2-1-01

・第1回「野球漫画で見る沖縄」

巨人軍が訪れる奥武山野球場をはじめ、沖縄県内では数多くのプロ球団が春季キャンプを実施します。
第1回の沖縄コミック紹介は、野球漫画で取り上げられた沖縄を紹介してみます。
そんなにないのでは?と思うかもしれないが、舞台が沖縄だったり、沖縄出身の選手、あるいはその設定だったりと意外なほど多彩な作品がそろっています。

まず最初に紹介するのは、「ハイサイ!甲子園」(市田寛+高田靖彦/作 小学館刊)

米軍統治下の沖縄から、初めて甲子園へ出場した首里高校野球部のドキュメント作品。


パスポートによる渡航、甲子園の土廃棄事件と友愛の碑誕生のエピソードなど、沖縄の高校野球史の1ページともいえる話の連続は、そのまま沖縄の苦難の歴史ともいえると思います。


 

 

次に紹介するのは、大長編ですが感動の名作として有名な「遥かなる甲子園」全10巻(山本おさむ/作 双葉社刊)

風疹により耳の聞こえないハンディを乗り越えて、甲子園をめざす福里聾学校(北城聾学校)野球部の物語。

実話を基にした作品だけに、10巻という長編漫画もあっという間に読めてしまいます。

野球と障害者、ハンディキャップについて、改めて考えさせてくれる傑作です。

沖縄県内の図書館では、郷土資料として収集されていますので目にした方も多いのでは?

ちなみに、文庫版も出版されています。

 

続いて、紹介するのは、「プロ野球・名選手たちの甲子園 1」(竹書房刊)に収録されている「第7話 チーム奮起へ!!豪打が火を吹く 石嶺和彦(オリックス・ブルーウェーブ)編」。

豊見城高校の春夏連続5回の甲子園出場の立役者・石嶺選手の活躍を描く短編。

こんな伝記的な作品もあるのですよ。

でもめずらしいから、古本屋でもなかなか手に入らないかもしれない。

 

 

さて、ここから先は創作の沖縄チームが出てくる作品を紹介します。
 まずは、「ラストイニング」(中原裕/作 小学館刊)

第6巻~7巻では、沖縄合宿する中で、地元沖縄のチームと主人公のチームが対戦しながら、力をつけていくというエピソードが。

その中で、21世紀枠で出場し、大活躍した宜野座高校の投手の変化球についての話が出てきます。

さて「宜野座ボール」とは、実在する魔球なのでしょうか?

 

 

次は、野球漫画として超有名な「ドカベン」(水島新司/作 秋田書店刊)の第48巻

ドカベン率いる明訓は、準決勝で沖縄代表・石垣島高校と対戦しています。


天候が味方して……という話なのですが、今読み返すと、2006年の八重山商工の甲子園での活躍を予言していたかもしれない。

野球漫画は、各都道府県の創作チームが登場するのですが、いろいろと奇抜なチームが出てきたりします。あまりにも度を越えると今の目線では問題になりそうなのもあるのですが、大目に見ようね。

 

「熱球の虎」(高田まさお/作 集英社刊)第5巻では、主人公のチームが、甲子園準々決勝で沖縄代表の守礼門高校と激突しています。

校名からすると、那覇市内の首里あたりの学校なのでしょうか?

主人公と沖縄の天才選手が、死闘を繰り広げてます。

 

 

沖縄出身の漫画家の「わたるがぴゅん!」(なかいま強/作 全58巻 集英社刊)は、20年にわたり連載された中学野球の大ヒット作品。

中心となるのは東京所在の中学校ですが、そこに沖縄から転校してきた主人公・与那覇わたると宮城正の二人が加わり、夏の大会で大活躍します。

沖縄方言を随所に取り入れ、沖縄出身を強く印象づけた主人公の破天荒な活躍は、読者だけでなく、沖縄のまんが家予備軍にも大きな影響を与えたものと思います。

まだまだあります。

「県立海空高校野球部員山下たろ~くん」第20~21巻(こせきこうじ/作 集英社刊)では、主人公のチームの甲子園準決勝の相手として、沖縄・あわもり高校が登場します。

校名がものすごく違和感がありますが、それはさておき。

あわもり高校は、それまで毎試合を逆転で勝ち進んできた強豪校という設定。

沖縄の甲子園代表校のレベルが上がるのに合わせて、マンガの中でも扱いが高まっている気がしました。

 

 

「おはようKジロー」第27~(水島新司/作 秋田書店刊)

こちらには、主人公チームの甲子園決勝戦の相手として五九男水産(沖縄)が登場!


