田舎暮らし体験記 第4章                          Back

 

●第20話 選挙もお祭り?

宮崎県の出直し知事選挙で東国原英夫(そのまんま東)さんが当選して、何かとマスコミの話題になっています。私は、はて黒松内はどんな選挙があったかな、と思い出していました。

全国、全道規模の選挙はさておき、黒松内町の町議会選挙と町長選挙について記憶をたどることにします。町議会選挙は、移住した1999年と四年後の2003年、二回ありました。定数は12名で、若干立候補者が上回り、選挙が執り行われました。

町議は、町内の各地域からおおむね満遍なく選出されるようになっています。おそらく、地域間格差が出ないようにという長年の配慮から、(議員は地域の代表)という色合いが強いのです。私の住んだ大成地区でも、ベテランの議員さんが一人いました。

移住してまだ日も浅い1999年、晩秋の10月中旬、町議選が始まりました。集落の有力者が中心になり、選挙の段取りや票の取りまとめに一生懸命奔走していたようです。地域住民の支持を固めて、町内の地縁血縁を頼りに、当選圏内までの票を積み重ねていくのです。私も、何度か(支持お願い)の電話をいただきました。

基本的に、政党中心の選挙ではありません。共産党をのぞけば、みな無所属です。農業、会社経営、神職、行政書士、事務職、無職など職業は様々。国会議員選挙のように政策ビラが石礫のように郵便受けに放り込まれることもなく、数枚の選挙葉書が舞い込むくらいです。政策で争うような大きな課題が無い、とも云えますが、どの候補がどのような実績があり如何なる政策を考えているのか判らないので少々寂しい気がしました。

「しゅぶとがわ」という「議会 広報」が配布されますので、議員の質問や町長などの回答、議決法案の内容は分かります。町民になったあかつきには、そうした資料に目を通しておくことも必要です。それ以外は、よく分かるものがありません。まったく質問しない議員がいるのには、やや首を傾げたくなりました。たった12人しかいないのですけれど。

選挙カーも走ります。全候補者が、車を仕立てているのかどうかは分かりません。走っているものに限っては、小型トラックの荷台を柵で囲って、候補者はその柵の中に立っています。当然、外気に剥き出しになったままです。顔を真っ赤にしてマイクを握り手を振っていました。北海道の10月中旬は、もう身を切るような冷たい風が吹いています。候補者も楽じゃないのです。最近は、ワンボックスカーを使うのが普通で、何故あのように寒い思いをして頑張っていたのだろう。

2003年の選挙は立候補予定者が少なくて、無投票になるのでは、という雰囲気がありました。選挙が近づくと、予想外の立候補者が出て、結局選挙戦に突入しました。前回のような選挙風景を、また見ることができ、無投票よりは善いなと思ったものです。

地区のお年寄りに、(今回立候補した新人は、どういう人ですか)と聞いてみたら、(俺もよく知らない人だな。四年に一度の選挙が無いと町が盛り上がらない。選挙を期待して待っている連中もいるしな。無投票になったら、商店街なんか当てが外れて困るんじゃないか。今度の新人は当選する気はないんだろう)、と話してくれました。

町議選や町長選は、四年に一回ですから、ある意味お祭りのような楽しみでもあり、町民の関心と興味が燃え上がり、ついでにお金も動く一大行事のように見えました。

田舎は、投票率が高いのも特徴です。人口が少ないから、投票に行かないととても目立ってしまいます。地域や職場でお互いに誘い合って行きますので、投票率はいつも九割以上になるようです。よほどの理由がない限り、棄権は考えられません。2005年の町長選挙の投票当日、ある店で、店長が店員に「おい、選挙行ってきたか。俺は朝一でやって来たぞ。お前らも投票して来なきゃだめだぞ」と強い調子で仰っているのを聞きました。

ここからは一般論です。田舎の町議選挙では、誰が誰に投票したか、かなりの確率で分かってしまいます。選挙では、いわゆる(票読み)というのがあり、投票結果と突き合わせてその誤差が数票単位で計算できます。各投票会場には、投票立会人がいますので、その地域の誰が投票に来たか完璧に把握できます。(投票する)と言っていた数と、実際の投票者と、得票数を比較すると、(Aは入れてないんじゃないか)と推測可能なのです。

