ブナ森・季節の情報
(2001年)            

                                                                                                  Back


2001.11.30
● 黒松内町・歌才
急に寒くなり、27日から今冬最初の本格的な雪が降ってきました。一度は解けるのかな、と様子を見ていましたが、このまま根雪になりそうな感じです。いよいよ北限のブナ林は、一面が雪化粧をする季節になりました。

雪の深さは、15cmから20cm程度です。冬用の長靴を準備して散策してみました。まだ十分に散策路の存在が分かりますので、カンジキは必要ありません。やや湿っぽい雪なので、斜面などでは滑ります。気を付けて歩きました。チシマザサが、重い雪に圧されてぐったりと頭を下げ、地面近くまでひれ伏しています。実に見通しの良い森の眺めです。遠くの木の根元が見えるくらい。夏の間はササのために、林床がすっかり隠されてしまいます。憎きササです。他の植物の繁殖や成長を阻害するので、時々退治しても良いのでは、と思いますが・・・。

雪が降ると、いつもの冬と同じように動物の足跡が観察できます。キタキツネは、里の近くまで降りたようです。エゾユキウサギは、食べ物を探してウロウロしていたようです。所々に、雪を前足で掘った痕跡があります。そのうちリスやイタチの足跡も見られるでしょう。野鳥の観察の好きな方には、最適の季節です。

ブナの葉はすっかり落ちてしまった、という印象でしたが、こうして雪が降った白い世界で眺めると、実にたくさんの葉が残っているものです。時折吹雪きになり、雪のパウダーが林間を覆ってしまいます。そのボーとした空間に、枝枝に残った茶色のブナの葉が、ふわりふわりと浮かんでいます。綺麗です。風が弱くなると、カサカサという乾いた音が響いてきます。一方、いつもなら良く目立つツルアジサイのドライフラワーが少ないようです。

12月中旬までは、大雪が降らない限り、長靴だけで森を散策できるでしょう。


2001.10.31
七飯町・大沼国定公園
北限のブナ林情報ではありません。黒松内や賀老高原のブナ林は、ほぼ落葉して、黄葉を楽しむ時期は終わりました。昨年に比べると、ため息が出るほど速いのです。その代わり、まだブナの黄葉を見られる場所を紹介します。道南の函館市周辺は、今週いっぱい秋の森を散策してみる価値があります。無理なく行くことの出来る大沼国定公園を歩いてみました。上のタイトル文字をクリックしてください。


2001.10.17
● 黒松内町・歌才
秋晴れの歌才、風がやや強く吹く森を歩きました。軽い汗をかく程度、気持ちのよい散歩になりました。散策路上には、落葉した葉っぱがいっぱい。自分の足の動きに合わせて、ガサガサ、ザッザッと乾いた音が響きます。まだ十月半ばというのに、「秋の終わりか」という雰囲気です。森の空間が、随分透け透けになってきました。

エゾリスに会いました。散策路上で、バッタリ。驚いたエゾリス君、傍のミズナラの幹にかけ上ります。お互いに、困った状態。やや暫く見つめ合っていましたが、彼(彼女?)は意を決したのか、体を逆さまにして幹から地面へ。サッサッサッとササ薮に駆け込んでいきました。食料集めの最中に人間に会うなど、いい迷惑でしょうね。

今年の紅葉は、Mr.ジャイアンツの言を借りれば、「う〜ん」という状況です。イマイチ、です。寒くなるのが早い上に、台風が来たり、強風・強雨の日が多いのです。ブナは、賀老高原に比べると、まだ色の変化が遅れています。今週末あたりには、ほぼ黄変するのではないでしょうか。ブナ以外のハウチワカエデ、ヤマモミジ、イタヤカエデは紅黄葉が進み、色付いたものから次々と落葉しています。ゆっくり眺める余裕を、与えてくれません。

散策路の状態は、後半の部分があまり良くありません。雨が降る日が多かったためか、路上がグチャグチャ、ズルズルになっています。今後気温が上がりそうもなく、改善は期待できないかも。とくに斜面の道は、非常に滑りやすいです。紅葉を楽しむには、軽登山靴か長靴を用意して訪れることをおすすめします。

2001.10.15
● 島牧村・賀老高原
秋の流れは、ミサイル(矢のもじり)の如く速いです。一週間前に訪れたときは「ブナの黄葉はまだ先」と思っていたのに、森は黄色から薄い紅へと変化しています。昨年と比べると、十日以上も季節の移りが速いようです。

ミネカエデ、ヤマモミジ、イタヤカエデなどは、先週の美しい色が無いどころか、すでに落葉してしまったものがたくさんあります。千走川の渓谷に、真っ赤になって浮かんでいたカエデが、一葉もなくなっていたのに驚きました。狩場山塊を見上げると、ダケカンバの白い樹肌がやけに目に付きます。その下には、ブナ林が赤く染め上がっています。ブナの紅葉を見るには、今週中が最も良いでしょう。来週になると、葉が落ち始めるような感じです。

昨年との違いは、ブナと他の広葉樹とが一緒になって奏でる紅葉シンフォニーが無いことです。カエデ類、ナナカマド、ホオノキなどが、すでに色のクライマックスを終えています。森の中で、色の多様性が少ないのです。ただ、何故かコシアブラの色がきれいです。すっきりと葉から色が抜けて、その透明感は実に爽やかです。

