もっと楽しく写真講座(2002)
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私が講師をしている「写真講座」で講義した内容、撮影会の中で話した事をまとめたものです。これから写真を学ぼうという初心者から「もう少し上手になりたい」という方まで、幅広く読んでみてください。何かのヒントを提供できると思います。(2002年の講座から)


写真とは、PhotoGraphです。つまり、「光で絵を描くこと」です。写真は、本質的に画家と同じ表現ジャンルに属するものです。どちらも、「二次元の映像芸術」です。違いは、表現する為の手段と手法です。英語で、「写真を撮る」ことを「Take a picture」と言います。まさに、写真の本質は「絵」なのです。

日本語では、「真を写す」と書きます。その結果、写真が「真理や事実を記録するもの」という誤解が長く続いています。過去の成り行きや言葉に捕らわれず、自由な心で写真を楽しみましょう。

ミニミニ写真講座(1)

写真表現上達のワンボイント
(1)フレーミングの基本
カメラのフレームは、24mm×36mmの長方形です。この中に、光とレンズとカメラとフィルムを使って絵を描きます。多くの場合、現実に存在するものが材料です。つまり、三次元のものを二次元の世界(フィルムと印画紙)に変換しなければなりません。

その有効な方法は、画家と同じように「遠近法」を使うことです。カメラのフレームに、中心で交わる対角線を引くと、四つの三角形ができます。中心点を好みの方向にずらしていくと、いろんなパターンの三角形ができますね。写真を撮るとき、被写体の配置を、三角形を描くようにイメージしながらフレーミングすると、立体感・奥行きのある画面を作ることが出来ます。

(2)ボケはレンズだけの表現
絵画には、遠近法はあっても「ボケをつくる」という手法は無いようです。写真レンズは、このボケを作る独特の個性があります。ボケというのは、ピントを合わせた場所以外が、ぼやっとして被写体の形が崩れてくる現象です。ピントを合わせるのは、写したいものをより鮮明に表現するのが目的の一つです。

が、それだけではなく、意図的にボケを作り、見せたくないものを曖昧にして、主役の被写体をいっそう強調するためでもあります。美しい写真の中には、「美しいボケ」がたくさんあることを発見してください。ただし、ボケをまったく使わない表現もありますので、いつもボケにこだわる必要はありません。

(3)被写界深度を理解しよう
被写界深度とは、「ピントを合わせた一点」の前後に、ビントが合っているように見える範囲があり、その範囲のことを言います。その範囲の距離は、数mmだったり数10mだったりと、決まったものではありません。このように言うと、コントロール不能で訳の分からないものという印象を持たれるかもしれません。しかし、前述したボケの表現は、この被写界深度を利用することで成り立つのです。

焦点距離f=50mmのレンズを「標準」とすると、それよりも焦点距離の長いものが「望遠レンズ」です。たとえば、100mm、200mm、300mmです。逆に、短いものを「広角レンズ」といいます。35mm、28mm、24mmなどです。広角レンズになるほど「被写界深度が広い(深いと言います)」写真が撮れます。

望遠は、きわめて深度が狭く(浅く)なります。したがって望遠レンズになるほどピント合わせが難しくなります。ボケを考えると、焦点距離の長いレンズを使う方が効果的と言えますが、広角レンズでも、ボケを使うことはできます。

(4)レンズの絞り値と被写界深度
同じ焦点距離のレンズでも、絞りの値が変わると、被写界深度は大きく変化します。例えば、50mmでは、絞り値をF2.0からF8.0に変化させると、ピントの合う範囲が数10cmも違います。F値が小さい(絞りが開かれている)ほど被写界深度は狭く(浅く)なり、F値が大きいほど(絞りの穴が小さい)被写界深度は広く(深く)なります。