黒松内で上記のような事が行われている、と云う話ではありません。誤解なさらないようにお願いいたします。田舎は、選挙においても人間関係の濃密さを感じました。前回選挙から四年目、2007年は黒松内町議会選挙のある年です。町民でなくなったにもかかわらず、気になって仕方がありません。(2007/2/14)

●第21話 医療の実情・その1

諸事情が重なり、更新が滞っておりました。今回からは、誰にとっても無視できない医療や福祉について書いていきます。

黒松内町、寿都町、島牧村、この三町村が地域的な一まとまりで、人や物資の交流が多いようです。医療機関も、この三町村を中心に書いていきます。まず、黒松内の医療機関は、黒松内国保病院、北海道勤労者医療協会(以下勤医協とします)黒松内診療所の二つです。その他、歯科医院が一件あります。

黒松内国保病院は、医師が一人ないし二人、内科と外科があります。ベッド数は、約40床。 勤医協診療所は、医師一人、基本的に内科です。ベッド数は10床。土日祝日の診療は、両病院診療所が交代で当番医となります。いずれも、小規模病院・診療所であり、高度な検査と治療には対応できません。大きな手術などは無理、と云えそうです。

寿都町には、2005年に道立病院の閉鎖にともない町立に移行した「町立寿都診療所」があります。 ここは、「家庭医療科」がメインであり、最近注目されています。その他、産婦人科(毎週火曜日)と精神科(毎週水曜日午後)が置かれています。

同診療所のHPには、家庭医療は<身体と心のさまざまな症状、病気を幅広く診療します。内科全般、小児科全般はもちろんのこと、怪我なども含めた救急疾患への対応や、眼、耳、鼻、のど、皮膚、骨や筋肉、関節、尿などに関する症状や病気、あるいは、睡眠や心の悩みなど、どんなことでも相談にのります>と書かれています。

耳鼻科、皮膚科、眼科など専門病院のない地域では、こうした家庭医のいる診療所は住民の安心感を高めているようです。医師が精密検査の必要があると判断したら、高度医療の可能な病院を紹介してくれます。地方・地域医療のあり方に新しい道を提供してくれています。同診療所は、道立病院時代よりも患者が増えていると聞きました。

島牧村は、町立診療所があります。内科と歯科、それぞれ医師一名です。ここも高度な医療には対応していませんので、 岩内、八雲などの大きな病院と連携をとりながら対応しているようです。

三町村の中では、専門で高度な診療科 が無い、というのが事実です。体調が悪くて精密検査を受けたいと思ったら、八雲町の八雲総合病院、伊達日赤病院、倶知安厚生病院、岩内協会病院まで行かなければなりません。と云っても、選択肢はこの四つの病院です。いずれも、車で一時間内外の距離です。

私は、札幌に定期的に検査を受けていた病院がありましたので、一泊する日程で行っていました。住民に聞いてみたところ、地元の病院・診療所は軽い病気と治療方針がはっきりした場合に通院し、不安のある場合は上記の大きな病院か思い切って札幌まで行く、という人が多かったのです。

妊娠している女性は地元で出産できないのが実情ですし、出産までの通院にも一日がかりという苦労をしています。
(2007/4/26)

●第22話 医療の実情・その2

黒松内町と近隣の基本的医療機関は、前話のとおりです。これでは、木で鼻を括ったような素っ気ない形ばかりの紹介となってしまいましたので、地元住民の生の声を聞いていただくのが善いでしょう。

2005年に地域医療の現地調査をしたデーターがありますので、その中から紹介します。 北海道大学経済学部のIMさんが、卒業論文にまとめた< 「幸福」における問題発見手法開発の試み -地域保健分野について->をお借りして、抜粋します。

この論文の目的は、「地域を総合的に幸福にするためには何が問題であるかを,地域住民の視点から,定量的にも定性的にも捉え得るような,問題発見手法を開発すること.」となっています。客観的で貴重な内容だと思います。調査は、町民からの直接聞き取りです。

以下、IMさんの論文から引用

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町立病院と民間診療所のどちらを選ぶかは,どのような理由で決まるのか?

決定的な理由はなく,「なんとなく」「近いから」という理由が多い.町立病院には否定的な声が比較的多く,「使っている機械が古い」「いい噂を聞かない」などの理由で不信感を持つ人もいた.一方,民間病院は,「看護師の対応が良い」「全国展開をする系列病院であるため,方針やシステムが札幌と差がない」といった肯定的な声があった.