昼間でも、寒さを感じるようになりました。太陽が陰ったり、ちょっと風が吹くと、体温を奪われるのが分かります。森の光景を楽しもうと、ゆっくり歩いていると寒くなります。厚手のコートを着て入林した方が良いでしょう。


2001.10.05
● 島牧村・賀老高原
荒れ気味の天気が続いています。今日も、朝から雨。誰もいない、静かな賀老高原を歩きました。ぽつぽつと降り続く雨の森は、色彩がとても鮮やかでした。もうすっかり秋です。急に冷え込みが強かったり雨風が吹いたりの天気で、木々の葉が痛んでいないか、と心配だったのですが、大丈夫でした。

ブナ以外の落葉樹は、大半黄葉しています。オオカメノキ、コシアブラ、ノリウツギ、イタヤカエデ、ホオノキ、ハリブキ、ホザキカエデ。ミネカエデの輝くような黄色は、まだ緑色のブナの葉と素晴らしいコントラストを見せています。樹高が低いので、林庄から3mあたりの空間が燃えるようです。紅葉しているものは、相対的に少ないです。しかし、太いブナの木に巻き付いたツタウルシの赤は、もっとも秋の訪れを強調しているかもしれません。

千走川の両岸では、おそらくハウチワカエデと思われるものが真っ赤になっています。深く刻まれた渓谷、白い流れの水、煙るように降る雨、遠くに霞む狩場山塊、紅葉の樹影。現実の世界とは思えないような、そんな光景をしばし見つめていました。ヤマウルシも真っ赤。夏はあまり気づかないウルシは、秋に最も美しい。

ヒメモチの赤い実は、雨に濡れて、キラキラしていました。花は、全くと言って良いほど見あたりません。が、遅咲きのキンミズヒキが、軟らかい黄色を見せています。昨夜の強風で、あちこちのブナの小枝が落下しています。驚いたのは、太さ70-80cmのブナの大木が、地上から2.5mほどのところでポッキリと折れていたこと。まだ老木という印象では無いのに、ものすごい力が加わったのでしょう。風が強いときは、頭上から落下する枝に注意です。

週末からは、十分森の紅葉を楽しめます。ブナは、まだ樹冠の周りが変色している程度。10月中旬までは、ブナとそれ以外の木の色彩コントラストが美しいのです。気温は、かなり低めになると思われます。厚手のコートを準備しておいた方が良いでしょう。足元は、雪が降らない限り、夏と同じで大丈夫です。


2001.9.23
● 島牧村・賀老高原
今年は、秋の訪れが早いようです。初秋らしい爽やかな風が吹いていましたが、少し冷たさを感じます。ブナたちは、僅かながら黄葉しています。高木の樹冠近くの枝先あたり、明るい黄色がチラホラと見えています。全体は、依然として緑が圧倒しているので、僅かの黄色がとても鮮やかに感じます。その他、ヤマモミジやイタヤカエデ、ツタウルシも赤や黄色に変化しつつあります。本格的な黄葉は、10月中旬でしょうか。

花は、ほとんど無いのですが、いくつか残り花を見ました。キツリフネ、エゾノコンギク、ミミコウモリ、タニソバ、オオイヌダテ、エゾアジサイ、ヤマハハコ、ヨツバヒヨドリ。キク科やタデ科の花が多いようです。何故か、カヤツリグサ科やイネ科の植物もよく見かけます。すこし湿り気の多いところには、アブラガヤが群落を作っています。なかなか見事。

ブナの実は、昨年の大豊作から一転して、ほとんど見かけません。今年の春に発芽した幼木たちは、かなりの確率で成長を続けています。今でも株を作ったままの子供たちが、散策路に見られます。全部が成長するはずもないのですが、「そのまま大きくなれ」と声をかけてしまいます。やがて強いものが生き残って、次世代の森になるのでしょう。

今年のブナ林黄葉はの見頃は、10月14日から20日辺りでは、と想像します。直前情報を掲載しますので、ご覧になってください。次回は、10月第1週の予定です。


2001.9.19
● 黒松内町・歌才
森の空気は、秋そのものです。しかし、まだ夏の色が残り、紅葉にはまだ早い。中途半端な季節です。歩いても、軽く汗をかく程度の気温です。快適な森の散歩です。

目立つ花は、ほとんど終わりました。ちょっと寂しい感じですが、結実した実が輝いています。目に付いたものを並べてみます。ヤブハギは、ひっそり。ツリバナは、優しい赤色の実が空中に浮かんでいます。マイヅルソウとユキザサの実は、やや光沢があり、深みのある赤です。トチバニンジンやコウライテンナンショウは、鮮やかな赤。オオアマドコロ、ホウチャクソウ、ルイヨウボタンは、黒あるいは濃い紫。ツクバネソウは、羽根突きの羽そのものです。ギンリョウソウモドキも実を付け始めています。

春から夏に咲いた花たちが、結実した姿を見せてくれるので、散策路脇をキョロキョロ眺めながら歩くと楽しいです。ごくごく僅かながら、残り花があります。キンミズヒキ、アキノキリンソウ、サラシナショウマ、エゾノコンギク、エゾゴマナ、コウゾリナ、キツリフネ、ミミコウモリ、ミズヒキ、ママコノシリヌグイ、ドクダミなどなど。タデ科のミゾソバやイヌタデなどは、今が見頃。ギンリョウソウモドキも、まだ花を付けているのがありました。

