公女殿下の家庭教師   七野りく(富士見ファンタジア文庫)



魔法の実力が人生を左右するファンタジー世界を舞台にした、世界を革命し得る教師と生徒の伝説譚。
大枠としては家庭教師ものですね。主人公とメインヒロインが四歳差なので歳の差ラブコメ要素もあります。
この手の話は教師と教え子のどちらかが、あるいはどちらもが大きな問題を抱えているがゆえに
信頼関係を結ぶまでに時間がかかるのがお約束ですが、この作品は対面してからすぐの段階で親しくなり
飾らない和気藹々なコミュニケーションをとるようになるので話が早く、見ていて微笑ましいです。
主人公の教師としての腕前も申し分ないですし、良質の成長物語が楽しめるかと。
ラブコメ面は今のところ主人公の相方であるリディヤが圧倒的に優位な立場にいるようですが、さて。

主人公は恩師の頼みで魔法が使えない公女殿下ティナを家庭教師として指導することになった青年。
魔力量は人並み以下なものの、魔法の制御技術と博覧強記ぶりは他の追随を許さない。
謙虚で心優しく穏やかな性格で身内には甘々だが、自分で決めていることに関してはとても頑固。
また、昔から様々な厄介事に巻き込まれがちであるがゆえに苦労人気質が強い。
自己評価が低くなりがちで、自分一人のことならば理不尽な扱いを受けても我慢してしまうことも。
色恋沙汰を除けば察しは良く、物事の教え方も上手、実績もありと教師スキルが高い。
妹や後輩の頭をよく撫でていたことから、年下の女の子の頭を撫でることが癖になってしまっている。

ヒロインは聡明な公女、ドジっ子メイド、傍若無人な剣姫、気配り上手な剣姫妹、ぶっきらぼうな義妹。
努力家な生徒会長、人見知りな商人娘、ちゃらんぽらんなメイド。他にもフラグ成立済み女性は多数の模様。
一番のお気に入りは王国四大公爵の一角ハワード家の次女ティアの専属メイド、エリー・ウォーカー。
ブロンドの髪を二つ結びにしている、十四歳という年齢の割には胸の大きな小動物系美少女。
おっちょこちょいなドジっ子だが目標へ向かって頑張れる素直な性格であり、相応の才も持ち合わせている。
好きな人に対しては甘え気味で、普段の天真爛漫っぷりに反して案外強かなところも。
ドジこそ踏むが、料理、裁縫、掃除といった家事スキルは普通に高い模様。

現時点(十七巻)においての評価はC。
年下の教え子な思春期ヒロインたちに振り回される一方ではなく、時には天性の年下殺しを如何なく発揮して
積極的に弄りに回れる年上のお兄さんの余裕を見せてくれる主人公が安定感と信頼度抜群。
まあ、平凡な人生を望んでいるのに厄介事が向こうからやってくるわ、周囲の陰謀(支援)に巻き込まれ
名が上がっていく一方なのはご愁傷様ですが。でもヒロインの大半が身分高いから仕方ないですね!
そんな彼に甘々でわかりやすい好意を見せるヒロインたちの言動もニヤニヤ感満載でグッド。
ただ、押しが強すぎるというか、段々重くなってくるところは理不尽ヒロインと紙一重な怖さがありますが。
本筋は帝都にて敵組織の幹部の一人を撃破。そして主人公と義妹は勇者から姓を下賜され、次巻。