(5)レンズの種類と絞り値で被写界深度をコントロール
結論です。被写界深度を浅くしてボケを大きくしたいときは、望遠レンズを使い、絞りを開ける。逆に被写界深度を深くしてボケを少なくしたいときは、広角レンズで絞り値を小さく(絞りを絞る)する。一般論として、これらのことを知っておいてください。しかし、写真表現は、これだけで決まるものではありません。もっと大切なものがあることを、今後の講義でお話しいたします。


ミニミニ写真講座(2)

「写真は、光で描く絵である」と、お話ししました。どんな絵を描くかは、人それぞれ。どうやって描くかは、相当部分が「テクニック」と写真機材に依存します。

写真のテクニックとして

(1) 構図の作り方=空間の切り取りと被写体の配置、三次元空間から二次元空間への変換作業、レンズの選択とボケの作り方
(2) 光のコントロールの仕方
(3) シャッターチャンスの選択=時間の切り取り・固定化
この三点が、もっとも基本的な要素です。今回は、(2)の光のコントロールについての授業です。

ここでは、自然界に普通に存在する光で撮影することを前提にします。写真では、フィルムに光を当てることを「露出」あるいは「露光」と言います。露光することで、フィルム上に画像が形成されます。

露出量を増やす(沢山の光をフィルムに当てる)と、画像は全体に明るく写ります。さらに増やすと、白に近づきます。逆に、露光量を減らすと、画像は暗くなっていきます。さらに減らすと、黒に近づいていきます。ここまでは、難しいことではありません。感覚的に理解できるでしょう。

私たちが現在使っているカメラには、「露出計」という光の量を計測する装置が組み込まれています。この露出計とコンピューターの連携で、「自動露出」という便利な機能を利用することが出来るのです。

カメラの露出計には、ちょっとした特徴があります。露出計は、被写体に反射してレンズに入ってきた光を計測します。その計り方は、「被写体が、光の反射率が18%の中間調のグレーである」という前提で光を感じているのです。具体的に、露出計は「被写体が、日本人の肌の色とおおむね同じ色をしている」と思いこんでいるのです。

露出計は、空から降り注ぐ光の絶対量ではなく、被写体に反射してくる光を読むからなのです。これは、仕方のないことです。当然、「日本人の肌の色」と大きく異なる色をした被写体が沢山あります。夏の緑は、私たちの肌より黒い色です。カメラは、この濃い緑(黒に近い)を中間調のグレーに再現しようとします。黒っぽいものをより白っぽく写そうとする、つまり露出量を必要以上に増やしてしまいます。

冬には、雪があります。露出計は、白い雪を中間調のグレーに再現しようとします。白いものをより黒っぽく写そうとします。それは、露出量を本来必要なものより少なくしているのです。

ですから、露出をカメラ任せにすると、私たちが意図した色と違ったものに表現されてしまいます。そこで、「露出補正」という作業が必要になります。どんなカメラにも、「露出補正装置」というものがあります。形式は、ダイヤルを回したりボタンを押したり、とメーカーによって違いがあります。補正の量も、1/3刻みと1/2刻みがあります。よりきめ細かな補正をしたい場合は、1/3刻みのカメラを選択すべきです。

「日本人の肌色」を基準に、それより黒い被写体の場合は、マイナス側に補正。より白いものには、プラス側に補正。これが、露出の基本作業です。よくある勘違いは、「黒いものは暗いから、プラス補正」というものです。「黒い」と「暗い」ということは、意味が違います。具体的に、夏の深い緑は、マイナス2/3から1程度の補正。雪は、プラス1前後の補正です。

自動露出には、三通りの方法があります。いっさいをカメラ任せにする「プログラム」というモード。そして、レンズの「絞り値」を自分で決める「絞り優先AE」。さらに、シャッタースピードを自分で決める「シャッター優先AE」があります。

風景のような場合は、「絞り優先」を使ってください。レンズによりますが、そのレンズの開放絞り値から1〜2段絞ったところに設定するのがベストです。開放値がF4なら、F5.6かF8です。スナップショットや動きの速い被写体の場合は、「シャッター優先」か「プログラム」に設定するとよいでしょう。