今年も、ミズナラのドングリが豊作です。頭の上からバラバラと風に揺られて落ちてきます。いよいよ、リスたちの食料集めが始まりそうです。蔓性の植物もよく観察できます。ツルリンドウ、ツルニンジン、ミヤマニガウリその他いろいろ。


2001.9.01
● 黒松内町・黒松内岳
嫌な雨が収まって、九月の秋らしい青空になりました。北限のブナ林帯の最東端にある山、黒松内岳に登ってみました。山岳地帯のブナ林の様子をご紹介します。内容は、「自然探訪・山歩き」のページに掲載しました。上のタイトルを、クリックしてください。


2001.8.28
黒松内町・歌才
台風が去ったかと思うと、雨がジトジト降り続く天気です。雨の歌才を歩いてみました。森の中は、湿度100%かと感じるほど。わずかの汗が、体から抜けていきません。しかし気温が低いので、いつもより足取り軽く、快適に歩けました。

草木の色は、まだ夏の濃い緑を保っていますが、いつ秋がやって来ても不思議ではない空気です。咲く花も、夏のものから秋のそれが中心になってきました。早くも、イチヤクソウ科のギンリョウソウモドキが群落になっていました。今日見かけた花を、紹介します。

キンミズヒキ、今が見頃です。綺麗な黄色です。アキノキリンソウ、ミミコウモリ、ツルニンジン、キツリフネ。ツリフネソウは、赤あるいは薄いピンク。サラシナショウマがわずかに。ママコノシリヌグイ、薄いピンクの花が咲きそう。イラクサ科のウワバミソウ、キク科のエゾゴマナ、ヤブハギ、などなど。キク科の大型植物ハンゴウソウは、足元ばかり見ていると見落としてしまいそう。コウゾリナもキク科です。ハッカ、ドクダミは花期の終わりです。

キツツキのドラミングが、しばらくの間響いていました。姿を発見できなくて、正体を確認できませんでした。残念。今年の紅葉はどうなるか? 天候が不順で「暑い夏」がほとんどなかったので、予測をしづらい状況です。出来るだけ間を置かず、森の様子をお知らせします。


2001.8.11
島牧村・賀老高原
いよいよお盆です。いつもなら静かな賀老高原も、観光客やキャンパーで賑やかです。先日までの寒い日が、嘘のような快晴の一日でした。見上げると、抜けるよう青空の中に、ブナの深緑に染まった樹冠が浮かんでいました。ふと、秋の気配を感じました。

この季節、春に比べると大型の野草と花が多いです。ヨツバヒヨドリが群落を作って、見事な咲きっぷり。まだ樹高1mていどの小さなノリウツギが、あちこちで白い花を付けています。楽しみにしていたキツリフネが咲いています。黄色いフネが、ゆらりと空中に浮かんでいます。トリアシショウマ、オニシモツケもあります。コモチミミコウモリも見頃です。

ウドも満開です。かなり背丈が大きいものがあります。うれしいのは、エゾアジサイがまだ咲いていること。とくに日陰のものは、ひときわ濃い紫色です。その他、チシマアザミ、アカバナも。ラン科のオオヤマサギソウが、目立ちませんが非常に美しいです。シソ科のクルマバナ、マメ科のヒロハクサフジも群落を作っています。濃い紫色が、目を引きつけます。

ヒメモチ、オオカメノキが結実しています。とくにオオカメノキの赤い実は、まるで花が咲いているかのように森を彩っています。カヤツリグサ科のアブラガヤとヒメシラスゲが、予想外の自己主張をしています。よく見ると、綺麗なのです。ツルニンジンが、緑色のつぼみを付けています。ヤマハハコも、もう少しでいっせいに開花するようです。予想外といえば、ドクダミが結構な規模の群落を形成しつつありました。どこからやって来たものやら・・・。

カのような虫も少なく、森を散策するには良い季節です。国道から賀老高原への林道は、普段ならそれほど車はいないのですが、お盆を挟んだ今どきは対向車がとても多いです。事実上一車線しかない細いクネクネの上り坂なので、通行には十分に注意してください。


2001.7.29
黒松内町・歌才 & 添別

昨年に比べると、涼しい夏です。曇り日の中、歌才の森を歩きました。夏の森は、どこまでも深深としています。ブナの葉は、緑の明度をぐんぐん下げて、黒っぽく感じるほどです。

林床を眺めると、華々しい色はありません。まだ七月だというのに、花々の移ろいは思いの外早く秋に向かっているようです。エゾアジサイが満開、美しい。ノリウツギの白い花も、目を上げればあちこちに。ツルアジサイも、もう少し咲いているようです。目立たないものでは、トリアシショウマ、ヤブハギ、ミヤマトウバナ、ハエドクソウ、ヨツバヒヨドリなどが、静かに花を開いています。大いに目立つのは、ドクダミです。歌才の森に入る少し前の針葉樹林近くに、かなりの群落を作っています。昨年よりも増殖しているようです。

これから咲こうというものでは、バラ科のキンミズヒキが開花準備をすすめています。黄色い花が、森の中を彩ってくれます。オオバキボウシ、キツリフネも楽しみです。ウワバミソウも、薄いクリーム色の蕾をつけています。おとなしいものでは、ミミコウモリ、サラシナショウマなどがあります。ごくわずかですが、ササが花をつけています。