 水産高校という設定は、沖縄水産高校の二年連続準優勝という実績が作者にインパクトを与えたのかもしれません。

ただね~。

五つ子がいて、それを活かしたセコイ?チームというのは、悲しすぎる気がする。

 

「もっと野球しようぜ」第7~10巻(いわさき正泰/作 秋田書店刊

こちらには、主人公チームの甲子園準々決勝の相手として首里城学園(沖縄)が登場!


 他競技の有力選手を集めて編成した異色の沖縄チームだが、一人の天才バッターが。

4巻に渡る両チームの壮絶な打撃戦の行方は? 

 

 

 

甲子園での沖縄代表の活躍に比例して、高校野球漫画での沖縄チームの描かれ方も急速に変わりつつあります。

「砂の栄冠」第19巻(三田紀房/作 講談社刊)

甲子園の魔物というか、沖縄に対する熱い応援の脅威が描かれている。

けれど冷静に対応する主人公たちのチームに、なすすべもなく初戦敗退してしまう。

沖縄びいき……

うーん。そんな時もあったね。

次に紹介する作品では、原作者と漫画家が春の選抜で優勝した沖縄尚学を取材して、作品に生かしているようです。

ただし、沖縄尚学が出るわけではありません。

「ドリームス」第50巻~(原作/七三太朗 漫画/川三番地 講談社)

 すごい巻数を重ねている野球漫画で、沖縄チームも出ているかと思っていたら、とうとう出ました。

 主人公・久里の率いる夢の島高校が準決勝で対戦する相手として、「美ら海高校」(沖縄)が登場しています。

 しかも、そのエース投手は、首里城きらりという女性選手! 

女だからという社会からの決め付けに実力でもって対抗し、久里とのライバル対決に臨むきらりの勇姿は、圧巻の一言です。

さて、高校野球の締めくくりは?と考えて、倉庫をあさったところ、ありました。野球と青春漫画の大御所の作品が。

アイドルA 第1巻(あだち充/作 小学館刊)

 「タッチ」や「ナイン」「日当たり良好」で有名な、あだち充作品の中に、ついに沖縄が……。

 主人公は……う~ん。うちなーんちゅじゃないですよ。

いやヒーローではなく、ヒロインか?

沖縄でモデルになっていて、プロ野球で活躍していて……。でも野球漫画だし……。
2巻が作られるだろうか心配ではあります。
 まあ、どんな形であっても、沖縄が出ると収集してしまいますから……。

こんな漫画もあるということで。

次は掘り出しもんをひとつ紹介。

影武者ジャイアンツ全3巻(新宮正春/作 梅本さちお/画 報知新聞社刊)

不滅の剛速球投手・沢村。太平洋戦争の最中、南の海に散ったはずの沢村が沖縄で記憶を失いながらも生きていた。

そして、その息子・嘉手納宗七は、親友?の飯村とともに武道から野球への道を歩みだし、巨人軍を影から支える名選手となっていく……。
 アニメ「巨人の星」でも沢村物語が紹介されましたが、その時の内容では、沖縄近海で戦没したのか不明確でした。

なお、発行は、1981年。舞台は、長島監督から藤田監督へ移り行く時代という設定になっています。

 

「ONE OUTS[ワンナウツ]」(甲斐谷忍/作 集英社刊)

沖縄出身のピッチャー渡久地東亜が、賭野球「ワンナウツ」から、プロへ転向して活躍する話。

ただし、普通の野球漫画ではなく、経営側との対決が中心という毛色のちがう話の展開がおもしろい。

人の心を読み、その心理をあやつる投球術が、心理戦という新しい地平線を開いたということになるかな。

アニメ化されてます。
隠れた名作かも……。

 

次は、NHKでアニメ放送されて人気だった「MAJOR(メジャー)」第55~56巻(満田拓也/作 小学館刊)

ワールドカップ日本代表を目指す主人公・茂野吾郎は、日本代表の合宿地・沖縄へ。

 球場は沖縄という設定(宜野湾かな?)ですが、どこでしょうか?

奥武山野球場だったらよかったのに……。

 将来、奥武山野球場にWBCの日本代表が集結すると、スゴイことになりそうな気がします。

 

 


これは、SFになるのか?

「スーパープロ野球軍団物語 愛星団徒」(松田一輝/作 集英社刊)

地球侵略をたくらむ宇宙人ネブラと野球で戦うという壮大な物語。

 沖縄との関係は、宇宙の平和をかけた戦いの舞台となる球場が、沖縄の孤島に作られていること。

 普通の野球漫画に満足できなくなった方にお勧めします。

この他にも「ストッパー毒島」や「AGAPES」とか、未確認情報もまだいくつかありますが、紹介はこのへんで終わりといたします。

<おまけ>
※ 「ドラベース~ドラえもん超野球外伝」第104話では、ドラえもんのチームと「西表マングローブス」が対戦しています。

※2017年6月修正追記

担当/量産工房

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