2020年版

読んだマンガや小説、その他もろもろの中からおすすめのものを紹介します。新刊だけでなく、古本屋で買ったものもあるので、時々古い本が混じりますけど、いい本だと思ったら積極的に紹介していきたいと思ってます。

2020年のおすすめ本の紹介

★「社畜と少女の1800日」第11巻(板場広志/著 芳文社)

 最近、家出した女子高生と同棲するという話や漫画が多くなった。恵まれない境遇にも関わらず、懸命に生きてる心優しい、あるいは逞しくて生活力ある女子高生を善意で保護して一緒に暮らすというものだが、少し女子高生という存在を過大評価しすぎてないだろうか?

制服図鑑の影響?とも思えないし、年の差婚がブーム?というわけでもないだろうし……。なんなんだろうね。

それはさておき、このマンガ。大人向けの漫画雑誌に連載されてることもあって、現実にこんな状況になった場合のリスクをよりリアルに取り上げている。もちろん女子高生のヒロインはものすごく不幸な境遇で、第11巻ではついに唯一の肉親を失うという悲劇に直面する。それを保護して懸命に支える、お人よしの主人公の社畜成人男性。ふたりの関係はこれから、いったいどうなっていくのか、とても気になるところ。

1、2巻ではHシーンが少々多くて、ここで紹介するのもためらわれたのだが、他の類似作品と比較しても優れた作品という点では否定できないので、今回紹介することにした次第。とにかくヒロインが救われて幸せになることを願うばかり。でもタイトルからすると、もうすぐ別れがくるんだよなぁ。

量産工房/記

★「マンガ家先生と座敷わらし」第4巻 ぬっく/著 アース・スターエンターティメント/刊

 

7/10発売の完結巻。ハッピーエンドを期待していたので、その点では満足できた。

ただ完結していたとは知らなかった。もっとゆっくり続くものとばかり思っていたので、急速なラストの訪れは意外な感じがした。途中、漫画家先生の人見知りな性格に良い影響を与えて変えていくことが、座敷わらしのもたらした幸せという感じが描かれていたので、終わりが近いことを予感させる展開だったのだけど、もう少しじっくりとラストにつなげてほしかったという印象。

ただ、終わりはいいけど、後日談でもっと二人の関係を見ていたかった。もっと続きが見たい。これは切実。だって、初めての恋愛同志なんだから、その日常を見てみたいと思わない?周囲の反応もおもしろそうだし。でもダメかな~。

あ、そういえば、そんなマンガもあったなぁ。美鈴/記

★「沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる」第1巻(空えぐみ/著 新潮社)

タイトル通りの内容のラブコメ。通訳役の子が片思いっぽいところが、なんとも。方言の表記には多少違和感を持つ人もいるかもしれないけど、沖縄方言を学ぶ上からもお勧めしたい一冊。でも読んでて思ったのは、沖縄本島の方言だからまだいい。これが宮古方言になると、地元の人でも難解。もはや英語?に近くなるから、とんでもなくなったと思う。伝統文化継承のためにも、県内でも売れて欲しいコミック。お勧めしておくね。

で、このマンガ。地元の図書館だと、郷土資料になるのかな~?

美鈴/記

「その着せ替え人形は恋をする」第5巻(福田晉一/著 スクウェア・エニックス)

 コスプレまんがの第5巻。コスプレ衣装が毎回過激なのだけど、それにも増して主人公とヒロインの関係が気になるところ。

まあ、そのストーリーもおもしろいのだけど、注目すべきは、主人公たちのコスプレ以外の衣装がしっかりと設定されているところ。主人公たちの頭身は9頭身くらいあって、かなりスマートなのだけど、着ている衣装がとてもオシャレで魅力的。

コスプレをテーマにするだけのファッションセンスの良さを感じさせるので、それだけでも一見の価値はあると思う。

過激なコスプレも含めて、お勧めであげておくね。

美鈴/記

★「わたしの幸せな結婚」(顎木あくみ/著 富士見文庫)

 和風シンデレラストーリーというキャッチコピーとイラストに惹かれて購入したファンタジー小説。

虐げられ絶望の中で過ごしてきた主人公が、嫁入りを名目に追い出された先で幸せになるというものなのだけど、すんなりと読み始めていけて満足いく展開になっていくのがいい。新文芸かとも思ったのだけど、なんとファンタジー要素が入っているので、これは意外だった。

