あたしにできることは、出来るだけ、ゼルガディスとアメリアを二人っきりにすること。









Please tell me a ....










「さぁガウリイっ! 思いっきり食べるわよ―――ッ!」
「おうっ!」

 制限時間は一時間。この時間内なら幾らでも食べられる。
 つまり、喰い放題。
――これで思いっきり食べない奴はいまい!

 あたし達はタダ題券を店員に渡し、あたしとガウリイ、アメリアとゼルガディスという風に別れてテーブルに座る。
 別に、これはアメリアとゼルを二人っきりにしよう、という訳ではない。
 余計なのがいるとテーブルに食事が一杯載せられないのだ。
 事情を察した(いや、いつものことなんだけどさ)アメリアとゼルガディスが、

「……………あの二人がいると、俺達の食べるものが無くなる気がするのは、俺だけか」
「…………………気のせいじゃないと思います………」

 とかなんとか言っているけど、そんなのは無視。あんたらはあんたらで仲良くやってなさいっての。

 このお店はバイキング形式になっていて、自由に選ぶことができる。
 種類も豊富で、選び甲斐食べ甲斐有り。
 前にも何回か来たことはあったのだが、そのときは有料。しかし、今回は無料。

 あたしとガウリイは二人、皿を持って戦場へ――もとい、食べるものを取りに向かった。




「っあ――、食べた食べたっ♪ おーいしかったぁ〜っ♪」
「そうだなぁ♪」
「良く食べたわねー…いつものことだけど……」
「まったくだ……」

 ガーっとドアが自動的に開き、あたし達は店の外に出た。
 辺りはもう既に暗い。夜がきていた。
 後ろを振り返ると、あたしと同じく満足そうにお腹を支えたガウリイと、仲良さそうに並ぶゼルガディスとアメリア。
 どうやら、それなりに進展したらしい。
 最後の仕上げは、っと……
「ゼル!」
「…なんだ」
 唐突に、びしっとゼルガディスを指差す。そして、
「あんた、アメリアを送っていきなさい」

 にっこりと微笑みながら言い放った。





「……オレ、何だか判った気がした」
「何が?」

 夜の町。
 ガウリイと二人、バス停に向かい歩いている途中、不意にガウリイが呟いた。

「アメリアだけじゃなくて、ゼルも誘った理由」
「ああ、それね。良く判ったわね」
「まぁな」

 そして、沈黙。
 何の言葉も発せず、もくもくと駅への道を行く。


 ……恋、か。
 胸中で呟き、溜め息をつく。

 恋。
 それは今まで、あたしには全く縁の無いものだった。
 ……まぁ、小学校の頃とかに、仲介役を頼まれて駄目にしたことならいっぱいあったけど……
 あのアメリアが、ねぇ。
 しかも、相手がゼルガディスで。

 脳裏に、隣のテーブルで向かい合って座る、二人の姿が蘇える。
 ゼルが無口の分、アメリアが頑張って喋っていた。
 ゼルにしては珍しく、楽しそうにしていたように思う。もしかしたら、脈有りかもしれない。

「……あと、もうひとつ。判った気がする」
「………何が?」
「今日最初に会ったとき、リナの様子が変だった理由」

 斜め後ろを振り向く。
 淡く微笑んだガウリイがそこにいた。
 ……まるで、何もかもを彼に見透かされているようで、ぞくりと背筋が粟立った。

「だから、何でもないってば」

 慌ててそう言うと、ガウリイが苦笑した。そして、優しい瞳であたしを見る。

「いーや。アメリア、だろ?」
「…ちが――」
「アメリアが、恋をしたから」

 ガウリイが、立ち止まる。つられてあたしも立ち止まった。
 ……優しい視線が痛い。

「だからお前さんは、戸惑ってる」

 ……ああ、もう。なんでかな。
 何で、あんたには判っちゃうのよ。

「………当たり、だろ?」
「……悪かったわね」
「そう拗ねるなって」

 プイと横を向くと、再び苦笑していつものように頭を撫でてくる。
 いつもなら髪が痛む、とか、子ども扱いするな、とか言って怒るところなんだけど。
 何故だか今日は、怒る気にならない。

「…行こう」

 道の真ん中で立ち止まっていたので、他の人の通行の邪魔になっていたことに気づいて、あたし達は再び歩き始めた。
 隣に並んで。
 あたしよりコンパスの長いガウリイは、こういうときはいつもあたしに合わせてくれている。

「…リナは、恋をしたことがあるか?」
「…………ないわよ、そんなの」
「そうか」

 睨みながらそう言うと、ガウリイは心なしかホッとした表情で息をつく。…なんだろう?
 視線で訊ねてみたけれど、ガウリイは曖昧に笑っただけだった。
 …何なのよ。
 あたしは首をかしげた。

 やがて、バス停が見えてきた。
 もうすっかりあたりは暗い。それもそのはず、時計を見ると既に八時を過ぎていた。
 …アメリアとゼルは、今頃どのあたりを歩いてるのかしら。
 後ろを肩越しに振り返る。当然反対方向に歩いていった二人の姿はもうない。
 アメリアの協力をしたあたしとしては、気になるんだけどな。

 バス停に着き、バスが来る時間を確かめる。あと2分でバスが来る。
 不意に、ガウリイの手があたしの頭の上に置かれた。
 そしてそのまま、くしゃりと撫でる。

「……きっと、リナは、さ」
「………」

 無言で視線を向けて、あたしは続きを促す。

「アメリアに置いていかれたみたいで、寂しいんだ」
「…………そうなのかしら」

 良く判らない。
 判らないけど、なにかもやもやしている。
 アメリアを、二人を、見ていると。

「……知らないわよ、恋なんて」

 あたりがいちだんと照らされて、バスが来る。
 見上げたガウリイの表情は、いつになくかたい。

「…………恋、してみたらどうだ?」
「え?」

 バスが止まって、

「オレが教えてやるよ」

 扉が開いた。

「………え………?」

 何、今。
 何て、言った?

「ほら、リナ。バス乗ろうぜ」
「え。あ……う、うん。って、そうじゃなくて、ガ、ガウリイ?」

 一段階段を上ったガウリイが、にっと笑った。

「いっとくが、オレは本気だからな」

 言って、あたしを置いてさっさと行ってしまう。

 あたしは、というと。

「うぇえぇぇえっ!?」



 ――――――――――――――― Please tell me a romance !























とがきという名の

えーっと、高校生リナ大学生ガウリイシリーズ(シリーズだったんだ)の馴れ初め編です。
なんかいいシリーズ名ないでしょうかね(笑)
この設定の話のときは、だいたいタイトルが英語です。というか、英文?
訳はページタイトルのとおり「恋をおしえて」です。ええ。すみません、タイトルパクりです(死)

なんかやたらと長くなってしまいました。
説明的な文章が多かったからでしょうか……おかしい。なんでだろ??

作中にでてきた食べ放題のお店。
未森が誕生日に友人達と部活終了お疲れ様会に行った店がモデルです(笑)
お店の描写とかはあんまりしてないんですが、そのお店のような感じで書きました。

にしても、一ヶ月くらいかけて書いていたような。
………書き始めたのって、いつだっけ?(爆)

2003.6.28



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