鳴釜神事・・・鳴動釜(桶)・・古い釜と新しい釜
 今から20数年ほど前、私が高校生の時にガソリンをかけて焼き殺した白蛇を祀り始めて7〜8年経った頃、夜、明石市の美容室から帰ってくつろいでいますと、庭に祀るお社の方から鼓と仙法太鼓を合わせた様な音が聞こえて来ました。

 その数日後、妻も同じ音を聞いています。

 「トン・・・・トン・・・トン・・トン・トントントントントン・・・・・・」という様な音とリズムです。

 「さあ・・・戦闘開始やど(ぞ)」、という意味だったのでしょう。

 それまでにも数え切れない程の回数で、「人助けをせい」、という巳神様からのいろんな形のメッセージは受け取っていたのですが、「とんでもない、知らん人の家に行って・・・仏壇の前に座って・・・チ〜ンと鳴らして・・・そんな事出来るかい・・・気色悪い・・・、言うて・・・そんなもん・・・出来る訳がないやないか・・・わしは只の人間やで・・・ええかいな・・・好きな事言うもんやな・・・」、と毛嫌いしていました。

 ある時、私の先生に巳神が入り、優しく、「一緒に人助け・・・しょう・・・な・・・しょう・・・」、と私に肩を組んで来ました。

 その後、ものすごく大きな滝の音が私に覆い被さって来る様な事を経験して、はっきり言うと恥ずかしいのですが、このお知らせが何を意味するのかが理解出来ましたので、ある部分、怖気づいてこの世界に入る事を決心したというのもあながち嘘ではありません。

 今私が行っている鳴釜の神事にしても、昔、何かで読んだ覚えが有りましたが全く興味もなく、ある日、用事で私の先生の所に行った時に何気なくその名前を出してみたら、「教えたる」、という運びになりました。

 早速、鳴釜というものを京都の伏見稲荷大社という所に買いに行ったのですが、確かに、数軒ある各神具店に鳴釜に使うセイロというものは一つずつ置いてありました。

 各店、一応ビニール袋に入れて、奥の方にひっそり置いてあるのですが、どれもほこりだらけで、蒸篭の色も日焼けてしまって、これが商品として売り物になるのかと思われる物ばかりでした。

 ある神具店で、「鳴釜の桶・・・ちょっと見せてください」、と尋ねて話をしたのですが、「昔は釜を焚く人もいましたが、此処何年も釜なんか売れません・・・まだ、釜焚く人・・・居りますか?・・・」、と反対に私の方が尋ねられる始末でした。

 数軒見て歩いて、S神具店の釜がその中でも一番新しそうで綺麗でしたので購入して、後日、私の先生の所(寺)へ行き、教えて頂きました。

 「こうこうして・・・こうこうすんねん・・・」と言われてその通りにして釜を鳴らし・・・、「後は自分で勉強・・・し・・・」、と言われて家に帰って来ました。

 その後、家の地神様の前で相当な数の釜を焚いて勉強をしました。

 コンロの火の強弱、釜に入れる水の量、米のとぎ加減、米を入れるタイミング等、しかしこの勉強は、只単に技術的な練習をしただけ、という事に尽きると思います。

 その後、何を思ったのか、私は鳴動釜をビニールの袋に入れて仕舞ってしまいました。

 人助けをしなさいと言われて、今から私達が行おうとしている事にこの神事をツール、手段として使うのは、これはうかつに手を出すもんではないな・・・、と思いましたので仕舞いこんでしまいました。

 「それと・・・軽〜く思われてるパーマ屋に頼って来る人も居らんやろ・・・」、と思いましたので仕舞いこんでしまいました。

 一年近く仕舞い込んでいたと思います。

 しかし何がそうさせたのか・・・、その様な流れになっていたのか・・・、人を観させて頂く様になってしまいました。

 そして釜を焚かせて頂く様になってしまいました。

 私が釜を持って使う様になってから約20年、釜を焚いた回数は数えた事がありませんので分かりませんが相当な回数になると思います。

 私の場合、鳴動釜(桶)というものは、その祈願を達成させる強力なツールで、其れには神事を行う者に付いてる神霊が鳴動釜(桶)と同化して、その神霊の力を何倍も何百倍も強めて祈願を成就させるものだと思います。

 そして私場合、鳴動釜(桶)というのは、湯が沸騰し出すと地神様と鳴動釜(桶)が同化して祈願成就に向けた働きをするものだと思います。

 そして私の場合、鳴動釜(桶)が鳴り出すと、地神様の力の何倍、何百倍の力が働き祈願を成就させるものと思います。

 そして私の場合、鳴動釜(桶)が鳴り出すと、他の正当な神霊とのコミニケーションを取る強いツールの一つになっていると思います。

 そして私の場合、今使っている鳴動釜(桶)は私の地神様だけのもので、もし仮に、他の方がこの鳴動釜(桶)を焚いても何の作用も働かないと思います。(注:正当な神霊が付いている方はそれなりの力は働くと思いますが、やはり、鳴動釜(桶)は他の方に使わせない方が良いと思います)

 そして私の場合、鳴っている鳴動釜(桶)の鳴りが止まった時点で、地神様は鳴動釜(桶)から離れられるものと思います。

 鳴動釜(桶)も消耗品ですので、長年使っているとひび割れしたり、桶のヒノキ材が収縮したりゆがんだり、カビが生えたりします。













 「長い間・・・よう頑張ってくれた・・・有難う御座いました」、という思いが込み上げてきます。

 知り合いの方が、「百戦錬磨の釜ですね・・・」、と言われましたが、正にその通りだと思います。

 この釜を直しながら将来も使って行く予定でおりますが、長距離移動中に修理不能な壊れ方をして、依頼された方に迷惑がかかったら大変ですので、つい最近、新しい釜を買いました。

 
 最近はケヤキの桶(蒸篭)が多いのですがヒノキ材です。







 ヒノキ材の木目が綺麗です。



 ある宮師の方が造られた逸品で、蒸篭の蓋の鳥居のカーブが綺麗です

 さすが鳥居を作り慣れておられる方だなと感心しました。





 網受けは、経験上手直しをしました。





 網受けを下からも補強しました。

 ヒノキの薄い板に切り目を入れ、湯に一晩漬けて、家庭用のアイロンで丸く曲げています。







 30〜40回位釜を焚くとヒノキ材が収縮しますので、真鍮の輪をはんだでくっつけました。

 見た目は悪いですが、これ位頑丈にする必要があります。





 この1.5升焚きの鳴動釜(桶)は、本体だけで6キログラム程の重さがあります。

 この上にアルミの釜、水、1.5升の米の重さを足すと、約10キログラム近くの重さになります。

 アルミの釜、鳴動釜(桶)だけで93センチの高さになります。

 これにコンロの高さを足すと100センチ以上の高さになります。

 この釜は
伝統工芸美術品だと思います。

 ポイと車に乗せて、いろんな場所に移動して、いろんなケースに対応して来た今までの釜の様な使い方は出来ないと考えています。

 この鳴動釜(桶)は、何か得体の知れないものや、汚い不浄なものの祓いに使う様なものではないと思います。

 この鳴動釜(桶)は、正統な神霊を祀る正統な方が定位置に置いて、この領域での自分自身を高める為に、御自分が崇める神霊と向き合う為のツールとして使う釜の様な気がしています。
 
 やはり私は今までの「百戦錬磨の釜」を使い続けて行こうと決意を新たにしました。

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
鳴釜神事の実際と考察