洋一の誕生会(学級活動)


6年生の学級活動の指導案です。
子どもたちの身の回りにも起こりうる差別について
自分ならどうするか具体的な行動について
考えさせる授業です。
この指導案は,指導者の了解のもとに公開しています。

こうして指導案や実践を公開することにより,
人権教育が,より一般化され,
多くの教師によって人権教育が進められていくことを
心から願っています

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第6学年  学級活動指導案

平成9年11月20日

指導者   森 年樹
1 題材
  あらゆる差別をなくそう(資料「洋一の誕生会」・出典「解放出版社」)
2 題材設定の理由
○ 日本国憲法には,「基本的人権の尊重」が明確にうたわれている。基本的人権の尊重,つまり,個人が大切にされるということは,幸福な社会をつくる上で最低限必要な条件である。しかし,我が国には,現在様々な差別が存在している。部落差別,人種差別,男女差別,障害者への差別などである。なかでも部落差別は,今日最も重大な人権侵害の問題であるといわれている。このような状況のなかで,差別の解消をめざした運動が現在続けられており,一定の改善をみているものの,差別の現実はなお厳しいものがある。このような差別をなくすために,本校でも6年生の社会科を中心に,具体的指導に取り組んできた。その中で,児童は,「差別が不合理であること」や「差別に負けない姿」について学習してきた。この時期に,あらゆる差別をなくすためにどうすればよいか考えることは,現在も続いている差別を身近なものと位置付け,差別を克服しようとする態度を身に付ける上で意義深い。
 本時取り扱う資料「洋一の誕生会」は,仲良し5人組のうち,被差別部落出身という理由だけで,友達の誕生会に声がかからなかったり,洋一の誕生会に誰も来てもらえなかったりする内容であり,同和問題を,過去のものではなく,現在の問題として考えることのできる教材である。また,差別される側ばかりではなく,差別をする側にも視点を当てて同和問題を考えることのできる資料である。
○本学級の児童(男子18名,女子17名,計35名)は,「差別」に関して,これまで社会科を中心に「被差別部落の起源」「被差別部落の人々のくらし」「高度な技術や知識」「差別に対するたたかい」などについて学習してきた。このような歴史学習を通して,児童は「部落差別の不合理性」や「被差別部落の人々の差別に負けていない姿」について理解してきた。そして,学級活動「差別に気づく目」を学習した際も,資料「ズボンと女」を読んだ感想も,かわいそうという感想だけでなく「差別に負けず,がんばった姿」に目を向ける児童もいた。これは,同和問題について,プラスイメージでとらえることができるようになっているからではないだろうか。
 また,この学級活動の授業前のアンケートでは,「自分の身の回りには差別がない」「自分は差別をしたことがない」と答えた児童が大半を占めていた。しかし,学習を通して,「自分たちも差別をしていたんだ」ということに気づき,思いこみや決めつけで人を判断してはいけないということを理解した。ところが,同和問題となると,「今日でも存在しているもの」と頭の中では分かっているが,まだ,実際に自分の身近なものとして考えることができていない。本学級では,直接同和問題による差別を受けている児童は見あたらないが,友達の和の中になかなか入れず,悩んでいる児童が存在する。その一方で,その児童の立場に立って考えることができない児童も多い。差別する側に視点を当てて学習を進めることを通して,相手の立場になって物事を考えたり,学級の人間関係を深め,よりよい学級を作ろうとする姿勢につなげたい。
○ そこで,本時の指導にあたっては,差別をなくすためには,差別される側の問題を考えるだけでなく,差別する側の問題を考えていくことが大切であることに気付かせたい。指導上の工夫としては,問題解決的な学習を通して考えさせる。
 まず,つかむ段階で,これまでの被差別部落に関する学習を振り返らせることで,「差別は仕組まれたものだ」「差別された人々は差別に負けていなかった」ことを想起させ,同和問題の学習であることを意識付ける。
 次に,見通す段階では,現在でも被差別部落の人々への差別があるを児童に尋ねることで,部落差別への意識を確かめたい。考える段階では,まず,資料「洋一の誕生会」を扱い学習を進めていく。心に強く残ったことに線を引かせ,なぜそこに線を引いたか,また,資料を読んでの感想等を話し合う。その中で,被差別部落出身という理由だけで,差別されている不合理性に気づかせたい。
 次に,差別する側に視点を当てて話し合いを進める。その中で,あらゆる差別をなくすためには,差別された側に同情するだけでなく,差別する側に問題があることに気付かせる。深める段階では,自分たちの問題として置き換え,資料同様,家の人から「いってはいけない」と言われたらどうするかを考える中で,たとえ相手が親であっても,間違っている場合は説得するほどの差別に対する問題意識を持たせたい。授業のまとめとして,差別をなくすためにどうするかという視点で感想を書かせ,あらゆる差別をなくすそうとする気持ちを高めたい。
3 ねらい
○ 差別する側の問題について話し合うことを通して,あらゆる差別をなくすためには,自分たちに何ができるかを考えることができる。
4 事前指導
社会科における具体的指導(他教科との関連)
5 指導過程
段階 学習内容及び学習活動 支援及び指導上の留意点 資料準備
つかむ 1 今までの被差別部落についての学習を振り返る。
今まで,被差別部落のことについてどんなことを学習してきましたか。 
◎ 農民が差別するようにし向けられたことや被差別部落の人々は,差別に負けていなかったことなどを押さえる。
○ 子どもたちから意見が出ないときは,社会で学習した感想を読み上げ,意見を出しやすくする。
● 話し合いに参加しているか。(観察)
見通す
2 現在も,被差別部落の人々に対する差別が残っているかどうか考える。

めあて

差別をなくすために,私たちには何ができるだろう。
◎ 部落差別対する児童の意識を確かめたい。
● 自分なりの考えを持つこと ができたか。(観察)
考える

3 資料「洋一の誕生会」を読み, 話し合う。

○ 感想を出し合う。
◎ 感想を出しやすくするために,心に残ったところに線を引かせる。
○ 被差別部落という理由で,誕生会に行かなかったことを押さえ,差別の不合理性に気付かせる。
● 自分の考えを持つことができたか。(観察)
深める
4 自分たちの問題として置き換えて話し合う。
家の人から,「行ってはいけない」といわれたらどうしますか。
◎ 差別する側に視点を当て,話し合いを進める。
◎ 単に「行く,行かない」だけではなく,なぜそうするのか,理由づけも考えさせる。
● 自分の考えを持つことができたか(ワークシート)
ワークシート
まとめる
5 本時をまとめる。
○ 授業の感想を書く。
◎ 差別をなくすためにどうするかという視点で感想を書かせ,差別に立ち向かっていく気持ちを高めたい。
7 板書計画(略)
8 事後指導
○ 児童が書いたワークシートを学級通信で紹介し,保護者にも意見や考えを書いてもらう。(家庭との連携)
9 使用資料(準備中)