いよいよ「仕事」と言われる大切な役割の説明を受けた。
これができなければ、たとえ野球がうまくても、やっていくことはできない。
PLでは「付き人制度」がしかれている。付き人になった先輩のユニフォームの洗濯、スパイク磨き、ご飯の用意、夜間練習の相手、これを毎日繰り返す。
一番きつかったのは洗濯だ。黒土で泥まみれになろうが、血がにじんでいようが、真っ白にしなければならない。
黒土は、洗濯機で回したぐらいでは汚れが落ちない。洗濯板の上にユニフォームをのせて、洗剤のついたたわしでゴシゴシこする。
先輩のポジションによって個人差はでるが、特に内野手はダイビングをしたり、動きのほとんどがフィールド内でプレーするため、毎日真っ黒になる。
さらに、当時のコーチの方が付き人の系列だったので、僕に限っては自分の分も合わせて毎日3着の洗濯をしなければならなかった。
60人弱のユニフォームが一晩で洗われるのだが、寮にある洗濯機の数は限られている。
早く仕事を済ませたいと誰もが思うことなので、洗濯機の順番を巡るいざこざなどはしょっちゅう起きたし、練習時間が遅かったときやロッカー当番のときなどは、「仕事」の終了が深夜にまで及ぶことも多々あった。

PL学園での初練習

入寮翌日の初練習。1年生は指導員と一緒に別メニューをこなす。
体力差があって、とてもじゃないけど一緒にはやらせてもらえない。
小学生から中学生に上がるときも思ったことだが、先輩方の練習を見ると、パワースピードがまるで違う。
正確さも加わり、何より緊張感が全然違う
練習に入れさせてもらったところでどうしていいかもわからないし、別メニューで幸いだったと感じていた。

11章につづく

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