インターネットのCMなどを見ると、コミック化もされていて、かなり売れているよう。読んでハッピーになれるかも。

続編もあったので、今度買ってみたいと思ってるので、ここにお勧めとしてあげておくね。 

美鈴/記

 

★「にわか令嬢は王太子殿下の雇われ婚約者」1(香月航行/原作 アズマミドリ/著 一迅社刊)

女性が近づくことができないという特異体質の王太子。城で下働き中の主人公・困窮貴族の娘リネットは、偶然王太子と出会ったところで、その女性を遠ざける特異体質が発症しなかったことから、急遽、王太子の婚約者役として雇われることに。

まあ、簡単に言うと、困窮貴族の娘が大出世するシンデレラストーリーになるのだと思う。主人公の性格が困窮の中で鍛えられていて逞しい生活力とともに、親しみを感じさせるのがポイントかな?

ハッピーエンドを期待しつつ、次巻をまっているところ。(美鈴)

★「不死身の特攻兵」5(鴻上 尚史/原作 東 直輝/著 講談社刊)

 

実在した特攻機パイロットの実話のコミック化。

内容はいろんなところで紹介されているので省略。軍という組織の中で、特攻という同調圧力に懸命に抵抗し、奇跡の生還を果たし続けた男の物語。

主人公に特攻死を強要する軍トップ。天皇に報告した内容が違ってしまったので申し訳ないという軍首脳の考えの裏にあるのは、自己保身でしかない。結局のところ、組織の中でしか生きられない彼らは、すべてを上昇志向の道具としか見れない。兵士の命さえも。

そして、組織の歯車となって、考えることを止めた多くの若い命が特攻で散っていく。それに加担するマスコミは、当時の自身の罪を今も理解していないし、知らんぷり。その点からしても、戦争の裏側を描いたすばらしいコミックだと思う。

以前「めしあげ」というコミックを紹介したけど、森鴎外の犯した罪をパスした段階で評価はどん底に落ちた。日露戦争でのかっけによる数万にものぼる戦病死は、鴎外の責任だということを書けなかったのは、なぜなんだろうね? 当時の欧米の観戦武官は、旅順で病気でヨロヨロになって突撃する日本兵を、自暴自棄になって酒を飲んで酔っぱらって突撃していると報告したほどだというのに。知られざる裏側を描くことができた作品ほど素晴らしいものになるのだけど。

MEG

★「日本陸海軍の特殊攻撃機と飛行爆弾」(石黒竜介、タデウシュ・ヤヌシェヴスキ/著 大日本絵画 2011年刊)

メカニックドリーム1のおまけで日本陸海軍のミサイルを紹介したが、細かく資料を読み込むと、まだ明らかにされていないものがいくつか見つかった。

これらについては、終戦時に資料ともども破棄されて、関係者の証言以外に資料がなかったのだが、この本ではそれらの謎についても新資料を揃えてできるだけ取り上げるようにしていて、とても興味深い。値段は4千円を超えるが、それだけの価値はある一冊。

大戦末期の日本軍の兵器開発の実態を知る上でも、近年まれにみる貴重本。私は、本屋に発注して入手した。ミリタリーマニアにはおすすめの一冊。(MEG)

★「女子中・高生の制服攻略本」 クマノイ/著 KADOKAWA/刊

3月末刊行ということで、近場の本屋に入荷するのを待っていたのだけど、結局入荷せず。なので中心市街地の大型店舗まで買い出しに行ってようやく手にいれた。制服ファンのために、基本的な制服に関する細部解説をこれでもかという感じでオールカラーのイラストで詰め込んだ本。1980年代に登場して制服本の先駆けとなった「東京女子制服図鑑」以来の画期的な本だと思う。何がというと、個々の具体的な制服の解説ではなく、服飾面から用語や構造を詳しく紹介した本だから。この本があれば、ほぼ9割がた、全国の制服の特徴をつかんで解説することができるんじゃないかと思う。つまり、逆にこの本の情報で説明できない制服を見つけたら、ものすごくレアな制服だということになるんだよなぁ。だから、制服ファンにとってはすごいバイブルのような本だと思うので、お勧めしておく。