光の色について、少々。自然界の光は、いつも同じ色ではありません。朝日や夕日のときには、赤っぽいです。曇った日や日中の日陰では、青っぽいです。一般的に、私たちが「太陽の光」と言っているのは、晴れた日に上空から降り注ぐそれを指します。色温度が約6,000度ケルビンの光、と表現します。ですから、曇った日に白いものを撮影すると青っぽくなります。それを写真の表現に積極的に利用すると、とても面白い作品を作れます。


ミニミニ写真講座(3) 

今回は、「暗室作業」はどんなものか、についてお話しします。
写真を始める人は、カメラを買うことや実際に写真を撮ることをイメージしているはずです。が、自分で写真のプリント作業までを考える人は、ほとんどいないようです。写真は、撮影からスタートして、プリントを作って、人に見てもらえるようにする、それで完成するものです。

プリントの中に自分の感動が凝縮されイマジネーションが表現されてこそ、写真の楽しみや喜びは、何倍にもなって感じられるでしょう。

長い間続いてきた銀塩システムの「暗室作業」=「プリント」とはいったいどんなことをするものなのかを、大雑把に説明いたします。

(1)写真全体のコントラストを調整する。
明るいところと暗いところの輝度差(輝きの差)を、大きくしたり小さくしたりすることです。

(2)画像の階調を調整する。
これは、明るい部分から暗い部分への、明るさの変化のさせ方です。少しずつゆっくりと変えるか急激に変えるかで、画像のイメージはまるで違ったものになります。

(3)色調を調整する。これは、説明の必要はないでしょう。

(4)プリント時に除去出来なかった「傷・ゴミ」を見えなくする。
これは、細い筆を使い、色をスポットして傷・ゴミを消していく気の遠くなる作業です。

(1)のコントラストを調整するには、モノクローム写真では「印画紙の号数を変える」ことでコントロールします。露光不足の薄いネガは、たいていコントラストが低いので「4号」というハイコントラストの紙を使います。逆に露出オーバーの濃いネガは、コントラストが高めになりますので、「2号」というローコントラストの印画紙を使います。通常は、「3号」です。

カラーの場合は、コントラストを変えた印画紙はありません。つまり、撮影時の露出の適否が、そのままプリントの結果に反映されます。

階調のコントロールは、大変難しい「技」が必要です。「覆い焼き」と「焼き込み」という手法があります。引伸機で印画紙へ露光する時、ネガ上で暗く見えるところを部分的に覆って(光を遮って)明るくする、これが覆い焼き。逆に、明るすぎるところを、周辺よりも多く光を当てて暗くする。これが、焼き込みです。こうすることで、画像の明るいところから暗いところへの変化の程度を滑らかにしたり、急変させたりします。明暗のバランス調整も出来ます。

以上が、銀塩システムでの暗室作業とその内容です。この講座では、プリントを暗室ではなく、デジタルシステムで行います。その理由です。

<デジタル暗室が有利な訳>
(1)階調、コントラスト、色調、あらゆる面でコントロールの幅が大きく、自分のイメージ通りの作品を創る可能性が飛躍的に高まる。
(2)フィルムをスキャニングしてデジタル化することで、画像Dataの色調や明暗に、直接変更を加えることが可能になります。銀塩システムではフィルムに画像が固定されており、それを動かすのは絶対に不可能なことです。このことにより、より美しい階調の写真ができます。

(3)一度創ったDataは、永久に保存でき、同じプリントをいつでも何枚でも作成することが可能です。銀塩システムでは、不可能なことです。
(4)現像液、定着液などの化学薬品を使わないので、環境に優しいプリントができます。また、作業途中でもDataを保存して、好きな時に再開できます。

(5)インクジェットプリンターには、様々な種類の紙が用意されており、自分の写真イメージに合ったものを自由に選択できます。これも、表現の幅が広がったことを意味します。画材用紙を使えるなど、大きな魅力があります。

