辺境都市の育成者 七野りく(富士見ファンタジア文庫)
伝説の育成者と伸び悩む中堅冒険者の少女の出会いから始まる、バトルファンタジーストーリー。
大枠としては教官ものですね。ただ、同作者作の「公女殿下の家庭教師」が教官(主人公)側の視点を
メインにしているのに対し、こちらの作品は教え子(ヒロイン)側の視点がメインになっています。
見た目や態度は胡散臭いもものの、優秀な数多の弟子を育てた実績があり、長命の人間(?)ということで
人生経験豊富で安心安定感は抜群ですし、肝心の教導も読み手にわかりやすくサクサク進むので読み易い。
教え子側の視点という形で主人公の凄さや強さを描写する、という手法も中々新鮮な最強感があってグッド。
ラストは世界に復讐せんとする剣聖を退け、世界は激動の神無き時代へ。
そして時は流れ、育成者の残した想いは最後の弟子へと受け継がれて―――エンド。
ラブコメ的にはメインヒロインのレベッカが最後まで主人公の隣にいたのは間違いない様子。
主人公は辺境都市の廃教会に住む、大陸に名が響く弟子を育てた実績を持つ「育成者」の青年。
外見は二十代前半、黒髪でやや高めの背丈に細身、そして童顔にかけられた小さな眼鏡と研究者風だが
育成者としては超がつくほど有能で、実績も申し分なし。他者の成長に手を貸し、成長したら喜び
時が来たら先へ進むよう力強く励まし、巣立った子達のことをいつまでも気にかけている。
常に穏やかで落ち着きがあり、飄々とした態度で何もかも見透かしたような言動をとることが多い。
また、妬みや嫉みを全く含めることなく他者を褒めることができるが、それゆえに異性が相手となると
誉め言葉がほとんど口説き文句になっていることも珍しくない。勿論本人にそんなつもりはないが。
育成以外にも、ケーキなどのお菓子作りも得意で、よくお茶をしている。
ヒロインは元貴族な冒険者、マイペースなギルド職員、苦労人な盾役、冷徹なハーフエルフ。
本大好きな混血魔族、過激派な魔女、ヤンデレ着物娘、凛々しき女王。他にも好感度大な女性がチラホラと。
一番のお気に入りは迷宮都市最強クラン「薔薇の庭園」の副長にして「不倒」の名を持つ楯役、タチアナ。
スラリとした長身に均整の取れた完璧な身体つき、信じられないくらいの美貌。
そして、光り輝く長い金髪につけられた蒼い花飾りが特徴的な美少女。
物腰穏やかで人当たりがよく、真面目な頑張り屋だが、割とイイ性格をしていたりもする。
苦労する星の下に生まれたのか、周囲の人間に恵まれないのか、貧乏くじを引かされることが多い。
評価はC。
才能はあるけれどそれを活かせず伸び悩んでいるヒロインを、主人公が教え導き開花させていく。
正に王道の師弟物語といった感じの話で、わかりやすい悪たる敵を倒す展開もあったりと読み味は爽快。
ただ、メインの視点が教え子側ばかりであるため、内心不明な主人公に感情移入しにくいのが難点でした。
伝説の育成者で自身も強者であり、実年齢は不明。と、謎が多すぎるのも拍車をかけていましたし。
そういう意味では、この作品はどちらかというと群像劇として読むのが正しいのかもしれません。
一巻ではレベッカが主でしたが、二巻以降では今までの、そして新しい教え子も続々と出てきましたし。
本筋は一巻から続いていた陰謀を食い止めての完結と、話としては綺麗に纏まった形にはなっていたものの
結局ラスボスは逃がすわ、更なる黒幕が登場するわ、主人公とメインヒロインは最終的に消息不明になるわと
消化不良感が物凄かったです。一応、エピローグ時点では大体の問題は解決していたようですが…
読者からすれば、その過程をじっくり読みたいわけですしね。過去(六英雄時代)の話も気になりますし。