これが魔法使いの切り札   羊太郎(富士見ファンタジア文庫)



凄腕剣士が魔法学院の常識を次々と打ち破っていく学園ファンタジーストーリー。
作者の前作である「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」と同じく、魔法学園が舞台となっている作品ですが
登場人物や世界観の差異をはじめとして、読み味は全然違うので二番煎じ感はないです。
魔法学院なのに魔法を使わず剣術と身体能力で無双したりと、主人公からして特異すぎますし…
巻を重ねるごとに物語のスケールが壮大になっていきそうと期待できるワクワク感は同様なんですけどね。
読者が理解しやすく、その上でしっかりとした世界観が構築されている点も相変わらずと流石の一言ですし。
ラブコメ面は今のところ進展なし。フラグ自体は順調に進行中のようですが…

主人公は元々凄腕の傭兵剣士であったが、傭兵生活という血生臭いブラック稼業に心の底から嫌気がさし
自身の戦死を偽装し傭兵団を勝手に退団。戦場とは程遠い「平和で楽しい生き方」を求めて
魔法使いになるべく世界最先端の魔法学院に入学するも魔術適正が0だった少年。
軽薄、能天気な性格で、誰にでも気さく(無礼ともいう)だが、頭が良くなく、勉強はまったくできない。
また、傭兵としての人生が長かったがゆえに、悪気はないが物騒で殺伐とした発言が多かったりする。
色恋には意外とお堅く、市絵行為は一生を添い遂げる相手としかしないと決めている。ただし複数人可。
弱点は船酔いに弱いこと。

ヒロインはやさぐれ同級生、才女な皇女、控えめな同級生、ドラゴンな妹分。
一番のお気に入りは主人公たちと一緒に学院に入学した新入生、アニー=ミディル。
両肩に垂れる二つ結びにした亜麻色の髪、優しそうな群青色の瞳、女性としては平均的な身長。
そして、まるでお人形のように美しく整った顔立ちをしているが、いまいち垢抜けなさがある美少女。
少し臆病なところこそあるものの、優しく穏やかで朗らかな性格。
魔法を学ぶのは初めてだが、魔法が身近にある世界で生きてきたため、主人公よりは魔法に詳しく
彼に色々なことを教えることになるが、彼の常識はずれな行動に戸惑うこともしばしば。

現時点(二巻)においての評価はC。
脳筋ゴリ押しな主人公が目立つ序盤の展開からして、ギャグをメインにした作品なのかなと思いきや
主人公やメインヒロインのシノに重く暗い過去や設定があったりと、緩急が利いている作品。
まあ、彼ら自身はあくまで自分の幸せを追い求めているだけなので、読み味の重さは然程ではないのですが。
キャラに関しては、自覚なく物理で魔法を凌駕していく主人公が実に爽快かつ愉快。
ヒロインたちも癖のない、安定した可愛らしさが挿絵と相まって華やかでグッド。
本筋は魔王の力を求める集団「祈祷派」の協力者による横暴を粉砕した主人公と仲間たちですが
学内外から注目を集めることとなり、それによって混沌の激動が起きそうで…?