デジタル暗室のためには、コンピューターが必要です。ほとんどの人がパソコンを持っていたり、実際に仕事で使っています。しかし、画像処理のためには、コンピューターにある程度のハイスペックが求められます。参考までに、以下にその具体的な内容を書いておきます。

<デジタル処理に必要なコンピューター>
(1)ノートパソコンでは、パワー不足です。デスクトップタイプがベストです。
(2)OSは、WindowsXPが使いやすいです。私個人は、Macをお薦めしません。

(3)CPUは、Intel Pentium4かAMD AthlonXP。メインメモリーは、DDR SDRAMで最低500MB、できれば1GBが望ましい。
(4)画像を正確にモニターするために、ビデオカードは32MBから64MBのメモリーを搭載したものが必要です。が、3D対応の高性能なものである必要はないでしょう。

(5)モニターは、色表現能力の豊かさでCRT(ブラウン管方式)を使います。
(6)画像処理ソフトは、Adobe Photoshop7.0がベストです。

(7)ハードディスクは、2個。MOドライブも内蔵した方が合理的です。

その他、細かい問題もありますが、このような条件を持ったコンピューターが望ましいことを理解してください。私の経験からは、欲しいスペックのものを自作するのが良いです。市販のものは汎用性を目的に作られているので、必ずどこかが不満になります。


ミニミニ写真講座(4)

今回は、デジタル暗室の話です。
デジタルと言うからには、コンピューターを始めとして、アナログ時代には無かった新しい機械を扱わなければなりません。今現在パソコンを使っている人から所有さえしていない人まで、色々な状況だと思います。しかし、これから写真を長く続けていくために、生涯の楽しみにするために、プリントを自分で作ることはとても大切な行為です。デジタルシステムでのプリントの作り方を、大ざっぱに理解しておいてください。

(1)パソコンの必要システム
WindowsXPが搭載されたもの。メインメモリーは、500MB程度(1GBあれば余裕です)。モニターは、大きいけれどCRTタイプ(15インチで十分ですが、17インチが見易い)。その他、フィルムスキャナーとプリンターが必要ですが、詳しくは次回に説明します。

画像処理ソフトは、Adobe社のPhotoshop7.0。WindowsXPを使うのなら、古いバージョンでは正しく動作しません。Windows98SEやMe、2000を使う人は、5.5や6.0のバージョンでも大丈夫です。高価なソフトなので、すぐに購入するのを躊躇するかもしれません。一時的に、友人・知人が使っているものを借りて練習するのが良いでしょう。

(2)色管理とICCプロファイル
パソコン上では、「色管理」を理解しなければなりません。フィルムの写真をデジタルDataに変換するために「スキャナー」、その画像を見るために「モニター」、パソコンで作成した画像をプリントするために「プリンター」。少なくともこれだけの「周辺機器」(デバイスとも言います)が必要です。

これらの周辺機器は、独自の色特性を持っていて、それぞれが勝手に色を作っています。自分勝手で、協調性はまったくありません。そこで、「色の調整役」として、WindowsというOS(パソコン全体をコントロールする王様)が大活躍します。Windowsは、「sRGB色空間」という規格に、すべての周辺機器の色を変換して管理します。つまり、周辺機器間での色の違いを解消してくれるのです。

とは言え、Windowsは神様ではないので、何らかの情報が無ければ色の調整という大切な仕事をできません。その情報とは、「ICCプロファイル」という各周辺機器の色特性を記述したDataです。現在のスキャナーやプリンターは、パソコンにソフトウェアをインストールする時に、このICCプロファイルも自動的にコピーされ、Windowsに登録されます。したがって、私たちユーザーが気づかないうちに色管理の環境が作られます。

しかし、唯一私たちが自分の手で作らなければならないのが、モニターのICCプロファイルです。モニターは、経年変化が他の周辺機器より大きく、使用を続けているうちに色特性が変化していきます。そのモニターのICCプロファイル作成を非常に簡単やってくれるのが、Photoshopに付属している「Adobe Gamma」という機能です。

