2-1-02

・第2回「まんがで読む沖縄戦(その1)」

6月23日は、慰霊の日です。

沖縄戦を扱ったマンガの代表といえば、地元沖縄漫画界の代表・新里堅進氏の「沖縄決戦」「水筒」などですが、それら以外にも本土出版社で様々な方が描いた沖縄戦のマンガが出版されています。

今回は知られざるそれらの作品を紹介してみたいと思います。

さて、最初に紹介するのは、最も古いもので、「ゲゲゲの鬼太郎」でお馴染みの水木しげる氏の「沖縄に散る」(「ああ特攻」宙出版刊・収録)

沖縄・首里市出身の戦闘機パイロットの兄とひめゆり部隊に入った妹が、戦場で再会するという奇跡的な話なのですが、当時(本作は、貸本漫画「暁の突入」(1958年)のリメイク作品)の沖縄戦に対する本土の方々の知識・理解というのがどのようなものであったかがわかります。

 

 

 

 

「摩文仁の白い雪」あおきてつお著(「赤い靴はいた」草土文化社刊・収録)

は、学校図書館や公共図書館でも児童図書としてそろえているところが多いので読んだ方も多いかと思います。

戦火で焼け野原となった白いさんご礁の大地を白い雪野原とイメージをダブらせるラストが印象的です。

 

 

 

 


「祖国への進軍」・三枝義浩/著(「戦争の記憶1」講談社刊・収録)

は、日系2世の米兵として沖縄戦に参加した比嘉武二郎氏の話を題材にしたもの。

戦火の中失われていく同じウチナーンチュの命を救おうと奮闘した比嘉氏の必死の思い、願いがひしひしと伝わってきます。

移民県沖縄の住民の置かれた状況を描いたすぐれた作品です。

 


「キジムナー」・かずはしとも/著(「いばら姫」ぶんか社刊・収録)

は、ホラー作品集のひとつとして収録されています。

負傷した米兵をキジムナーとしてかくまう姉妹の話。

ヒューマニズムがふみにじられる戦争の残酷さを子供の目線で伝える短編作品です。

 



「草の碑」・金子節子/著(秋田書店刊)

は、女性誌に掲載されたひめゆり部隊を題材にした作品。

作者は、「命どぅ宝」(秋田書店刊)でも沖縄戦を取り上げて作品化しています。

どちらも、平和に対する思いの強さが伝わってきます。

(ただし、女性誌用コミックなので子供向けでないことをお断りしておきます。)

 

 

 

 

「辻占売」第3巻(池田さとみ/著 ぶんか社刊・収録)第18話「出口」

は、高校受験に失敗した高校生が、辻占が告げた呪文で悲しい歴史の中で生きた子どもたちと出会うという不思議な話。

短編ですが、読み始めると思わず引き込まれる作品です。

恵まれた時代に生きる私たちの幸せを痛感させられます。

こんな沖縄戦の描き方もあるのかと感心してしまう傑作だと思います。

 

同じ作者の

「外科医東盛玲の所見」第5巻(池田さとみ/著 朝日ソノラマ刊・収録)第4話「ニライカナイ」

では、霊の姿を見ることのできる外科医・東盛玲が高校生の時、修学旅行先の沖縄で体験した不思議な話という形で、沖縄戦の悲劇を伝えています。

両作品とも、心霊現象という不思議話でくるんで、沖縄戦のテーマを扱っているので、戦争物は苦手という方には読みやすいかもしれません。


 

 「白旗の少年」・北川玲子/著

は、戦争に巻き込まれた母と幼い子供たちの生き様を描いた作品です。

(「戦火の中の子どもたち」ぶんか社刊・収録)

絵柄はかなりクセがありますが、悲惨な沖縄戦の戦場をこれでもか、これでもかと描ききっています。

 

 

 


「あの夏の日に」・いしかわまみ/著

は、架空の学徒看護隊に従事した少女のお話。

(「1945年 10代の戦争」・講談社刊・収録)

戦争の悲劇を少女マンガでくるんで、若い世代でもとっつきやすくした作品です。

 



「白旗の少女」・みやうち沙矢/漫画(講談社刊)

は、少女まんがではあるけれども、比嘉富子氏の原作実話を元にしただけあって、住民の目線で捉えた沖縄戦の悲惨さ、そして懸命に生き抜く人々の姿が描かれていて、とても感動的な作品です。

