あなたの街の都市伝鬼! 聴猫芝居(電撃文庫)
都市伝説や妖怪を一冊の本として編纂することになった主人公と人外の者たちのハートフルストーリー。
おおまかな設定としては「よめせんっ!」や「101番目の百物語」に似ていますね。
ただ、この作品は二作とは違い、基本的にバトル要素はほぼ皆無だったりします。
あるとしても、あくまでトラブル解決の一手段でしかなく、そこがメインになることはない。
その和気藹々感を貫く姿勢が個人的には好みの作品ですね。
主人公は民俗学者を志望する高校一年生の少年。
一巻にて、都市伝説が実体化した存在である都市伝鬼と妖怪を本として編纂する「編纂者」となった。
都市伝説や妖怪といった類のことを愛しており、しかし同時に怖がりでもあるため日々苦労している。
恐怖を煽られたり、金欠になってもへこたれず編纂を進んで行うあたり、かなりのお人よし。
この手のヒロインに囲まれて暮らすタイプの主人公にしては珍しく、一人のヒロイン(サキ)に一途。
多少目を奪われることはあっても、常に心はサキに奪われっぱなしだったりする。
なので、性欲を覚えたり、スキンシップや嫉妬を嬉しがったりと、普通の思春期の男っぽい反応が多い。
ヒロインはムラサキカガミ、ジェット女、雪女をメイン格に。
サブヒロインポジションとして斧女、コトリバコ、人魚、メリーさんなど。
実質的にサキが正妻かつ単独ヒロイン状態であり、他のキャラがヒロインになれる余地はない感じですね。
それでいて、ドロドロとした人間関係になるわけでもなく、和気藹々としている雰囲気が良し。
一番のお気に入りはムラサキカガミの都市伝鬼、サキ。
世話焼きで、家事全般に長けているため、主人公の家の家事を一手に引き受けている。
一人称も「妾」であり、常に時代がかった古めかしい口調。
色恋沙汰に疎く、あまり主人公に対して警戒心がないため、彼に対してよく無防備にスキンシップを行う。
しかし、その実かなりのヤキモチ焼きであったりも。
現時点(三巻)においての評価はC。
賑やかかつ心暖まる物語が読んでいてほっこりします。
全体的にやや盛り上がりに欠けますが、こういうゆったり感のある作品もたまには悪くないかと。
難を言えば、基本、出てくる都市伝鬼や妖怪は女性なので華やかさはあるのですが……
ヒロイン、という視点で見ると実質的にサキ一強なのでハーレム感がまったくないのが残念なところですね。
主人公がまったく脇目を振りませんし。なんだこの熟年ラブラブ夫婦。
しかしこの作品、都市伝説や妖怪の数を考えると、編纂終了=完結になるとは思えないので、どう区切りをつけるのか。
まあ、ネタが続く限り今のような展開を延々と続けていくのもありでしょうが。