Windowsのデスクトップ上にある「マイコンピューター」アイコンをクリックして「コントロールパネル」を開きます。その先頭にある(はず)「Adobe Gamma」を開いて、画面の指示通りに操作をすすめます。順調に行けば、最後に待望のICCプロファイル作成に成功します。これをWindowsに記録・保存すれば、デジタル暗室の準備が終了です。

(3)デジタル暗室の基本的な流れ
スキャニングした画像があるものとして、以下「画像処理」の方法です。

@Photoshop7.0を立ち上げます。
A編集メニューから、「カラー設定」を選択。「Photoshop5 初期設定カラースペース」に設定を変更。OKボタンを押します。その他、「環境設定」でも設定を整えなければならない項目がありますが、ここでは省略します。

Bファイルメニューから、「開く」を選択。保存してある画像ファイルをPhotoshopに呼び込みます。
Cイメージメニューの「色調補正」の中の「レベル補正」を表示します。ヒストグラムというグラフが現れます。これは、画像Dataの明暗の状況を視覚化したものです。左が「黒」、右が「白」、中間は「グレー」です。

Dヒストグラムを見て、黒の部分にDataが有るかどうか確認。無ければ、黒の(左の)スライダーを右に動かして、グラフの左端まで持ってきます。これで、画像に黒のDataが生成されます。

E白の画像Dataが無い場合、無理に白を作る必要はありません。画面のハイエストライトを際だたせたい場合は、白の(右の)スライダーを左に移動させます。程度は、画像の変化を見ながら決めましょう。

F中間調のコントロールが非常に大切です。中間調をどの程度の明るさにするかで、写真のイメージが大きく変わります。写真のデキを決定する要素です。中間調のスライダーを左に動かすと(暗いDataが、明るい方向に移動する)画像全体が明るくなります。右に動かすと、反対に暗くなります。

Gどの程度コントロールするかは、個人の好みです。何度も実験を繰り返して、自分の写真表現を確立してください。従来のアナログシステムでは、このような「Dataの移動」という手法は絶対に不可能です。私が、アナログ暗室に切り替えた最大の理由はここにあります。

H次に、「色調補正」の「カラーバランス」です。特に強調したいあるいは控えめにしたい色を選択して、スライダーを動かして調整します。これも自分の目と感性で決定です。

I「色相・彩度」を選択しましょう。一般的には、色相を変えるのは冒険です。フィルムのイメージを大切のするのなら、触れないようにしましょう。彩度は、やや高めにします。色分離がはっきりし、色ヌケの良い写真になります。

J「明るさ・コントラスト」です。明るさは、触れないのが無難。この項目を変化させると、ヒストグラムに影響します。一般的には、コントラストをやや上げてみます。画面全体にメリハリが出て、すっきりした雰囲気になります。
ここまでで、画像処理の基本項目は終了です。80%は完成です。

K画面左にある「ツールボックス」の中、左上から5番目にある「スタンプツール」を選択して、ゴミ取り作業をします。画面右上にある「ナビゲーター」ツールを使い、画像を適当な大きさに拡大します。目に余るほど大きなゴミがあれば、スタンプツールですぐ近くの色をコピー、ゴミの上に貼り付けて消してしまいます。この作業の詳細は、次回の講座でも再度説明します。

Lイメージメニューから「モード」を選択。「16bit」になっている画像を「8bit」に変換します。通常フィルムスキャナーから作られる画像Dataは、TIFF形式の16bitで生成されます。このままのData量で作業を進めたいのですが、Photoshopではこの後を「8bit」で作業するようにしかプログラムされていません。残念なことです。

Mこの後、アナログ暗室と同じ「焼き込み」、「覆い焼き」などという作業が出来ます。そのツールは、左側のツールボックスの右上から7番目にあります。画像を見て必要と思えば、少しずつ効果を確認しながらやってみましょう。具体的な方法は、次回の講座でも説明します。