私のお薦めの作品のひとつです。

公共図書館にはぜひ常備してほしいコミック。




「さとうきび畑の村の戦争」谷口敬/画は、NHKの番組「その時歴史が動いた」のコミック化作品。

(「その時歴史が動いた 太平洋戦争編」ホーム社刊・収録)
「ざわわ~♪」ではじまる「さとうきび畑」の歌詞で締めくくられるラストは、マンガの読後感と歌詞が相乗効果で感動を盛り上げてくれます。

ちなみに舞台は西原町です。

 

「赤いランドセル」松家幸治/画(「心に残るとっておきの話 漫画版1」 徳間書店刊・収録)

 沖縄戦に従軍した兵士は、戦火の中、防空壕で出会った幼い女の子に水筒の水を与える。

その時、兵士は、軍国主義教育を受け戦争を始めてしまった大人としての罪の重さ、戦争の愚かしさに衝撃を受ける。

戦後、女の子の行方を捜すが……。

 18pのショート・ストーリーですが、本当にあったことのようです。

 

この他にも、古い作品で対馬丸の遭難を扱った「ああ七島灘に眠る友よ!」・木内千鶴子/画があり、入手はできませんが、作者のHPで公開されているようですので、内容はインターネットで確認してください。

その他の古い作品のうち、図書館、古本屋等で閲覧・入手可能なものは、下記リストの通りです。

<その他の沖縄戦を扱ったストーリー作品群(注・沖縄県内出版作品をのぞく)>

①「冥土からの招待」・中沢啓治/著 「オキナワ」汐文社刊・収録(公共図書館所蔵の可能性大)

②「うじ虫の歌」・中沢啓治/著 「オキナワ」汐文社刊・収録(公共図書館所蔵の可能性大)

③「炎のサンゴ礁」・鈴原研一郎/著 「また会う日まで」ほるぷ社刊・収録(絶版)

④「また会う日まで」・鈴原研一郎/著 「また会う日まで」ほるぷ社刊・収録(絶版)

⑤「地獄島」・旭丘光志/著 「ある惑星の悲劇」ほるぷ社刊・収録(絶版)
 ※慶良間の集団自決の悲劇を扱った作品です。

⑥「対馬丸沈没事件」・田丸ようすけ/著 「OKINAWA オキナワ 平和をつくる」第三文明社刊・収録(公共図書館所蔵の可能性大)

⑦「ひめゆりの最期」・大塚恵子[TOY]/著 「OKINAWA オキナワ 平和をつくる」第三文明社刊・収録(公共図書館所蔵の可能性大)

⑧「ああ沖縄!」・木内千鶴子/著 「別冊マーガレット1972年」集英社刊・収録(未単行本化作品)

⑨「ああ沖縄健児隊」・梅本さちお/著 「週刊少年マガジン 1968年」講談社刊・収録(未単行本化作品)

⑩「ひめゆりの少女たち」・近藤厚子/著 「まんがグリム童話 2007年」ぶんか社刊・収録(未単行本化作品・古本屋等で入手可能性大)

⑪「玉砕の島」・一川未宇/著 「月刊まんがグリム童話2007年」ぶんか社刊・収録(未単行本化作品・古本屋等で入手可能性大)
※慶良間の集団自決の悲劇を扱った作品です。

⑫「悲しみの島オキナワ」(吉森みきを/著)
  詳細よくわかりません。※りぼん1970年3/1号掲載

注)これらの作品は、描かれた時代背景や沖縄戦に関する認識の違いなど、いろいろと指摘される部分もあるかと思います。

(地上戦の始まった沖縄から病院船で脱出するなど、「えっ?」と首をかしげたくなる箇所もあります。)

しかし、共通して言えるのは、沖縄戦の悲劇を伝えたい、沖縄の平和に対する思いを伝えようという作者の熱い心ではないかと思います。
その意味でこれらの漫画家の皆さんには、大きなエールを贈るべきだと思っています。

注2)県出身の漫画家が描いた沖縄戦マンガで、本土大手出版社が刊行している左記の作品等もあります。




沖縄戦を扱った漫画は、テーマ故にどうしても重苦しくなりがちです。

そこで最後に、地元沖縄の漫画家の代表・新里堅進氏が、描いた

「防衛隊 儀間三郎の場合」(「ケンちゃん日記」 クリエイティブ21刊・収録)

を紹介します。

作者の創作短編ですが、過酷な沖縄戦の戦場は、日米双方で精神に異常をきたした兵士が数多く出たといわれていますので、ひょっとしたらこんなストーリーも実際あったのではと思わせてしまいます。

沖縄戦を生きぬいた?沖縄人の逞しさというか、ユーモアのセンスがにじみでる作品です。

一読をお薦めします。

 

 

※2010年以降刊行の新刊紹介等は、次の機会に。

2017年6月改定


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