魔弾の王と極夜の輝姫 川口士(ダッシュエックス文庫)
十一歳の少年と十五歳の少女の初めての恋と冒険の物語。
同作者作「魔弾の王と戦姫」のパラレルワールド作品の四作品目にあたる話ですね。
今までの作品は魔弾の王と戦姫以降の年代(主人公が十六歳以上の時点)から本編が始まっていましたが
本作は主人公が十一歳と幼少期からのスタートになっており、その他にも初めて出会ったヒロインが
当作品のメインヒロインであるソフィーヤであるという点が主なIF要素になっています。
また、年齢が年齢ということもあり、過去作と違って戦争ではなく冒険がメインになっているのも特徴かと。
ラストは大冒険の果てに一連の騒動に決着をつけ、五年後に成長した二人再会を果たすのだったエンド。
ラブコメ面はメインヒロインのソフィーヤと結ばれて終了。なお、主人公は他の戦姫にもフラグを立てている模様。
主人公はジスタート王国の北端にある港町イルフィングにてソフィーヤと名乗る少女を助けた十一歳の少年。
ブリューヌ貴族のウルス=ヴォルン伯爵の息子にして嫡男であり、二年前に母親を亡くした。
年齢からはとても信じられないほどの優秀な弓の腕を持っている(ただし、剣や槍の腕前は壊滅的)。
真面目で実直な性格をしており、一度こうと決めてからが強いタイプ。
ヒロインはお淑やかな戦姫(予定)。
一番のお気に入りは攫われた母を助けるために港町イルフィングにやってきた少女、ソフィーヤ=オベルタス。
肩にかかるほど長い淡い金色の髪と、緑柱石の色の瞳を持つ十五歳の美少女。
しっかり者で聡明な性格だが、お淑やかそうな容貌からは想像できないほどの並外れた行動力と度胸。
そして、一度抱いた意志を曲げることがない、何度危険な目なってもへこたれない心の強さの持ち主。
評価はC。
一人の少女との出会いを切欠に巻き起こる、雪と氷の大地に眠る秘宝を巡っての冒険。
戦記であるがゆえに殺伐とした雰囲気にならざるを得なかった過去作とは違い、夢と浪漫に。
そして十一歳の少年と十五歳の少女が紡ぐからこその初々しさに溢れている物語が素敵でした。
まあ、雰囲気が変わりすぎていて「魔弾の王」シリーズ感があまりなかったといえば、その通りではあるのですが。
キャラに関しては、十一歳なのにやたらとたくましい主人公が見ていて楽しかったです。
超絶な弓の腕前は相変わらずで、今までの作品で見てきた「らしさ」もちゃんと出ていましたしね。
そんな四歳年下の少年に心を寄せていくソフィーヤは逆に過去作では見なかった可愛らしさがグッド。
本筋は二巻完結と短めながら、綺麗に纏まっていて読みやすい物語に仕上がっていたと思います。
ただ、それだけに、成長した二人が新たに織り成す物語も読んでみたかったところではありますが。