副業・兼業の促進政策の経緯

働き方改革実行計画では次のことが示されました。

この中の柔軟な働き方がしやすい環境整備の一部に15行ほどで「副業・兼業の推進に向けたガイドラインや改定版モデル就業規則の策定」という項目があります。つまり長時間労働の是正、同一労働同一賃金などと比べ小さな扱いです。ここで次のようなことが述べられています。

働き方改革実行計画を受けて、平成29年10月から12月まで「柔軟な働き方に関する検討会」が開催されます。その報告を踏まえ厚労省は平成30年1月に「副業・兼業の促進に関する ガイドライン」を策定・公表します。

その後決定された、「未来投資戦略2017」,「未来投資戦略2018」においても副業・兼業という言葉が随所にみられます。例えば平成30年6月の「未来投資戦略2018」では、

第1 基本的視座と重点施策
2.第4次産業革命技術がもたらす変化/新たな展開:「Society 5.0」
(5) 「人材」が変わる
テレワーク、クラウドソーシング、副業・兼業など、従来の「正社員」とは異なる柔軟で多様なワークスタイルを拡大させる。

4.経済構造革新への基盤づくり
(1) データ駆動型社会の共通インフラの整備
AAI時代に対応した人材育成と最適活用
副業・兼業を通じたキャリア形成を促進するため、実効性のある労働時間管理等の在り方について、労働者の健康確保等にも配慮しつつ、労働政策審議会等において検討を進め、速やかに結論を得る。
第2 具体的施策
T.「Society 5.0」の実現に向けて今後取り組む重点分野と、変革の牽引力となる「フラッグシップ・プロジェクト」
[4]「地域」「コミュニティ」「中小企業」が変わる
3.中小企業・小規模事業者の生産性革命の更なる強化
(3)新たに講ずべき具体的施策
B)円滑な事業承継や創業支援等、適切な新陳代謝
副業・兼業を通じた創業を促進する。
D)経営人材や中核人材の確保など人材・ノウハウ支援の強化
・副業・兼業・出向などの多様な人材活用方法による中小企業・小規模事業者の中核人材確保策の普及促進や持続的なマッチングスキーム の確立
U.経済構造革新への基盤づくり
[1]データ駆動型社会の共通インフラの整備
2.AI時代に対応した人材育成と最適活用
2−2.人材の最適活用に向けた労働市場改革
(2)政策課題と施策の目標
ICTの普及・進化は、テレワーク、クラウドソーシング、副業・兼業など、従来の「正社員」と異なる新たな働き方を拡大させているが、こうした動きを後押しするためのワークルールを整備する。

(3)新たに講ずべき具体的施策
A)生産性を最大限に発揮できる働き方の実現
D多様で柔軟なワークスタイルの促進
副業・兼業の促進に向けて、ガイドライン及び改定した「モデル就業規則」の周知に努めるとともに、働き方の変化等を踏まえた実効性のある労働時間管理や労災補償の在り方等について、労働者の健康確保や企業の予見可能性にも配慮しつつ、労働政策審議会等において検討を進め、速やかに結論を得る。

令和2年2月には複数就業者への労災保険給付の賃金日額を就業先合算で算定する労災保険法の改正、65歳以上の複数就業者に雇用保険の適用を広げる雇用保険法の改正を含んだ「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が通常国会に提出され同3月に可決されます。(労災保険法の改正は令和2年9月1日に施行されました。雇用保険法の改正は令和4年1且に施行されます。)

さらに令和2年7月の「成長戦略実行計画」では

人生100年時代を迎え、若いうちから、自らの希望する働き方を選べる環境を作っていくことが必要である。ウィズ・コロナ、ポスト・コロナの時代の働き方としても、兼業・副業、フリーランスなどの多様な働き方への期待が高い。
実態をみると、兼業・副業を希望する者は、近年増加傾向にあるものの、他方、実際に兼業・副業がある者の数は横ばい傾向であり、働く人の目線に立って、兼業・副業の環境整備を行うことが急務である。
この背景には、労働法制上、兼業・副業について、兼業・副業先と労働時間を通算して管理することとされている中、「兼業・副業先での労働時間の管理・把握が困難である」として、兼業を認めることに対する企業の慎重姿勢がある。本未来投資会議の審議においても、兼業を認めると自社の労働力が減るにもかかわらず逆に管理工数が上がる中で、企業の労務管理責任の範囲・在り方についてしっかりとルールを整備し、企業が安心して兼業・副業を認めることができるようにすることが重要、との指摘がある。

としたうえで、兼業・副業環境の整備として以下について労働政策審議会の審議を経てルール整備を図るとされました

初稿2010/12/4