別れ、そして出会い


クラスメート一新


4月28日(日)
午前6時。
日曜日だというのにこんなに早起きした訳はカタリナとズザナを見送る為であります。

ホテルのロビーではカタリナが出発の準備を終え、紅茶を飲んでいた。
カタリナ:Pi-子、まだ寝ていてもよかったのに・・・見送りはうれしいけど。
Pi-子:うん。でも2人を見送りたかったし・・・ズザナはまだ?

ズザナはホームステイなので、一旦ここ、ハンターズロッジホテルで合流してロンドンのヒースロー空港まで行くことになっているのです。

カタリナ:ええ、もう来る頃だと思うんだけど・・・あら、トーマス、おはよう。
トーマス:おはよう。
Pi-子:おはよう、トーマス。

よく見るとトーマス、大きな荷物を手に持っている。・・・ということは・・・
Pi-子:・・・トーマスも今日、帰国?
トーマス:うん、残念ながらね。

見送る人が2人から3人になっちゃった。

表に1台の乗用車が来た。ズザナがホストファミリーにここまで送ってもらったんだ。

ズザナ:おはよう、カタリナ。Pi-子、見送りの為に待っていてくれたの?
Pi-子:うん、珍しく早起きできたし。


話をしているとバス・ターミナルまでのミニバスがやって来た。
(学校の「出迎えサービス」を頼んでいると、ホテルからミニバスでバス・ターミナルまで行き、長距離バスへ乗り換えロンドンのヒースロー空港まで 行くことになっているのです。)

Pi-子:じゃあ、みんな元気で。
トーマス:うん、Pi-子もね。
ズザナ:あと1ヶ月ちょっと、がんばってね。
カタリナ:スイスに来る時は連絡ちょうだいね。
Pi-子:ありがとう。


別れの言葉を言うと、3人、バスへ乗り込む。

バスが発車したところまで見届けると私は自分の部屋へ帰り、再びベッドへもぐりこんだ。
月曜日からはヴァルデマーもナオヤもいなくなるのか・・・ちょっとブルー。



4月29日(月)
前日からのブルーな気持ちを残したまま学校へ。
アン:Good-Morning ! 今日は授業を始める前にみんなにちょっと連絡があります。
そういえば、先週「クラスが替わるかも」って言ってたっけ・・・なんだろ?
アン:今週から生徒が増えるのでちょっとしたクラス替えを行うことになりました。"Pre-Intermediate"と"Intermediate" のレベルの生徒が多いのでクラスを増やすことになったの。
"Beginner(初級)"とか"Advanced(上級)"よりも"Pre-Intermediate(中の下)"と"Intermediate(中の中)"っていうレベルの人が一番多いんだろうな。
アン:まずはPi-子・・・あなたは引き続きこの"Pre-Intermediate"へ残って・・・
はいはい。変化なし、と。
アン:ノブコ、レティッツィア、エリーゼ、エッダは"Intermediate"よ。10時はこのままで授業を行い、 30分の休憩時間が終わったら、4人は新しいクラスへ行ってちょうだい。

ええっ、残るのは私1人だけ!?

o( _ _ )o ブルーな気持ちにますます拍車がかかっていく・・・


30分の休憩時間。
アダルトラウンジは今まで見たことがないぐらい大勢の人でにぎわっていた。アンも「生徒が増えた」って言ってたっけな・・・。

日本人らしい女の子を2人発見したのだけど、この時は話かける気がないぐらい落ち込んでいたPi-子・・・
レティッツィア:大丈夫よ、Pi-子。また新入生が入ってきて、友だちができるって。
Pi-子:・・・いや、ま、そうだとは思うけど・・・
ノブコ:・・・私、Intermediateクラスなんかに入って・・・ついていけるかしら。
Pi-子:大丈夫だよ、ノブコ。

レティッツィア:あ、もう授業開始時間。Pi-子、クラスが分かれるたって、ノブコと私は隣の部屋にいるんだから遊びに来なよ。
ノブコ:もし新しいクラスメートが嫌だったらPi-子もIntermediateクラスに来ればいいよ。

いや、私こそまだ自信も能力もないっス。

重い腰を上げて教室へ向かう。

教室の中にはアンがいた。
アン:これから新入生が来るわよ。楽しみね、Pi-子。
Pi-子:いや〜、本当に楽しみだ〜・・・。
(ひきつり笑い)

最初に教室に入ってきたのは、一人の少女。
アン:空いている席に適当に座って。
この子、どう見ても10代・・・50歩ゆずって20代前半だろう。

次に入ってきたのが、ひょろっと背の高い欧米人の青年。
彼に続いて入ってきたのは東洋人の青年で、なんと言ったらいいんだろうか・・中国だか台湾だか韓国だか分からないけど、こいつはオタクだ。 (日本人には見えないけど、おタクに国境はないので分かりません。)
メガネ&小デブ。カバンをたすきがけにしていたら完璧さ!

この二人はすでに友人になっていたようで、隣に並んで座った。

この後、オーストリア人の男性が一人、ドイツ人の男性一人が入ってきて全員で6人のクラスとなった。

アン:じゃあ、端から自己紹介してくれる。ええと・・・サンドラ、あなたからよ。
次は最初に入ってきた少女。
サンドラ:私はサンドラ。スイスから来ました。年齢は15歳。母と一緒に来ています。
ええっ〜、15歳!?レティッツィア(18歳)より若いっ!