美鈴

「蒼洋の城塞」第5巻 横山信義/著 中央公論社/刊

4/25発行のパリパリの新刊。4巻まで読んだ感想を言うと、今回の主眼は人材、特に優秀な指揮官を失った米軍という設定でのIF戦記という感じ。それでも圧倒的な物量を持つ米軍に苦戦しつつも、今回は二線級の敵を相手にワンサイドゲームに近い大勝を実現するからたまらない。

わずか4時間で読み終えてしまったが、早くも次巻が待ち遠しい。だが、もうすぐ米軍に必殺の決定的兵器・VT信管が登場するはず。だからその前に決着をつけなければ、いくら機動部隊が充実してもものすごく苦しくなることは避けられない。それを思うと、次が気になって気になって。他のIF戦記読んでる方には、絶対こっちがおすすめ。(MEG)

★「美人画ボーダーレス弐」 芸術新聞社/監修 

 写実的な絵画の世界にも変革の時代がきていることを感じさせる作家たちを紹介している作品集。それぞれの作家へのインタビュー記事が載っているので、お気に入りの美人画の作家の創作の原点を知ることができてとても興味深い。美人画、美少女像についてのいろんな解釈と表現にふれることができるので、イラストレーターをめざす方なんかにはいろんな意味で勉強になるものだと思う。手元に置いて、時々眺めるだけでもいろんなインパクトを受けられるし、創作意欲がわいてくるんじゃないだろうか。

多彩な表現技法は、個性の現れというのを本当に感じさせる。

★「マンガ家先生と座敷わらし」第3巻 ぬっく/著 アース・スターエンターティメント/刊

 前に第1巻を紹介して、これは大ヒットすると思ったのだけど、いつの間にか3巻まで出てた。売れてるから続いているんだろうね。第2巻は本屋へ注文済だ。あとで届くのが楽しみ。まあ、それはさておき、第3巻。かなり話を続けるのが難しそうなのに、もう3巻まで進んでいる。互いに意思の疎通ができない状態で、3巻!すごいというよりも、むしろキャラクターの感情を絵で表現するというところで、この作品は大ホームランをかっとばしたと思う。座敷わらしちゃんの戸惑ったような気恥しさの入り混じった表情には、誰もがキュンとすると思う。たった1枚のモノクロの絵だけで、この第3巻の価値は天文学的なものになったと感じている。編集部は、作者によけいな介入をせず、良い作品になって終わらせられることを念頭に作品作りを進めて欲しい。

よい作品は、何度も繰り返して読みたくなるものなんだけど、この作品はまさにそう。たいしたイベントがあるわけでも、エッチシーンがあるわけでもないけど、吸い込まれてしまう。そんな作品で、次の4巻も期待したくなる傑作だと思う。

渚 美鈴/記

★「魔王様リトライ」第5巻 マンガ版と小説版をまとめて紹介

 あらすじは、アニメ化までされているので省略。勘違い系ファンタジーとして売り込みされているけれども、読んでてそれを笑いのように強調する理由というか、必要性はないと思う。魔王が現代人のセンスと感覚でファンタジー世界の世直しを強行していく話なんだから、そんな中で多くの善意あふれる者たちを巻き込んで邁進していく姿をどんどん書いていけばいいと思う。目的は別にあったとしても。

マンガ版がビジュアル面からはお勧めだけど、ストーリーを追い求めるなら小説版は外せない。読書にふけるにはいい作品だと思う。私は、マンガ版を読んでたんだけど、あまりにも続きが欲しくて、ノベル版原作を3巻から買い込んで読んでる。とっくに読んでしまったのだけど、今、外にも出られないご時世。がんばって続きを書いて出して欲しいと切に願っている。

★「ドイツ秘密兵器」広田厚司/著 潮書房光人新社 2018年刊

 メカニックドリーム1のおまけでドイツ軍のミサイルとかを紹介している。30年前の原稿に色付けして終わったけど、この間に新しい情報がいっぱい入ってきて、抜け落ちているのがいっぱいあった。それを放置してVOL2に進むわけにもいかないので、調べながら書き足しを始めた。そうすると、手持ちの資料だけでは足りなくなったので、いろいろと探し回ってこの本を購入した。この本の出版は2018年。当時から知っていたのだけど、内容の9割は手持ち資料と重複するので購入を見送っていたという本ではある。

 不足していたミサイルや爆弾、魚雷等に関する情報資料としては十分なものがあったと思う。だからメカニックドリームで興味を持った方にはお勧め。

MEG/記