鳴釜神事の実際と考察   12
鳴釜神事の実際と考察
             今回は、お地蔵様にまつわる話です。



 34歳の女性が、離婚をして実家に戻り、二人の子供を育てていますが、父親との折合いが悪く、家を出て独立し、二人の子供を育てながら生活が出来るのか、という相談で来られました。給料を聞くと、手取りが8万円位貰っていると言われます。分かれた主人からの養育費、公的な補助を合せても、無理な話です。養育費等はいつまで続くか分かりません。何年後の何月に、良い再婚の縁が来るので、それまで今のまま、実家に甘えて生活をしていく事を伝えました。



 この様な相談は、私でなくても、巷の占いの方の方が得意分野と思いますが、この方の父方の事が気になりましたので、私の中に入っている巳神に聞いてみました。


 この女性のお父さんは、長男ですが、実家を出て今の場所に家を建てています。実家には、母親と独身の弟と妹が住んでいます。御先祖の仏壇は実家に有りますが、この女性のお父さんは信心家で、今の家の方にも、正式ではないが、お祀りをしています。


 実家の弟、妹とは余り中が良くなく、殆んど実家には行かないと言います。


 巳神に、この実家の障りになっているものを、妻の方に出してくれるように頼みました。


 霊視している妻が、ぼんやりと頭が出て来て、そして手も出て来た、と言います。そして次に、菩薩様が出て来た、と言います。


 私は何の事か、全く分かりません。


 もっとはっきりと、分かり易く教えてくれ、と頼むと、妻が、菩薩様が生まれ立ての赤ちゃんを、両手の平に乗せている、と言います。頭がつるつるしている、と言います。


 この段階でも、私は何の意味か分かりません。巳神に、もっと分かり易く教えてくれるように頼みました。


 そうすると妻が、菩薩様が赤ちゃんを川に流している、と言います。


 私は私と同体になっている巳神の送ってくる情報に対しても、往々にして冷静に対処し、試しにかかる時が有ります。疑っているのではありませんが、私の性格です。このお地蔵様に対して、丁重に稲荷祝詞を上げます。そしてお地蔵様の表情や態度を観ます。全く変化がありません。


 恥ずかしい事ですが、全く分かりません。巳神が出してくれたものですから、この実家の因縁という事は分かります。まだ他に有るのなら、教えてくれと頼みましたが、他には何も出て来ません。


 するとこの女性が、お父さんの実家には、亡くなったお爺さんが彫ったお地蔵様が有り、大事に祀っていると言います。お地蔵様を屋敷内に祀る事は、地域にもよりますが、余り聞いた事がありません。


 私は、この家の御先祖が、時代は分かりませんが、人減らしの様な事をして、後年、罪滅ぼしの為にお地蔵様を置き、お祀りしたものと思い、その事がこの家の障りになっている旨を、女性に話しました。


 


 後日、この女性から電話が有り、家に来て御祓いをして欲しいと言います。そして、お父さんの実家のお地蔵様の事を話し出しました。


 お爺さんが生きていた時(時期は定かではない)に、家の近くの川原に行くと、急に体が痺れ、「目の前に転がっている石を持って帰り、お地蔵様を彫れ」という声が聞こえ、その石を持って帰って来た、と言います。そして一心不乱にその石を彫り、お地蔵様を作り上げた、と言います。実際に私は見ていませんが、素人が彫ったとは思えない程、見事な出来栄え、と言います。


 この実家では、お祖母さん、独身の弟、妹が、大事にお地蔵様を祀っている、と言います。


 これで分かりました。信心深い人の良い、善良なお爺さんの体を動かしてでも、祀って欲しいものが、その石に宿り、機会をうかがっていたのでしょう。亡くなって川に流されたものか、人減らしに川に流されたものか、定かではありませんが、こんなものを祀らされた方はたまったものではありません。


 後日、お地蔵さんが祀ってある、この女性のお父さんの実家で祈祷が出来ませんでしたので、今の家で行いました。


 先ず、線香の護摩をもって御先祖様の成仏を祈願しました。この家では、正式ではありませんが、しっかりお祀りしてあります。何の不足も、この御先祖様からは感じません。只、もう少しこの家の宗旨のお経を上げてあげれば、尚良いと思われます。


 線香護摩の途中で妻が、「尽」という漢字が出て来た、と言います。


 もっと、尽くして欲しい、もっと真心を込めて、長男であるこの家で、正式に、祀ってくれ、と取ります。


 お地蔵さんに関しては、強制的に縁を作って、お祀りしてくれる有り難い家族に対し、中年の独身の男女はいるし、痴呆の老婆はいるしで、この家族に対しての感謝の気持ちを、形を通して、何故表さないのかを、少しの抗議の気持ちを込めて伝えました。そして、どの様な経緯が有って、この様になったのかは定かではないが、鳴釜の神事をもって、少しでも菩提の岸(ほとり)に導く事が出来るなら、喜んで協力させていただく旨を伝えました。


 鳴釜の神事の用意をしている段階では、このお地蔵様を姿を出しません。相談に来られた日は、あんなに鮮明に姿を見せたのに、祈祷の当日は姿を見せません。


 祈祷の願文を述べ、大祓詞、龍神祝詞を上げ、地蔵菩薩の真言を繰り返し、やっと姿が出て来ました。しかし鮮明さは欠き、ぼんやりとしています。


 コンロに火を入れ、湯が沸騰して来ました。


 もう、お地蔵様の姿は消えてしまいました。


 いくら呼んでも出て来ません。


 洗い米を入れると、釜は大きな音で鳴ります。



●このお地蔵様に関しては、今後少なくともこの女性の家族には、悪い影響を与える事は無いと思いますが、実家の方に関しては、このまま行けば、この家(姓)は無くなってしまいます。もう少し早く、私がこの家と縁が有れば、違う形で祈祷していたと思います。