N最後に、「フィルターメニュー」から「シャープ」を選択。画像処理の途中で失われたシャープネスを回復させます。私の経験では、「シャープ」を一回、「シャープ(輪郭のみ)」を一回程度効かせるのが良いようです。あまり強くかけると、ピクセルが立ち上がり、写真本来の美しさが損なわれます。

Oこの後プリントするのなら、イメージメニューの「画像解像度」を選択。「画像の再サンプル」に付いているチェックを、必ずはずします。プリントする実際の大きさを数字で直接入力します。


ミニミニ写真講座(5) 

受講生の皆さん、ますます寒くなってきました。元気を出して、また写真の勉強を楽しみましょう。前回までに、パソコンでPhotoshopのおおまかな扱い方と実際のプリント作業をやってみました。今回は、フィルムスキャナーとプリンターについて、具体的にお話しします。

<フィルム・スキャナー>
スキャナーとは、フィルム上の写真画像(アナログ)を、デジタルDataに変換する機械です。フィルムのままでは、画像が固定されているので、明暗、色調、コントラスト、階調などは原則として変化させられません。

そこで、固定された画像をデジタル化することで、さまざまな写真表現が可能になります。写真の最終工程であるプリント作業の入り口が、スキャナーによる「画像Data」を作ることなのです。

スキャナーの原理は、デジタルカメラと同じです。フィルム上の画像を、一列に並んだCCDが非常に精密・繊細に読み込み、電気信号(デジタル)に変換します。デジタル化されることで、パソコンで扱えるものに変貌します。

ここで誤解してもらいたくないのは、スキャナーの原理はデジカメと同じですが、Dataの中身はフィルムの画像を反映しています。デジカメが、被写体の画像を直接生成したものとは、まったく違います。スキャナーの画像にはフィルムの質感や色、階調などは、しっかり残っています。

「パソコンで写真をプリントすること=デジカメの写真」と思われてしまうことがあるようですが、とても残念なことです。また、従来の化学システム(アナログ)が最高の表現で、「デジタルシステムを使うこと=非写真的」であるとの偏見も一部の写真家にはあるようです。これも、残念なことです。

スキャナーの性能を読みとるポイント
(1)解像度
現在の機種では、2,820dpi、4,000dpiなどが一般的です。dはdot、pはper、iは、inchを表します。つまり、「1インチあたり、いくつの点(dot)があるか」を示しており、数が大きいほど精細な表現ができることになります。

(2)A/D変換・bit数
画像をデジタルに変換するときの、色再現能力を表します。一般的に、人間が認識できる色数は「8bit=2の8乗=256」色といわれます。理論値では、デジタル変換の時に、256色でも十分なのですが、実際のフィルムには桁違いに多い色情報があります。その豊かな色をデジタルDataとして読み込むために、より高い色再現能力の「2の14乗」や「2の16乗」色で色再現するのです。

デジタルでは、「2の1乗」を1bitと言います。したがって、「2の8乗」は8bit、「2の14乗」は14bit、「2の16乗」は16bitです。それぞれ計算すると、8bitは256色、14bitは16,384色。16bitなら65,536色という膨大な値になります。

当然、bit値の高いスキャナーが、豊かな色再現能力を持った製品といえます。またbit数の高いものは、色彩だけではなく、明部から暗部にかけての精細な階調再現力も優れています。現在販売されているものは、たいてい14bitか16bitです。いずれも、安心して使えるものです。

(3)デンシティ(ダイナミック)・レンジ
カタログには、「Dレンジ」とも書いてあります。簡単に言うと、スキャナーがDataとして読みとる最大の濃度です。フィルムの暗い部分をどの程度認識できるか、ということと同じです。ポジフィルムの一番暗いところで3.2ですから、今店頭にある製品は、この性能を上回るものばかりです。