「今町立にいる外科の先生はだいぶ診れるらしいんですけど,レントゲンの機械が古いらしくて,結局は,先生がいくら良くても,写真が悪いと,やっぱ見逃すのかしらね,よくわからないけど.機械が古いくてどうにもならないんじゃないかなと思ったりもして」
(一般・女性・ 45 歳)

――病院を利用してみて受けた感じは?
「あの,それ,名前を挙げたら悪いみたいですけどね,町立病院よりも,勤医協の方が,対応は良いです.」
――だいたいみなさん,そう言うんです.
「でしょ.看護師さんの,やっぱり,なんかこう,対応がやっぱり,良心的ですね.どっちかって言うと,人が入れ替わってるのもあるんやろうね.町立病院なら変わってないんちゃうか,ほとんど.だから,どちらと言うと,両方開いてたら,勤医協に行きます.」
(一般・男性・ 49 歳)

●通院時間への負担感

町内へ通院する場合の負担感は小さい.町民の多くは自家用車を移動手段としており,自宅から町内の医療機関までかかる時間は5〜15分程度である.自家用車を利用できない高齢者でも,町の提供する福祉バスを利用することができる.

一方,町外へ通院する場合は負担感が大きい.3時間〜丸1日,泊りがけとなる場合もある.特に母親が子供を受診させる場合,子供を連れての外出に伴う自身への負担と,子供にかかる負担との二重の負担がある.

――ご出産される時は,どちらの病院を使われましたか?
「ええと,伊達市の日赤病院ですね.」
――どうしてそこを選ばれたんですか?
「ええとですね,距離的に近いことと,近いって言っても1時間くらいかかるんですけど.この辺だと,伊達か,八雲の総合病院か,どっちかがほとんどなんですけど.」(育児中の女性・ 31 歳)

「具合悪いのにね,やっぱり 1 時間もかけて行くのは子供たちもかわいそうだから,ね.」
(育児中の女性・ 31 歳)

●救急搬送所要時間への不安

救急の場合,町内で対処できれば問題はない.しかし,町外へ搬送しなければならない場合に時間がかかることへ不安があり,同時に諦めの気持ちもある.一方,経験がなく,よくわからないという部分もある.

「救急ってのは,まさに死が迫るような救急の場合だと,手の打ちようが無いんじゃないだろうか.黒松内にも確かね,救急車が正式に配備されたのは,6年くらい前じゃないかと思うんだよね.」
――割と最近.
「うん,最近なんですよね.で,じゃあ,その救急車があるからと言って,呼んでも,とりあえず国保病院に担ぎ込まれるでしょ.国保病院では,そういう急を要する,あの,病気に対処出来ないと思いますね,たぶん.例えば,脳血管障害とか,心臓の血管に障害が生じた場合,黒松内の国保病院に連れて行かれると,時間の無駄と言うのかな.返って,命を縮めてしまう危険性がある.だから,はっきり言って,そういう緊急の事態になったら,助からないと思った方が.一番近くても,八雲,倶知安,伊達なわけだから,そこまで行かないと,それ相応のね,治療が出来ないから.その間,生きてられるかどうかって保証が何にもないわけでね.直接行ってくれるならいいけども.国保病院なんかに一回回されたりすると, 30 分とか1時間とか,あの,それだけでも消費してしまうわけでしょ.ますます助かる確率低くなるよね.まあ,田舎で倒れたら諦めるしかないんだろうね.」
(一般・男性・ 54 歳)

――心配ではないですか?いざと言う時に時間かかると?
「うん.そうですよね.うん,でも,近くにそういうね,いいお医者さんがちょっと,来てくれるって考えられないから,うん.なんか,諦めもあるみたいでね.」
――大きな病院が近くにできるってことは….
「考えられないです.」
(高齢者・女性・ 67 歳)

3)  情報

行政からの情報提供量・方法は十分である.行政からの情報提供方法には,広報のほか配布文書や回覧板,案内状(封書・葉書)などの種類があり,重要度や緊急度,対象の大きさによって使い分けられている.例えば,月1回発行の広報には,健康診断の実施日程がカレンダーに示される.健康診断の実施日が近づくと,より具体的な情報を配布文書や回覧板で通知する.三歳児健診など対象が限られるものには,対象者のみに案内状が送られる.

