ある稲荷神の置かれる姿
 ある青年から電話が有りました。

 実直そうな青年です。

 実家はある地区の古くからの地主でしたが、親が事業に失敗し、少しばかりの土地が残りました。

 その土地に、昔からお祀りしていた稲荷様と、石碑を移転してお祀りしていると言われます。

 丁寧に稲荷様の御社や石碑の配置図を書いて、メールで送って来られました。

 この方は、自分の将来や仕事、家の事で、ある方に相談それたところ、石碑に対し祈祷をした方が良いと言われたそうです。

 この方は、その石碑の事をお母さんに聞いたところ、祖父母の代から「水神様」と呼ばれていると教えられました。

 この方は今まで全く信仰心が無く、昔から祀られているこの神様に対して一回も手を合わせた事もありませんでしたが、その事に対し、どの様に詫びたら良いのか、又、この方の家が、昔の様に繁栄するにはどうしたら良いのかという事を聞かれます。

 先ずこの家の石碑に入っているもの(正念)を聞いてみました。

 私、「地神さん、この石碑、ややこしいと観ますが、何の念がはいってますか」。

 妻、「石碑と言うか、石碑に彫られた仏像の様な、それが年が経つ内に古くなって、形が崩れた様なものが出て来たわ」。

 私、「地神様、その(石碑)の中のものを見せてください」。

 妻、「小さいけど、頭が二つ付いてる黒い蛇が出て来たわ」、「小さいよ」、と言います。

 私、「こんなもん、どうってことないやろ」、「こんなもん消したら良いだけの話や」、「これがこの家の没落した大きな原因ではないやろ」。

 私、「地神様、この家の御社に祀られている稲荷様を呼んでください」、「〜家の稲荷様、御姿を御見せください」、と言いました。

 *今、此方の巳神様は真っ白な色で出ています。
 
 妻、「出て来てあったわ」、「大きい稲荷さんやけど・・・、年寄りでヨタヨタ(よろよろ)してるし、足も少し開いているわ」、「毛が長いけど、汚れていて、ボサボサの毛で、元は白い色と思うけど疲れ切ってる様に見えるわ」、と言います。




 私、「〜家の稲荷様、あんた伏見系の稲荷さんか」。

 妻、「そうらしいわ、「根が優しそうな、良い稲荷様に見えるわ」、と言います。

 元来、相当力の有った稲荷様と観ます。

 今の御姿から観るに、此処までの姿になるには、何か大きな訳があったのでしょうが・・・・。

 私、「稲荷様、何か大きな理由があって今の御姿を取る様になったと観ますが、私の方からこの家の方に稲荷様の現状を説明し、稲荷様が本来の御姿に戻れるように話をしましょうか」、と言いました。

 妻、「しんどそう」、「もう、どうでもいいという感じやわ」、と言います。

 もう少し深く、此方の巳神様やこの家の稲荷様に聞いていけば良いのですが、これ位で終りにしました。

 この家が、昔の地主時代の様な繁栄を取り戻したりする事や、この青年の将来の安定は、絶対この稲荷様の力が要ります。

 この稲荷神の現状に目を瞑って、生きている者の都合を続ける事は、結局損を被る事になります。

 はっきり言って、言葉は悪いですが、「祀らな損や、こんな良い神さん、おってんやから(居るから)」。

 と言って、この稲荷様の今の現状を、本来のお役を持ってこの家に来た時の様な強い稲荷様に戻すには、この領域の者でも、そのお役がついていない限り無理です。普通の方では無理です。

 この旨を、この青年に伝えましたが、やはり判断するのはこの方の両親ですので、やはり難しいものが有ります。





 ○○府在住の方から電話が有り、ある稲荷神社が職場へ行く途中にあるが、時間が許す限り、毎日のようにお参りすると言われます。

 この稲荷神社は、ビルとビルの谷間に在ります。

 この方は、今の職場環境に不満が有ったり、又仕事の成績も上がるように祈願をしに行っていると言われます。

 他の神社のお札も、家にお祀りしていると言われます。

 この領域も詳しい様に話されますが、まあ、この様な方は沢山居られますので、それはそれで良いのですが、この方が一生懸命にお参りされている稲荷神社の御神霊が、どんな稲荷様かふと見てみたくなりました。

 此方の巳神様に、この稲荷神社の住所を告げ、祭神を呼んでもらいました。

 妻、「縦の格子の向こうに、ダラ〜と横になっている稲荷さんが居るわ」、「何か邪魔くさそうに見てるわ」。



 私、「貴方は○○○○稲荷神社の稲荷様ですか」、「ちょっとこっちを見てください」。

 妻、「顔だけ向けてるわ」。

 私、「ちょっと聞きます、貴方は伏見系の稲荷様ですか」。

 妻、「邪魔くさそうに顔を背けたわ」。

 私、「○○○○神社の稲荷様、貴方は伏見稲荷大社、白狐社の白狐様をご存知ですか、知っているなら、伏見の白狐様に私の事を聞いてください」、と告げました。

 妻、「何か、聞いているのかいないのか・・・」。

 私、「○○○○神社の稲荷様、此方を向いて座ってください」。

 妻、「ほんまに邪魔くさそうにして、座ったわ」。

 私、「有難う御座います・・・」。

 妻、「あかんわ、又また寝そべってしまったわ」、「しんどいみたい」、「年寄りやわ」、と言います。

 妻、「格子の前に、朱色で光るものが出たよ」、と言います。

 私、「稲荷様、話したくないん?」。

 妻、「向こう向いてしまったわ」。

 この○○○○稲荷神社は○○府のビル街に在り、一応有名な稲荷神社ですが、昭和40年代にこの地にに移転されています。

 稲荷様にはもっと聞きたい事も有ったのですが、向こうが拒否されるのですから、これ位で御帰り願いました。

 只、稲荷様としては、今はこの様な状態だが、「わしは正統な稲荷じゃ」と、威厳として朱色の玉を見せたのでしょう。

 
 上記した二つの稲荷神ですが、やはり祀る方(人間)の問題で、この様な御姿を取らざる羽目になったのでしょう。

 
 決して興味本位ではないのですが、街中には沢山の稲荷社が祀られています。そしてその稲荷社にはどの様な祭神(稲荷様)が祀られているのか、どの様な顔、体格、毛色、仕草などを見るのも、楽しみの一つです。

 柄の悪い眷属も顔を出しますが、まあ、それも現実ですので、しょうがない事です。






鳴釜神事の実際と考察