春から夏にかけて咲いていた花たちが、結実しています。これらも、見ていてなかなか楽しいものです。トチバニンジン、エンレイソウ、ホウチャクソウ、ユキザサ、オオアマドコロ、ルイヨウボタンなどは、お馴染みの花たちです。オオカメノキの赤い実も目を引きます。

添別のブナ林は、まだ若い森なので、どうしても花の数では歌才にかないません。けれども、古木、巨木が少ないので、森の中を歩いていて「重さ」を感じません。そよと吹く風が、春のような清々しさをもってきてくれます。やはり、沢沿いのエゾアジサイが綺麗です。トリアシショウマも、斜面から、ゆらりと頭を振ってくれます。ノリウツギの白い花もよい。ヒヨドリバナもあります。気をつけていると、ギンリョウソウの親戚筋のシャクジョウソウを見つけられるでしょう。


2001.7.15
島牧村・賀老高原
蒸し暑い日が続いています。賀老高原を、歩いてみました。森の中は、ドッシリと落ち着いた風景になりました。初々しかった春の緑から夏の深い緑に変わり、樹冠からの光もすっかり遮られています。ブナの原生林が、最も力強く感じられる季節です。

濃い緑色の中で、よく目立つのはツルアジサイの白い花です。春に比べると咲く花の少ないこの時期に、単調に見える森の中を彩ってくれています。しかし、よく観察すると、思いがけないほどたくさんの花があります。ほとんどが白っぽくて目立たないので、うっかり見落としてしまいます。道の脇にもあるオニシモツケ、同じバラ科のヤマブキショウマは、比較的よく見かけます。オオウバユリも、ポツリポツリと咲き始めています。この時期に(?)と思う、オオアマドコロ。モミジカラマツの花も小さくて、可愛い、品もあります。コモチミミコウモリは、つぼみを付ける準備をしているようです。全体として、穂状のものが多いです。

白以外の花では、ヨツバヒヨドリがたくさんあります。エゾアジサイも咲き始めました。これから柔らかな紫色を森のあちこちで楽しめるでしょう。今日は見かけませんでしたが、チシマアザミも咲き始めるはずです。ノウゴウイチゴが、赤い実を付けていました。いつもながら美味しいです。大柄なセリ科のエゾニュウ、ハマニュウ、オオハナウド(?)などは、満開です。

春のように賑やかな雰囲気はありませんが、ブナの「樹冠カサ」の下で、ゆっくり森の空気を吸ってみるのも悪くありません。今はブヨやカのような虫は、意外と少ないので、これらに弱い人には良い時期です。その代わり、ハチの活動が活発ですので、ご用心ください。


2001.7.2
島牧村・狩場山

ブナ林情報とはちょっと違うかもしれませんが、賀老高原を見下ろす狩場山に登ってみました。ここは、ブナの森ではなくダケカンバのそれです。しかしながら、この季節になってもマイヅルソウを始め、色々な花や樹を楽しめます。登山案内にもなっていますので、読んでいただければ幸いです。ここを、クリックしてください。


2001.6.11
島牧村・賀老高原
雨のブナ林を、歩いてみました。昨日から天気が悪く、今日も朝から雨が降っていました。誰もいない雨のブナ林を見たくて、車のワイパーを回し放しで賀老高原に行きました。まだ残雪がわずかに残る山々の頂上から高原のブナ林にかけて、霧のような雨がひっきりなしに降り続いていました。谷間から風が吹くと、霧もドーッと動いていきます。何とも幻想的で、幾ばくかの怖さも感じます。千走川の渓谷の音が、やけに大きく響きます。

ブナ林は、雨にしっとりと濡れて、とても輝いて見えました。晴れた日が続くと、植物の体が乾燥するだけではなく、色々な塵やゴミが森中に浮遊します。光の乱反射も加わり、風景はボーッとした感じになっています。雨がひとしきり降ってくれると、ブナの樹冠を通り抜けた水が、葉の一枚一枚から樹肌まで、綺麗さっぱりと洗濯してくれます。こんな時が、もっとも美しいのです。ブナはもちろん、あらゆる木や草や花の色を新たに塗り替えたかのようです。森の間を流れる空気は、汚れたガラスを拭き洗った後のような爽やかさです。

花は、あまり目立たない咲き方をしています。マイヅルソウは、もう少しで咲きます。クルマバソウも同じく。シラネアオイは、満開。この天気では、すぐに散ってしまいそうです。ノウゴウイチゴが、まだ咲いていました。オオカメノキは、散り始めています。常緑の低木ツルシキミが、白い花を咲かせています。タニウツギのピンクが目を引きます。注目したいのは、ブナの子どもたちです。この雨のためか、ものすごい数の発芽が見られます。昨年はブナが豊作だったことをお知らせしましたが、私の予想以上の大大豊作だったようです。林床のあちこちに、実生が一本二本とあるだけでなく、例えれば手の平いっぱいのモヤシが生えているかのような状態です。

ブナの実は、森の中に平均的に落下するのではなく、密度にかなりのバラつきがあるのに気づきました。ブナの子どもたちが、まるで株を作ったかのように地面からニョッキリ出ているのには、驚かされます。こんな光景を見られるのは、本当に何年かに(4、5年?)一度しかありません。