(4)その他
傷やホコリを自動的に消去する「デジタルICE」。一回のスキャンでは拾いきれない情報を数回スキャニングしてきめ細かなDataを得る「マルチサンプル・スキャニング」なども、購入前にチェックしておきたい点です。

製品紹介
最高級機は、ミノルタの「Dimage Scan Multi Pro」。フィルムサイズでブローニー判まで対応。4,800dpi、16bitのA/D変換、傷・ほこりの自動除去、マルチサンプル・スキャニングなど。これ以上のものはありません。店頭価格でも、30万円近い、高価なのが欠点です。

続くのが、ニコンの「Super CoolScan 4000ED」。最高解像度4,000dpi、14bitのA/D変換、自動ごみ取りやマルチサンプル・スキャン機能もあります。これは35mm判まで対応です。店頭価格は、15万円程度。私が使っているのは、この製品です。生成Dataは、最高で約100MBになります。

皆さんにお薦めなのは、ミノルタの「Dimage Scan Elite2」です。「Dimage Scan Multi Pro」の最大解像度を2,820dpiに落とし、35mm判専用機にしたものです。極端な大伸ばしプリントをしない限り、必要にして十分な性能です。店頭価格は、7万から8万円です。

価格優先で考えるのなら、ミノルタ「Dimage Scan Dual3」。新製品なので、低価格機の中では最も優秀です。上位機種とほぼ同じ機能を搭載しながら、3万円台で購入できます。ただし、パソコンとの接続はUSB2.0のみですから、これに対応した最新のパソコンが必要です。その他、キャノン、ニコンでも同価格のものがあります。

<プリンター>
プリンターは、使いやすい「インクジェット」式が良いでしょう。インクジェットの特徴は、写真の微妙な階調や色彩を表現するの向いていること。光沢からマット、画材用紙など、使える紙の種類が多いこと。表現の幅が広いことです。

またインクも、染料系から顔料系まで、いろんなものがあります。これも、写真表現の幅を広げることに貢献しています。従来の銀塩方式によるダイレクトプリント的なシャープさから、絵画のようなソフトなイメージまで、いろいろな表現を楽しめます。

初期の頃は、画像の耐光性が弱い(すぐ変色する)と言われましたが、顔料系のインクを使えば、銀塩式よりも遙かに長い時間保存できます。

プリンターの選び方ポイント
(1)解像度
現在のものは、ほとんど2,800dpiになっています。つい最近まで1,400dpiだったのが2倍になりました。人間の肉眼にとっては、過ぎるくらいですから、とくに検討する必要のないことです。

(2)インクの種類
プリントした写真を非常に長い時間(何十年という単位で)保存したい人は、顔料系のインクを使う機種を選びましょう。しかし、染料系のインクの保存性が悪いことはなく、通常の使用(額に入れて飾る)では、染料系で十分です。

(3)プリント可能サイズ
一般的なプリンターは、A4サイズです。写真のサイズでは、ワイド六つ切りです。それ以上のものは「A3ノビ」対応があります。これは、写真のワイド半切ですから、写真展開催用のプリントを作成できます。写真展も開きたい人は、A3ノビを選択すべきです。

製品紹介
プリンターのトップを走っているのは、EPSONです。機種、インク、専用紙などが豊富です。A4タイプでは、PM870CとPM930Cが候補にあがります。違いは、価格でしょう。前者は、2万円台。後者は、3万円台です。

A3ノビでは、PM3700C。6色の染料インクを使います。店頭価格は、5万円台。PM4000PXは、最高級機です。7色の顔料インクを使います。店頭価格は、7万円台です。私は、古い型のMC2000という、顔料インクを使う機種を使用しています。残念ながら発売中止になりました。

その他、キャノンも良い製品を出していますから、店頭で比較検討して購入して下さい。プリンターの特徴として、価格の差が性能の差にならないので、無闇に高いものを買うことはありません
(講師 村岡 ひろし)