鳴釜神事の実際と考察  4

鳴釜神事の実際と考察
         今回は鳴釜の神事により、病気が全快した例です。

 ある日、中年の姉妹が来訪。後は箇条書きにします。
@・・・姉の方は婿養子をもらい、実家の商売を主人と営んでいる。子供は息子が二人いる。上の息子は結婚しているが、最近女が出来て、奥さんとは別居状態との事です。下の息子は高校の時から不登校になり、どうにか卒業は出来たが、今は殆んど引きこもりに近い形で、たまに家業を手伝う事も有ると言う。主人は良く働く人で、主人に対しての不満は無いと言います。
A・・・妹の方は結婚して実家とは少し離れた所に住んでいる。家庭内の事については、何も問題は無く、主人も良い人で、子供の事も全く問題は無いと言います。しかし、1ヶ月程前から目が見えにくくなり、病院に行ったが原因が分からないと言われたそうです。今は新聞の字は殆んど読めないと言います。

B・・・宗旨は真言宗といいます。

 この姉妹が以上の話をしている最中に、突然大きな音で「パチ」という音が鳴りました。この実家の仏さんです。姉妹はびっくりしています。慣れない人、そんな音を聞くと驚くのは当然です。そのまま話を続けていると、もう一回大きな音で「パチ」と鳴ります。私は姉妹に対し、今年に大きな法事は周っていないか、と聞きました。そうすると、姉の方が、叔父(父親の兄)の五十回忌が周っていると言います。しかし、今回、私や私の家内の中には、これと言ってきついものは入って来ません。この叔父さんは、結婚後、子供(男)が一人出来ましたが、精神病を患い、離婚し、長年に渡り寝込んでいましたが、ある日家人が気がつくと亡くなっていた、と言います。家人も余り病人には関わらなかったのでしょう。

 今回は私達の体に、強いものが入って来なかったので、そんなに大事な事にはならないと思い、この五十回忌が周っている仏さんの成仏を祈願して、何らかのお祀りをしたらどうでしょうかと進言しました。後日祈祷の依頼が来ましたので、お引き受けしました。


 祈祷の当日、朝起きてみると、妻の方に相当な強さの、霊的な訴えが入って来ています。胃が痛いと言います。依頼者の家に行くには、高速道路を利用して行く事にしましたが、高速道路に入った途端、妻の足腰に痛みが走ります。かなりひどい状態です。じっと座っていられない程辛いと言います。依頼者の家に着いたのですが、足腰が余り痛いので、車から降りられない状態です。

 今回は殆んどの霊的な訴えというものが、妻の方にまわっている様です。

 先ず、祈祷の用意をします。線香の護摩、鳴釜の神事の準備です。先ず、この家の御仏壇に挨拶をします。私の祈祷は、んどが観音経をベースに行って行きます。五十回忌の周っている叔父さんを出します。妻は相当体に来ている様です。叔父さんを出してみて、これまでのお祀りの仕方について詫びを入れました。そして、今年は五十回忌が周っている事や、これから一生懸命にお祀りするから、この家の状態や、妹の目の病気を治してやって欲しい旨を告げました。私は今までにいろんな事情の家に伺い、この様な事をして来ましたが、今回は何時もとは少し違う事に気がつきました。この仏さんは、自分が死んだ事がまだ分かってないみたいです。精神病を患い、多分薬の量を間違って多量に飲み、亡くなったのかも知れません。私はこの仏さんに、貴方は五十年前に亡くなっている旨を告げました。私のこの一言でやっと納得した様です。途端に、水をくれ、と言います。そしてこの家の者は良く仏壇に手を合せている、と言います。この仏さんは、自分は生きているのに、他の家人は誰も気がついてくれない、おかしいと思いながら、家人と生活をしていた様です。家人と一緒にご飯も食べていたつもりでいたのでしょう。しかし仏さん自身も、うすうす何か変だという様に思い始めたのでしょう。私はこの仏に、「貴方が貴方自身の不安定な状況を知って欲しい為に、この妹の目を悪くしたのか」と尋ねました。そうすると、「そうだ(そうや)」と答えます。そして、「お経を上げてくれ」とも言います。「墓の方にも来て、お経を上げてくれ」とも言います。以上のやり取りは、私が直接この仏さんに言いましたが、私が言うと、この仏さんは返事をしませんので、全て私の妻が、私の言った事を、再度仏に伝え、出て来た返事です。私が墓の方に行ってお経を上げる旨を伝えると、「お前は来なくていい(お前は、こんでええ)」、妻に来てくれと言います。

 最初の内は、いろいろと要求を言って来ましたが、兎に角お経を上げてくれと言います。何のお経を上げて欲しいのかと尋ねると、「観音経を上げてくれ」、と言います。今からお経を上げるから良く聞いて、成仏して欲しい旨を告げました。そしてこの家の長男が女を作り、家を出ているが、これもお前が知って欲しい為にそうしたのか、と尋ねたところ、「それはない(ちゃう)」と言います。それはないが、長男の女関係も、時間はかかるが、「元に戻す(戻したる)」、とも言います。そしてこの仏さんの息子は今、精神病院に入っているが、これもお前が知って欲しい為にそうしたのか、と尋ねましたが、それも「関係ない(ちゃう)」と言います。


 観音経を上げていると、横で霊視していた私の妻が、大きな口が出て来て、その口の中へ、私が上げている観音経のお経の一字、一字の文字が吸い込まれるように入って行くのが見える、と言います。口一杯になっている、と言います。そして終いには「もう良い、満足した(もおええ、満足や)」と言います。そして、「墓の前でのお経はもう良い(もお、墓へこんでもええ)」とも言います。



 私はこの仏さんに、今から鳴釜で成仏させてやるから、心配するな、上に上がってくれ、と言う旨を告げました。そうするとこの仏さんは「あんたらみたいな人が来てくれるのを(来てくれんのを)、ずっと待っていたんや(ずっとまっとったんや)、有難う(おおけに)」と言います。私はこの仏さんに、妹の目も治してやってくれるな、と頼みますと、「治してやる(治したる)」とも言います。


 釜に火を入れ少しすると(まだ湯は沸騰していない)、もう仏さんの気配は全く感じなくなっていました。釜は少し小さめの音です。低い目の音です。時間にしても、短時間で終わりましたが、これで十分です。


 妹さんの目は、2週間程かかりましたが、眼鏡無しで新聞を読めるとの電話が有りました。姉さんの方の息子の女問題はまだ続いている様です。色恋沙汰は難しいです。兎に角、難しいです。今回も祈祷の願文に、はっきりとした文章で、縁切りの文面は入れませんでした。余談になりますが、以前に主人の女問題で困りきって、どんな事になっても良いので、主人を女の所から帰って来る様にしてください、という依頼で、うかつにも、はっきりと願文に入れてしまったところ、一ヶ月もしない内に、単独で交通事故を起こし、大怪我をして病院に入院し、その後は本妻の所に戻り、その後は新たに子供も出来て落ち着いて暮らしていますが、結果はそれで良いかも知れませんが、やはりこれは間違った祈祷だったと、反省しています。