2001.6.8
黒松内町・歌才

ブナは、新緑から初夏の色になりつつあります。ふわふわした印象だった葉が、肉厚のあるしっかりした形になりました。色はやや濃度が高くなり、夏の深緑との中間です。そんなわずかの変化が、見ていて楽しいのです。樹冠の密閉度が高くなった森の中では、エゾハルゼミの鳴き声が間断なく響いています。少しばかり、喧しく感じるほどです。時々聞こえる鳥たちの声やブナのサワサワという葉音が、実に爽やかです。

林床では、春の花たちが、一通り咲き終えたようです。パッと見て目立つのは、マイヅルソウクルマバソウの白い花ぐらいでしょうか。カタクリとエンレイソウは、大きな実を付けています。数は少ないのですが、エゾノヨツバムグラ、タニギキョウ、コンロンソウ、トチバニンジン、ホウチャクソウ、オオアマドコロなどを見かけました。予想外に早いのは、ギンリョウソウです。もう所々で地表に頭を出しています。週末には開花するでしょう。

今年は、昨年よりも季節の移り変わりが少しずつ早く進んでいるようです。これからブナ林に咲く花たちを見るには、例年より一週間くらいずつ予定を繰り上げた方が良いかも知れません。嫌なブヨは、少なくなってきました。


2001.5.31
島牧村・賀老高原
天気の良い日だったので、賀老高原の散策に行ってみました。前回に比べると、新緑の色がいくぶん濃くなりました。といっても、若葉から太陽の光を覗けるくらいに淡い緑です。新緑、まっただ中です。花が、少しずつ咲き始めました。歌才に比べると、その数はずっと少ないのですが、森の色が豊になってきました。

あちこちに湿地帯があり、ザゼンソウミズバショウが有ります。全体に形が小さく、とてもかわいらしいです。オオカメノキは、低木のなかでも動きが早い。白い花が満開です。イチゲが群落を作っていました。キクザキイチゲとも違うようで、エゾイチゲかな(?)と思いました。ブナの新緑を背景に見るその姿は、眩しいほど白が輝いています。黄色い花を付けたスミレも有ります。ただし、これも名前を特定できませんでした。高さ約15cm、どちらかというと大柄な花です。葉は、三枚で縁にギザギサがあります。オオバキスミレか(?)と思いますが、断定できません。季節的には、咲くのが早すぎるような来もしますし・・・。

歌才では見かけないもので、ノウゴウイチゴが群落を作っています。白い花が満開。とても綺麗です。遠くから見ると、イチゲかなと思ってしまいます。どちらかというとヒッソリタイプのエンレイソウが清楚に咲いています。色が目だたないので、一輪ぐらいだと見落としてしまいそうです。間もなく咲きそうなのが、シラネアオイでしょう。どこにでも有るわけではないのですが、ゆっくり森の中を歩いて探してみて下さい。

発芽したばかりのブナとカエデが至る所に着床していました。ブナは、まだ幼葉だけ。中には、殻を割りながら幼葉を開こうとがんばっている子ブナもいます。昨年の秋は、大豊作だったブナの実が、今がチャンスとばかりわっと芽を出しています。もう少しすると、本葉が出てきて、ブナらしくなります。その時が一番生命力を感じるときです。ブヨという非常に質の悪い虫が登場してきました。かなり刺されました。痛いです。虫に弱い方は、しっかり防虫対策をして下さい。私の右目が腫れてきました。


2001.5.21
島牧村・賀老高原
賀老高原も、見事な新緑を迎えています。今日は、森の中が暑いぐらいの一日でした。雪解けは、昨年より少し早いのではないでしょうか。森の中の残雪は、それほど有りません。遺伝資源保存林に行ってみました。散策路の雪はなく、路面も乾いています。今月いっぱいは、新緑の優しい緑をたっぷり楽しめそうです。

残念なことに、賀老の滝を見るのは当分あきらめて下さい。村役場の担当者の話では、滝の展望台手前からの散策路が、崖崩れですっかり閉ざされています。かなりの規模で崩落しているので、復旧の見通しはたっていないのだそうです。旧道を整備するかどうかを、これから検討するとのことです。

ブナ林の散策は、今まで通り可能ですので、ご安心下さい。ただし、北檜山町に抜ける林道は、まだ雪がっています。無理をして車を乗り入れないで下さい。とくに普通乗用車は、お腹が雪の上に乗ってしまうと身動きとれなくなります。その他、
クマが人里近くにも出没するなど、例年になく多いそうです。森の散策時には、十分注意して下さい。この時期は、グループで歩いた方が安心です。神経質になり過ぎるのは、考え物ですが・・・・。

歌才のブナ林と違って、ほとんど花は咲いていませんでした。林床の子ブナたちも、まだ芽吹いていません。ひたすら大人のブナだけが、森の緑を占領しているように見えます。それだけに、純粋にブナの新緑を味わえるとも言えます。カエデが芽吹き始めて、かろうじてブナの対抗馬になっています。青空に抜けるような、透明感のあるブナの葉は、ため息が出るくらい美しいです。この季節も移りゆき、やがて森の中は虫や鳥の声でいっぱいになります。一年に一度の心躍るような色と空気、澄んだ森の音を堪能しましょう。


2001.5.14
黒松内町・歌才
歩くと、暑いぐらいの季節になってきました。ブナたちは、やっと芽吹きました。触れると千切れてしまいそうな新緑の葉が、さわさわと風に揺れています。木々の空間が淡い緑に埋められて、森が森らしくなりました。