――何で知りますか?
「広報ですね.うん,広報.」
――それに載ってる?
「うん.ありますよって案内来るし.」
――これ以外にも情報を得る…,さっきいろいろお知らせが来ると…?.
「うん,うん.こういうのにね,セットされてね,ビラとかなんかがいっぱい来るの.」(一般・女性・ 60 歳)

その他必要な保健情報は,口コミによって収集することが多い.ある症状に対してどのように対処したら良いか,どの医療機関を受診すれば良いかなどを,体験談や噂によって判断している.情報収集の場と相手は,職場で同僚と話す,育児支援事業の場や育児サークルなどで母親同士で話す,高齢者のサークルで高齢者同士で話すというものである.

また,保健情報の入手にウェブサイトは利用されていない.

「長万部に行く途中に二股ってあるんだけど,そこにマッサージ院があります.噂を聞くと,下手だから行かない方がいいよって言われたので,行ってません.」
――噂を聞く?
「体験者の声が何よりですから.」
――知りたいなと思ったら人に聞いて?
「うん.行ったことある?って,まずは聞いてみる.」
――どんな人に?
「職場の人.」
――同僚?
そうですね,同僚ですね.
――インターネットや雑誌で調べようとはしない?
「とりあえず,ここは数が非常に限られてるのでインターネットで調べる程のものではないです.」
(一般・女性・ 55 歳)

しかし,口コミで必ずしも必要な情報を得られるとは限らない.

「札幌行って,皮膚科かなんか無いだろうかって,知り合いに聞いてみたら,あんまりぱっとした皮膚科行ったことないって.」
――探せばどこかありますけどね.
「そうお.教えて下さい.」
――評判の皮膚科,ありますよ.
「あら.それでね,何とかいって,治して欲しいと思って.で,2,3日前にあの,辛くてっていう話してたら,そこにアロエの鉢があったんですよ.話してるすぐ目の前に.ひょっとしたらこれ,皮膚はアロエ付けたら,ねえ,ちょっと良いんじゃないっつってね,それで,枝取りなさい取りなさいって.取って皮取って,こう塗ったら,痒くなくなったの.アロエ.(略)だいぶ楽です.良くなりましたけども,まだ完全でない.なんかね,他人の肌に触ってるような感じ.皮がこう,おかしくなって.だから,これは皮膚科に行ってみないとだめのような気がする.素人判断であれ良い,これ良いって付けてたらね.
(高齢者・女性・ 71 歳)

4)  経済性

保健にかかる費用は,大別して個人で制御できる部分とできない部分とがある.個人で制御できる部分は,健康維持・増進のための費用(健康食品を買う,スポーツをするなど)である.個人で制御できない部分は,医療機関へ支払う医療費と,町外の医療機関を利用する際にかかる交通費である.

医療費については,公的医療保険によって地域差がなく,また高齢者や子供の医療費は軽減されるため,負担感は小さい.

――お金がかかるというところ,ありますか?
「いえ,黒松内はお金かかんないところなんですよね.うん.」
(高齢者・女性・ 68 歳)

 一方交通費については,郡部に住むためによけいにかかる費用として,負担感や不平等感が大きい.

「健康作りは,個人の努力である程度,まあ,お金はかけないでもね,出来る部分っていうのはあると思うんだ.工夫次第だとは思うんだけど.でも,医療ってのは,田舎にいようが都会にいようが,同じ行為でしょ.同じ行いだから,病院に行けば,同じだけ取られちゃうわけ.で,田舎に住んでると,やっぱり移動しなきゃならないでしょう,時間をかけて.その費用,移動と宿泊の費用って言うのは,ばかにならないですね.医療費そのものよりも高くなったりするわけでしょ.丸一日かけて検査しなきゃならないっていう項目だってあるわけですよね.例えば内視鏡なんかそうだけど.だからそうなると,内視鏡の検査で取られる料金よりも,交通費と,その,宿泊料の方が高くなっちゃう.」(一般・男性・ 54 歳)

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以上、黒松内町民の声を引用しての紹介です。引用部分は、聞き取り調査の一部であり、論文の全体像を示すものではありません。また、聞き取りに応じた町民にも誤解や思い違いの可能性が無いとは云えません。それを前提に、お読み下さい。
(2007/4/28)