次は2番目に入ってきた背の高い欧米系の男性。
マーカス:僕はマーカス。ドイツから来ました。ドイツでは通信系の会社に勤めています。それから、隣にいる 彼(例のオタクの方を向く)とはホームステイが同じ、ハウスメイトです。
ハウスメイトか。どうりで仲がいいな、と思った。

アン:誰か、マーカスについて他に訊きたいことはある?
謎のオタク:はい!マーカス、*1ガールフレンドはいますか?・・・ほら、答えろよ。
(笑)
マーカス:何だよ!
アン:
(笑)質問に答えて、マーカス。
マーカス:・・・あ、はい、います。
Pi-子:はい、質問!ガールフレンドは何人ですか?


マーカス一瞬間をおいて・・・
マーカス:1人だよ!1人だけっ!
Pi-子:冗談、冗談。
マーカス:全く、失礼なっ!
(笑)
Pi-子、少しは気分が回復してきました。

次は謎のおタク。
謎のオタク:僕の名前はキウシック。韓国から来ました。韓国はイギリスからとても遠い国です。飛行機で来るのに 12時間以上もかかり、さらに日本で乗り換えたのでもっと時間がかかりました。え〜、僕は最近、兵役を終えここに来ました。それから・・・
話が長い。
キウシック:僕の趣味はマンガとインターネットで・・・
見たまんまじゃん。

キウシック:Pi-子、*2お宅は日本人だったね。
Pi-子:え・・・そうだけど?
キウシック:お宅は「ナガノ・マモルさん」って知ってる?

え〜、どっかで聞いたような名前だな〜・・・誰だっけ?
Pi-子:聞いたことがある名前だけど、思い出せない・・・何をやっている人?
キウシック:これです。

キウシックが1枚の小さな絵を見せる。

う・・・それは・・・知ってる・・・。
キウシック:「ファイブスター○トーリー」ですよ。ナガノ・マモルさんはこのマンガの作者。
Pi-子:・・・うん、知ってる。
キウシック:僕はこのマンガが大好きなんですよ。

・・・こいつ、見かけを裏切ることなく、本物のオタクだ!

なんだかクセのあるヤツが入ってきたな・・・


ああっ!という間に夜。
今日は月曜日なので恒例の"Welcome Party"が開かれるのであります。

ただいま、7時45分。
7時半から始まるのだけど、みんなばらばらに来るから実際には8時くらいから始まるのよね・・・。

ちょっと早いけど、ヒマだし行ってみるか。

会場(と言ってもハンターズロッジホテルの中)へ行って、知った顔はいないかな〜と捜す・・・

メイシー:Pi-子!
後ろから名前を呼ぶ声がして、振り向くと先週の日曜日一緒にラウンド・ロビンに参加したメイシーがいた。

Pi-子:メイシー・・・あ、そうだ。今日、うちのクラスに韓国人が入ってきたよ。
メイシー:男?女?
Pi-子:男。ちょっとクセがありそうなヤツでね・・・これから(パーティーに)来ると思うから紹介するよ。
メイシー:ふぅん、彼はどのくらいここに滞在するの?
Pi-子:あ・・・え〜と、5週間・・・違うな、5ヶ月だっけな?それとも半年?・・・忘れちゃった。彼にはあんまり興味ないから。
メイシー:興味ないって・・・それって、彼がかっこ悪いってこと?
Pi-子:う・・・う〜ん、ま、そういうことかな・・・。
(汗)
メイシー:・・・・・・・・・がっかり・・・・・・

落胆するメイシー・・・韓国人って、プライドが高いから悪いこと言っちゃったかな。
(と、この時は思ったのだが、後ほどメイシーはただの面くいであったことが判明した。)
Pi-子:な・・・何か飲み物でも取ってこようか。
メイシー:・・・うん。


ジュース(といってもアルコールも少し入っていたような気がする)をもらってきて、適当な席を探す。
先週に比べてずいぶん新入生が増えたな〜、だからクラスを増やしたんだろうな。

メイシー:ハイ、ジョアンナ。
ジョアンナ:ハイ、メイシー、Pi-子。

メイシーがジョアンナに話かける。
ジョアンナというのは台湾人で、彼女もメイシーやノブコと同様、長く(この時3ヶ月ぐらい)滞在していました。
クラスはPi-子よりずっと上で、英語がうまく、かなり饒舌なので今までは気迫におされて、この時まであまり話をしなかったのですが・・・ ただ単にきっかけがなかっただけかも。

ジョアンナは昼間見た女の子2人と一緒に話をしていた。
ジョアンナ:Pi-子は日本人よ。
ジョアンナが2人に話しかける。
女の子:日本人なの?日本のどこ出身?
Pi-子:千葉県。あなたは?
女の子:えっ、私は日本人じゃなくて、韓国人よ。彼女
(もう一人の女の子)が日本人。
ナンキウといい、また韓国人と日本人を間違えてしまった。

もう一人の女の子:私が日本人。仙台から来ました。名前はヒロコ、よろしくお願いします。
最初の女の子:私の名前はミア、よろしく。
Pi-子:こちらこそ、よろしく。

ヒロコとミアか。2人ともショートカットで活発そうな感じだ。

おっ、キウシック発見。
Pi-子:メイシー、彼だよ。
キウシックを呼び止め、メイシーに紹介する。

メイシーの笑顔はひきつっていたように見えた。

(Pi-子)




*1 ガールフレンド
英語(英国で?)で"Girlfriend"というと「恋人」「(日本語での)彼女」のことを指します。
「単なる友達(Just a friend)」と言いたい場合には「Male(男性の)」「Female(女性の)」を使うそうですが、会話の中で強いて男女を区別する言葉は 使わなくてもよいです・・・とアンが言っていた。

*2 お宅
英語で会話しているので「あなた」も「君」もすべて"You"ですが、キウシックの性格を考えて「お宅」にしました。