ミズナラは、まだ芽吹いていません。カエデが、ブナの新緑と織りあうような芽吹きを見せています。美しいです。散策路では、マイヅルソウがずいぶん大きくなりました。散策路脇は、マイヅルソウの天下になったみたいです。蕾を付け始めていますので、間もなく白い花が咲くでしょう。カタクリとイチゲは、最盛期を過ぎました。場所によっては、まだ咲いています。エンレイソウも、もう少しの間見られます。その他、エゾエンゴサクも。

楽しみにしていたシラネアオイが、大きな花を太陽に向けて咲いています。ニリンソウもちょうど見頃です。小さな五枚の白い花が、姉妹のような感じで空を観ています。三輪のものもありますが、サンリンソウなのかどうか、判別できませんでした。スミレも、今が最盛期でしょう。スミレサイシンとミヤマスミレの両方があるような気がします。これも、正確に見分けられませんでした。ヒトリシズカも、咲いています。名前に似合わず、群落を作るので、シズカとは思えません。目立ちませんが、ユキザサとアマドコロが蕾を付けています。

低木のオオカメノキが、早くも白い花を咲かせています。一見するとアジサイみたいな印象で、とても綺麗です。ブナの新緑の隙間から、エゾヤマザクラのうすいピンクが目だちます。連休の時に散策路で出会ったシマリスに、再会しました。あの時はビックリした目をして逃げていったのに、今日は「やあっ」という感じで挨拶してくれました。私の1mぐらいのところで、盛んにエサを口に放り込んでいました。森は、初夏に向かってまっしぐらです。


2001.5.02
黒松内町・歌才
連休の真ん中、歌才の森には爽やかな風が吹いています。湿地帯では、ミズバショウが丁度良い加減の群落を作っています。花と花との空間、バランスが最高です。エゾノリュウキンカが、黄色い花を咲かせ始めました。

カタクリが、森全体で開花して、とても華やかな雰囲気です。歩く足取りも軽く感じます。あのピンクの鮮やかさは、一度見たらいつまでも記憶に残ります。この連休は、最高の見頃でしょう。キクザキイチゲも、まだまだ見られます。エンレイソウが蕾を付けて、昨年よりも沢山咲きそうです。見頃は、来週か? 新顔もチラホラ。スミレサイシンが、ほんの僅かですが、咲いています。マイヅルソウが、小さな体を地表に現しました。花を見られるのは、まだ先でしょう。エゾエンゴサクは、いつもより控えめに感じます。どうしたのでしょうか?

白いカタクリを、たった一輪見つけました。百科事典によると、カタクリモドキという北米原産の花があり、白い花を付ける種もあるそうです。ただ、これはサクラソウ科に属するもので、カタクリ(ユリ科)とは縁もゆかりもなさそうです。私が見つけた白いカタクリは、ちょっと見た目にはカタクリそのものです。が、よく観察すると葉の形がやや細身で、付け根の部分にカタクリ特有の薄いチョコレート色が入っていません。見た目の違いは、その程度です。カタクリの変異した個体なのか、カタクリモドキのような他の花なのか、私には分かりません。どなたか、ご存じの方がおりましたら、教えてください。

シマリスとニアミスしました。散策路で、バッチリ目が合ってしまいました。シマリス君も驚いたようで、大きな目を広げて一瞬私を見ていましたが、急に身を翻してササ藪の中に姿を隠しました。彼らの活動も、これからが本番です。鳥たちも、沢山来ています。散策路は、予想以上に良く乾いています。軽登山靴で、軽快に歩けます。


2001.4.19
黒松内町・歌才
今日は、森の春を宣言します。昨日からの気温は、初夏を思わせます。20度を超えているに違いないでしょう。散策路を10分も歩くと、汗が吹き出してきました。太陽の光を、暑いと感じるのは本当に久しぶりのことです。

もう、花たちが咲き始めました。森の入り口から間もない湿地帯では、ミズバショウです。早く水面に顔を出したものたちが、チラホラと白い花を見せてくれています。まだ背丈も花も小さいです。それだけに、とても清楚です。群落を作るには、まだ時間がかかるでしょう。日当たりの良い斜面では、カタクリキクサキイチゲが咲いています。今年の豪雪と寒さを一気に跳ね飛ばすような、美しさとともに逞しさ、強さを感じます。

やはり日当たりの良い林床では、エゾエンゴサクが薄い紫の花を控えめに咲かせていました。ンレイソウは、まだ蕾です。でも、間もなく咲きそうです。ブナやミズナラのような森の主役たちは、まだまだ芽吹きそうもありません。オオカメノキやカエデのような比較的低木が冬芽を膨らませています。鳥たちも、枝から枝へ飛び回っています。つがいになっているものが多いようです。鳴き声で一番なのは、ウグイスです。ピッピッピッー、ホーホケキョ、とやかましいぐらいに彼らのさえずりが森の中に響き渡っていました。

散策路の雪は、9割ぐらい解けています。残っている雪の上は、急にぬかることがあるので注意が必要です。また、雪解け水が散策路上を流れていたり、よどんで水たまりになっています。当分の間、足元は悪いでしょう。滑って転ぶこともあります。慎重に。靴は、ゴム長が一番でしょう。トレッキングシューズでは、水が染み込むと思います。沢には、まだ雪が残っていて、さかんに水蒸気を空中に放出しながら解けています。うすいフィルターをかけたような、ボーッとした森の風景を見ることが出来ました。霧とは、ちょっと違う感じです。