●第23話 医療の実情・その3余談


先月(五月)所用があって、四国は香川県へ行きました。讃岐うどん、空海さんの生地、金比羅さん、瀬戸大橋などで有名な土地です。讃岐の暖かな空気を吸い、地元の誰もが行きつけのうどん屋さんで食べるホンマ物の讃岐うどんは噂に違わず美味しかった。讃岐のファーストフードですね。そういえば、マックのお店を見た記憶がない。うどんプラスアルファの盛りつけや付け合わせで、色々なうどんになるのが楽しい。ハンバーガーよりもうどん、これが讃岐の食風土です。

うどんの話を
したいわけではないのです。田舎と云っても、北海道の田舎と本州の田舎では、やや趣が違うということに気付いたのです。その実情と感想と医療をない交ぜにして一筆滑らせてみようかと思いました。

訪れたのは、高松市、坂出市、宇多津町、丸亀市、善通寺市、琴平町、まんのう町など。香川県北部の、瀬戸内海に面した町々でした。自治体は違えども、境界はまったく分かりません。一つの町、地域と考えた方が善さそうです。善通寺市から高松市までは、直線距離にして27kmか28km。国道11号、同32号、高松自動車道などの立派な幹線道路・バイパスが通っていますので、車なら30分から40分の通勤圏内です。

この辺りは、全域讃岐平野そのものであり、まことに広々としております。金比羅さんのある霊山琴平山から平野のパノラマ風景 を見たときは、思わずおーっと溜息が出たのでした。至る所に作られた溜め池からキラキラ反射する光の輝き、如何にも米作りには最適の土地柄です。古代から水不足に悩まされてきたのが泣き所で、空海さんが満濃池を朝廷の命令で急遽造成したのもそうした事情からだったらしいのです。讃岐の溜め池は、一万数千個あるそうです。

話が横道に外れているようですが、讃岐は都市でありながら田舎でもある、ということを言いたかったのです。高松市や坂出市などは都市としての機能が充実しています。高松市は、県庁所在地ですから当然。隣接する坂出も宇多津も丸亀も善通寺も、町並みがほとんど途切れず、車に乗っていると他町村に移動したことなど気付かないのです。

しかし、平野の中央部は立派な農村地帯です。詳しくは分かりませんが、主に米作りと畑作でしょうか。善通寺市や丸亀市は、都市の繁華と水田が同居しているとしか思われません。農村イコール辺鄙で不便な所という方程式は、讃岐では成り立ちません。北海道とは、かなり事情が違うのです。

私は黒松内町とその周辺の実情をもろもろ書いてきましたが、都市に遠く不便な場所という事実は否定しようもないのです。その固定観念は、讃岐平野を一望することで、もろくも崩れ去ってしまいました。


この地域にある主な(大きな)病院を列挙してみます。香川大学医学部附属病院、高松市民病院、香川県立総合病院、屋島総合病院、日赤病院、以上高松市内。坂出には、総合病院坂出市立病院。丸亀市には、香川労災病院、麻田総合病院。善通寺市は、国立善通寺病院などなど。その他、専門病院やクリニックは書き出せないくらいあります。

面積にすると(大雑把な見積もりで)札幌市の三分の一程度の地域に、医療機関が集中しています。田舎だから医療サービスの不足は止むを得ない、と諦めるような環境とは思えませんでした。もちろん医療のみならず大型商店や金融機関もあり、そうした日常生活でも都市住民と比べて大きな不便はないものと思いました。

讃岐平野では、農村に住んでいても都市部と大きな距離が無いのです。田舎・農村から、車で十分か二十分で市街地に行けるので、都市住民よりも極端に不利益を受けるような環境にはない、と云えそうです。

「田舎生活 」といっても、北海道と本州は単純に同列に論じられないと分かりました。北海道の場合、都市(札幌市、旭川市、函館市、帯広市などの主要都市)と農村部は、地理的に時間的に完全に切り離されています。都市を出ると広大な農村地帯となり、車で何十キロも走らないと次の市街地が無い、これが普通です。全ての生活環境が(医療に限らず)、都市と農村・田舎の間には大きな落差があります。

これから北海道での田舎生活を検討するうえでは、この問題を抜きには考えられません。さらに、冬期間の雪の存在もしっかり念頭に置いておくべきです。(2007/6/12)