追放された落ちこぼれ、辺境で生き抜いてSランク対魔師に成り上がる
御子柴奈々(HJ文庫)
追放された劣等性の少年が異端のスキルで無双する学園ファンタジーストーリー。
百五十年前の「人魔大戦」ののち、魔族が住む「黄昏の地」と呼ばれる領域に人類が包囲され
生き残った人類は、結界都市を築いてその中で生き延びている、というかなり崖っぷちな世界観なのに
人類がダメダメすぎるのが酷い。罪もない人間を追放する愚か者がいたり、魔族に与する裏切り者がいたり。
大枠としては底辺からの成り上がりものですね。主人公が力を手に入れる流れも王道で燃えます。
ただ、インフレが早すぎるというか、一巻時点で人類側の世界最強級が一気に登場するので
それ以下である学院の大半の生徒が雑魚にしか見えなくなるのが…厨二心はバッチリ擽られるのですが。
ラストは全ての元凶である魔族のボスを撃破し、世界は青空と平和を取り戻したのだったエンド。
ラブコメ的にはヒロイン三人に告白されるも、主人公の返事は描かれずに終了。
主人公は劣等生であるがゆえに仲間に裏切られ、魔族だけが住む辺境である「黄昏の地」へ追放されるも
二年間、必死で黄昏の地で生き抜き異端の力を身に着け人類最強の対魔師へと成長した少年。
人間界に戻った後はエリートを養成する対魔学院に入学し、いきなりSランク対魔師に抜擢されることに。
自分に自信がないせいかやや押しに弱いが、物腰穏やか、真面目で心優しく誠実な性格。
世界を守るために戦っていた父を尊敬しており、力がなかった昔も、力がある今も、強いからといって
弱者を虐げるという思想を嫌い、誰かを守れるような人間になりたいと願っている。
好きなものは本(自分では想像もできない世界に浸ることができるから)
ヒロインは負けず嫌いな学院長の娘、美しき王女、自由奔放な先輩、人懐っこい級友。
特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。
評価はC。
見下されていた劣等生が力を手に入れて周囲を見返し、英雄へと成り上がっていく!
というこの作品の話の流れは大好物なのですが、個人的な好みを言えば主人公のキャラが少し残念。
仲間に見捨てられて二年間一人で敵地で死に物狂いになって生きてきたという設定なのに
シビアさがほとんど見られず、甘さが目立つというのは過程と結果に噛み合わなさを感じてしまいました。
同じような流れで別人と化した「ありふれた職業で世界最強」の主人公のようになれとまではいいませんが
そのせいで最初は舐められたりいじめられたりするのは無駄なストレス展開と言わざるを得ない。
まあ、その分ヒロインたちが自己主張していて賑やかかつ華やかなのでバランスは取れているのかもですが。
本筋は全てに決着がつき、本懐を果たしての完結と、物語としてはきれいな形で纏まっていたものの
ラスボス関連の描写がかなりあっさり気味だった上、元凶にも関わらず満足して死亡というオチだったため
クライマックスの盛り上がりと決着時の爽快感いう点で見ると、少々物足りなかった印象。
ラブコメ面も未決着でしたし、エピローグも短すぎて消化不良感のほうが強かったというのが正直なところ。