殻斗が沢山落ちている場所の枯れ葉を静かにかき分けてみると、ブナの種が発芽していました。やっと着床したばかりのようです。順調に育ってくれればよいのですが。


2001.3.31
黒松内町・歌才
春の音が、森の中に加わりました。しばしば、カサッカサッ ササササという響きが風に乗って聞こえてきます。ササです。雪が融けて、頭を出したササの葉が擦れ合う音です。真冬には、聞こえなかった懐かしい音。斜面は、大きく円を描いて土が見えています。そんな場所では、ササたちが一番元気に見えます。

それほど雪解けが急なのです。でも、まだ約40cm-50cmの積雪があります。下が土ではなく、ササ原の上を歩いていると、ズブッと足を踏み込むことが何回もありました。あと、一週間も森の中を自由に歩けるかどうか? 急な斜面は、避けた方が良いでしょう。ササに足を取られたりすると、大変危険です。

大きな木の根元は、もうすっかり雪が融けて、地面が見えています。積雪を確認するために、尾根の近くにあるブナに行きました。下ばかり見ていたのですが、フッと誰かに見られているような気がしました。何気なく上を仰ぐと、私の近づいたブナの巨大さに驚きました。ほぼ南側に、ちょうど人間が両手を段違いにして伸ばしているような格好で、とても太い枝が私の頭の上に覆い被さっているのです。しかも、冬の間も落とさなかった殻斗がビッシリ付いているのです。樹高は、20mから25mはありそうです。

今日も、空気が暖かく、とても気持ちがよい散歩でした。ゴジュウガラらしき鳥も見かけました。これからの森は、気分は爽快になりますが、足元が悪くなってきます。出来るだけ正規の散策路に沿って、ゆっくり歩いてください。時には、カンジキが役立つかもしれません。


2001.3.28
黒松内町・歌才
一日と言わず、時間ごとに雪解けが進んでいます。歌才の森の入り口前の駐車場が、使えるようになりました。除雪が終わり、夏と同じスペースがあります。安心してご利用ください。冬の間は、閉鎖されてしまうので、森に入りたい人は、「自然の家」の近くに止めるしかありませんから。

斜面の雪は、ほとんど融けています。これからは、正規の散策ルートからはずれないようにして歩いた方が無難です。怪我の無いように、森の散策と鳥たちとの会話を楽しんでください。


2001.03.20
黒松内町・歌才
「四月中旬の温度になるでしょう」という天気予報のとおり、暖かい一日でした。森の中でも、どんどん雪が融けています。雪の表面がシャーペット状になって、歩きずらくなってきました。急な斜面では、小さな雪崩も発生していました。一日一日と雪が少なくなっていきますので、入林する場合は雪の下の状態に十分注意してください。特に斜面や沢の近くには、近寄らないようにしてください。雪の下は、ササが茂っていたり沢があって、大きな空洞になっている場所がほとんどです。踏み抜いたりすると、怪我の危険があります。

春の風が、とても暖かでした。冬のコートでは、暑すぎるぐらいです。光が、冬のそれではありません。春分の日を迎えると、北国でも春の勢いの方が強くなります。何度か冬への揺り戻しがあるでしょうが、あと十日もすれば、森の木々の色がかすかに変わり始めるでしょう。四月の中旬になると、山全体が赤っぽいというか彩度の低いピンクというか、不思議な色に染め上がります。楽しみに待っていましょう。


2001.03.10
黒松内町・歌才
今日も、明るい太陽の光が降りそそぐ好天でした。歌才の森を歩くと、かなり汗ばむほどでした。添別と同じで、カンジキは必要ありません。雪はしっかり締まっています。当分の間、長靴でのんびり散歩できるでしょう。

森の北側、正規のルートから入りました。暖かいためか、動物たちの活動が活発になってきました。足跡があちこちに目立ちます。キタキツネが多いようです。ウサギも、しばしば見かけます。歌才川には、まだ氷が張っています。夜の冷え込みは、まだまだ厳しいようです。雪が降らないと、森の奥まで見通せます。夏には見えない、枝枝の重なりが絶妙の風景です。足元も軽く、空気もやわらぎ、楽しい森です。

冬にしか会えない巨木を、見に行きました。大きなミズナラの木がある辺りからルートをはずして、歌才の山の頂上に上がります。標高にすると120m程度ですので、さほどきつい場所ではありません。尾根伝いに南下すると、大木がドシンドシンと立っています。太さ2から3m、樹高は20から30mというものが、目の前に次々と現れます。年齢もはっきりしない古木ばかりですが、その堂々とした姿には圧倒されます。

夏は散策路を歩くしかないので、目に入るのはほとんどがブナとミズナラです。しかし、歌才山の上には相当数、<カバの木>の白い樹肌が目立ちます。厳冬期には風も強く、ブナにとっては厳しい環境なのかな、と想像しています。ブナの巨木の傍に立ち、尾根の上から見る遠くの山々、農家の青い屋根と雪色の牧場、どれもこれも美しい。雪が恵んでくれた展望台からの眺め、もう少しの間楽しませてもらいましょう。


2001.03.09
黒松内町・添別

しばらく振りの更新です。あっと言う間に、春の気配が漂っています。一月、二月は、これでもかこれでもか、と雪が降りました。だんだん、除雪をする気力が無くなりました。この間のブナ林の中は、いつも新雪が積もり、歩くとカンジキが重く、雪崩でも起きそうなぐらいに降雪がありました。二月末から気温が上がり始め、グッと雪が締まってきました。今は、とても歩き易い状態です。カンジキが無くても、大丈夫でしょう。

