ひきこもり
この青年は24歳です。高校時代は野球部に所属し、運動に明け暮れしていた、と家族の方が言われます。
大学受験に失敗し、予備校に一年間通いましたが、二年目も希望の大学に失敗しました。
この家は、お祖母さんが実権を握り、孫の大学受験にまで口を出します。
三年目も受験に失敗し、家でぶらぶらしていました。
お祖母さんが、何処其処の大学に行きなさい、と指図をします。
そうこうする内に、この青年は余り外に出なくなってしまいました。
家族との会話も無くなりました。
今でも、高校時代の野球のユニフォームを着て、部屋に閉じこもっている時が有ると、言います。
段々と言う事がおかしくなり、物を壊したりする様になって来ました。
そして、食べ物を食べなくなって来ました。
此処1ヵ月は、殆んど食べ物を受け付けない、と言われます。
家族が無理やり病院に連れて行き、検査をしましたが、内科では何も異常は無い、精神科に行ってくださいと言われました。
私の知人を通して、時間が有る時に、一度この家に来てくださいと、依頼が有りました。
この家に着き、事情を聞き、この青年に会う事にしました。
この青年は、お祖母さんの部屋の畳の上で、横を向いて目を閉じています。
耳は聞こえますが、反応が有りません。
長年に渡り外にも出ていないし、食べていませんので、青白く、痩せて、子供が寝ている様に見えます。
厚みが有りません。
巳神に、この青年のひきこもりの障りを聞きました。
妻が、地神様が青年に寄り添っている、と言います。
地神様が青年をなめている、と言います。
そうこうする内に、小さい三角形の穴が出て来ました。
地神様に、穴の中に入り、真実を出してくれる様に頼みましたが、穴が小さすぎて入れません。
小さい巳神に、穴の中に入って、中のものをくわえて来る様に頼みました。
初めは躊躇していましたが、その小さな三角形の一つに入って行きました。
しばらくして小さな巳神は、口に何かをくわえて出て来ました。
私は小さな巳神に、それをこっちに持っておいで、と言いますと、小さな巳神は、私の前にそのものを持って来ました。
妻が、手の指の上で、不安定に、あっちに行ったり、こっちに来たりして揺れている、と言います。
霊視をしている妻が、目が出て来た、冷静な、冷たい目の様、と言います。
巳神に、その目を巻いてくれる様に頼みましたが、巳神はこの青年の側を離れようとしません。
この目に、いろんな事を聞きましたが、何の反応も有りません。
家の奥では、この青年の兄弟が、笑いながらふざけ合っています。
この青年のお母さんも居ますが、私達の所には来ません。
この青年のお父さんはタバコをすいながら、上と下は勉強が出来たが、こいつはでけんのや(成績が悪い)、と言います。
お祖母さんは、私がこの青年に話しかけようとすると、先に答えを出します。私が少し黙っていて欲しいと、注意したほどです。
田舎の家ですので、この土地に地神様がいます。
この土地の巳神は、落ち葉の中から出て来ません。
此方の巳神は、最初からこの青年に寄り添ったままです。
こんな優しい巳神の態度は、今まで見た事が有りません。
この青年の、私の領域のものは、何も有りません。
小さな巳神がくわえて来たものは、この青年の心です。
小さく、奥に閉じこもってしまった、この青年の心です。
不安定に揺れている、この青年の心です。
冷静で冷ややかな目は、この家族の気持ちです。
この家の地神様は、やる気が有りません。
私は医者ではありませんので、医学的な治療法は分かりませんが、この青年を精神科に連れて行き、間違った病名を付けられ、投薬されれば、少し怖いものを感じます。何故なら、私の所には、この様な方が沢山来られますが、殆んどの人が薬の為か、お話をしていて悲しい、空しいものを感じます。
この青年も、家族の者がもう少し理解してあげる必要が有りますが、・・・・遅いかも知れません