今日は、添別ブナ林の奥の山に登ってみました。ブナ林の左側を巻くように雪の斜面を登っていきます。足が沈むこともなく、快適な登山です。おそらく伐採した跡の山でしょう。大きな木は無く、まだ細いシラカバが沢山成長しています。二次林の形成途中、と思います。頂上に着くと、快晴だったお陰もあり、360度のパノラマの世界を楽しめました。寿都湾から日本海の青い海、その先には積丹半島の山々に被る雪が美しい。目を転じれば、真っ白な羊蹄山の頂があり、島牧村の大平山などの峰峰も見えます。その上は、青空のみ。

ブナとミズナラの巨木を見つけました。山の斜面に根を下ろし、まっすぐ立っています。特に大きいものは、7から8本。胸高周りでいずれも3m以上、とりわけ目を引くのが、ミズナラの古木です。樹高30mはありそう。おそらく開拓以前から、この場所に生きてきたのでしょう。周りの木はほとんど伐採されているので、造材には不向きなどの理由で残されたものと想像します。夏はササ藪に覆われる場所で、来るのは不可能ですが、冬ゆえの風景と巨木に出会えました。

今月いっぱいは、歩くには最適の雪です。時間のある方は、ぜひ雪のブナ林を訪ねてみてください。コゲラが、木の幹をカツカツカツカツつついていました。野鳥の活動も、ますます盛んです。


2001.01.21
黒松内町・添別
いくらか厳寒が和らぎ、粉のような新雪が降る日でした。添別のブナ林を歩いてみました。この森は、一度伐採された後に再生した二次林です。とは言え、立派な自然林ですので、野性味はたっぷり味わえます。若いブナの森です。歌才と比べると、全体として明るいイメージです。まだ幹が細く、清楚な印象です。

雪が締まってきていますので、カンジキでの歩行が楽です。午後の晴れた時間帯でしたので、冬の斜光線が森を満たし、ブナの影が真っ白い雪の上に沢山のラインを引いていました。上を見ると、殻斗(種が入っていたカラ)が落ちずに、枝に付いたままの木があちこちにありました。些細なものの存在が、冬の森では美しいです。

鳥たちの鳴き声や姿もありました。アカゲラでしょう。カッカッカッカッカッカ----、と幹をたたくトーンの高い音が聞こえます。2羽ほど、姿をチラッと見せてくれました。キツネの足跡もあります。歌才ではあちこちにあるツルアジサイを、あまり見かけませんでした。この森には大きなミズナラやカンバも混じり、ブナ以外の樹種も楽しめます。

夏はビジターセンターのすぐ裏から入るのですが、冬はFargus Point(柳沢健次、緑さんがオーナーの都会的喫茶店)の駐車場前から旧散策路を利用した方が良いでしょう。ブナ林を散策した後、美味しい紅茶を飲むのが、私の楽しみです(サンドイッチや手作りケーキもお薦め)。車を止める場合は、一言ご挨拶を。


2001.01.07
黒松内町・歌才
21世紀。明けまして、おめでとうございます。
年末から年始にかけて、晴れたり曇ったりしながら、雪が降り続いていました。お陰でブナ林の中もかなりの積雪量になりました。「冬の特別コース」に出かけてみました。昨年3月にも紹介した、歌才の森へ南側から入るルートです。雪が十分に積もって、安心して歩ける状態でした。どうぞ、出かけてみたください。

ルートについて、簡単に説明します。国道5号線から入ってきた場合、貝殻橋の手前の道を、朱太川に沿って左折します。以後「貝殻橋コース」と呼びましょう。左側には民家があります。突き当たりまで車を入れ、そこからはカンジキに履き替えます。民家を左に見ながら、南にルートをとります。やがて朱太川の支流に出ますので、これを越えます(幸いなことに橋があります)。そして、すぐに180度向きを変え、北にルートをとります。

ここから先は、何の目印もありません。朱太川の支流と思われる沢を、二度ほど越えなければなりません。沢とはいえ、幅2mくらいはありますので、十分注意しなければ危険です。雪原を歩き、山に向かいます。特にどこを歩くというものもなく、自分の判断でブナ林にたどり着くしかありません。徐々に山に入ると、右手眼下に最初に越えた朱太川のうねうねした流れを見下ろせます。真っ白な雪と澄みきった水がとても美しく、来て良かったと思います。ふわふわと舞い落ちる雪のカーテン越しの風景は、荒い息を鎮め、疲れを癒してくれます。

間もなく、太いブナとミズナラ、カンバが混在する森に到達します。ここからが楽しい散歩になります。急に雪が舞ってきたりすると、冬の森は幻想的な感じです。ツルアジサイとエゾアジサイは、この季節にも花を付けています。目立つものの少ない落葉樹の森では、彩りを添え、美しいのです。小鳥たちの声も、森の奥まで届きます。

この貝殻橋コースですが、体力に自信のない方や冬の装備のしっかりしていない方は、無理をして行かないのが無難です。正規のルートではありませんし、事故があっても誰も責任をとってはくれません。あくまでも、自己の判断と責任で歩いてください。では、今年も森の情報を楽しみにしていて下さい。