あたしにできることは、出来るだけ、ゼルガディスとアメリアを二人っきりにすること。 |
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Please tell me a .... 3 |
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「さぁガウリイっ! 思いっきり食べるわよ―――ッ!」 「おうっ!」 制限時間は一時間。この時間内なら幾らでも食べられる。 つまり、喰い放題。 ――これで思いっきり食べない奴はいまい! あたし達はタダ題券を店員に渡し、あたしとガウリイ、アメリアとゼルガディスという風に別れてテーブルに座る。 別に、これはアメリアとゼルを二人っきりにしよう、という訳ではない。 余計なのがいるとテーブルに食事が一杯載せられないのだ。 事情を察した(いや、いつものことなんだけどさ)アメリアとゼルガディスが、 「……………あの二人がいると、俺達の食べるものが無くなる気がするのは、俺だけか」 「…………………気のせいじゃないと思います………」 とかなんとか言っているけど、そんなのは無視。あんたらはあんたらで仲良くやってなさいっての。 このお店はバイキング形式になっていて、自由に選ぶことができる。 種類も豊富で、選び甲斐食べ甲斐有り。 前にも何回か来たことはあったのだが、そのときは有料。しかし、今回は無料。 あたしとガウリイは二人、皿を持って戦場へ――もとい、食べるものを取りに向かった。 「っあ――、食べた食べたっ♪ おーいしかったぁ〜っ♪」 「そうだなぁ♪」 「良く食べたわねー…いつものことだけど……」 「まったくだ……」 ガーっとドアが自動的に開き、あたし達は店の外に出た。 辺りはもう既に暗い。夜がきていた。 後ろを振り返ると、あたしと同じく満足そうにお腹を支えたガウリイと、仲良さそうに並ぶゼルガディスとアメリア。 どうやら、それなりに進展したらしい。 最後の仕上げは、っと…… 「ゼル!」 「…なんだ」 唐突に、びしっとゼルガディスを指差す。そして、 「あんた、アメリアを送っていきなさい」 にっこりと微笑みながら言い放った。 「……オレ、何だか判った気がした」 「何が?」 夜の町。 ガウリイと二人、バス停に向かい歩いている途中、不意にガウリイが呟いた。 「アメリアだけじゃなくて、ゼルも誘った理由」 「ああ、それね。良く判ったわね」 「まぁな」 そして、沈黙。 何の言葉も発せず、もくもくと駅への道を行く。 ……恋、か。 胸中で呟き、溜め息をつく。 恋。 それは今まで、あたしには全く縁の無いものだった。 ……まぁ、小学校の頃とかに、仲介役を頼まれて駄目にしたことならいっぱいあったけど…… あのアメリアが、ねぇ。 しかも、相手がゼルガディスで。 脳裏に、隣のテーブルで向かい合って座る、二人の姿が蘇える。 ゼルが無口の分、アメリアが頑張って喋っていた。 ゼルにしては珍しく、楽しそうにしていたように思う。もしかしたら、脈有りかもしれない。 「……あと、もうひとつ。判った気がする」 「………何が?」 「今日最初に会ったとき、リナの様子が変だった理由」 斜め後ろを振り向く。 淡く微笑んだガウリイがそこにいた。 ……まるで、何もかもを彼に見透かされているようで、ぞくりと背筋が粟立った。 「だから、何でもないってば」 慌ててそう言うと、ガウリイが苦笑した。そして、優しい瞳であたしを見る。 「いーや。アメリア、だろ?」 「…ちが――」 「アメリアが、恋をしたから」 ガウリイが、立ち止まる。つられてあたしも立ち止まった。 ……優しい視線が痛い。 「だからお前さんは、戸惑ってる」 ……ああ、もう。なんでかな。 何で、あんたには判っちゃうのよ。 「………当たり、だろ?」 「……悪かったわね」 「そう拗ねるなって」 プイと横を向くと、再び苦笑していつものように頭を撫でてくる。 いつもなら髪が痛む、とか、子ども扱いするな、とか言って怒るところなんだけど。 何故だか今日は、怒る気にならない。 「…行こう」 道の真ん中で立ち止まっていたので、他の人の通行の邪魔になっていたことに気づいて、あたし達は再び歩き始めた。 隣に並んで。 あたしよりコンパスの長いガウリイは、こういうときはいつもあたしに合わせてくれている。 「…リナは、恋をしたことがあるか?」 「…………ないわよ、そんなの」 「そうか」 睨みながらそう言うと、ガウリイは心なしかホッとした表情で息をつく。…なんだろう? 視線で訊ねてみたけれど、ガウリイは曖昧に笑っただけだった。 …何なのよ。 あたしは首をかしげた。 やがて、バス停が見えてきた。 もうすっかりあたりは暗い。それもそのはず、時計を見ると既に八時を過ぎていた。 …アメリアとゼルは、今頃どのあたりを歩いてるのかしら。 後ろを肩越しに振り返る。当然反対方向に歩いていった二人の姿はもうない。 アメリアの協力をしたあたしとしては、気になるんだけどな。 バス停に着き、バスが来る時間を確かめる。あと2分でバスが来る。 不意に、ガウリイの手があたしの頭の上に置かれた。 そしてそのまま、くしゃりと撫でる。 「……きっと、リナは、さ」 「………」 無言で視線を向けて、あたしは続きを促す。 「アメリアに置いていかれたみたいで、寂しいんだ」 「…………そうなのかしら」 良く判らない。 判らないけど、なにかもやもやしている。 アメリアを、二人を、見ていると。 「……知らないわよ、恋なんて」 あたりがいちだんと照らされて、バスが来る。 見上げたガウリイの表情は、いつになくかたい。 「…………恋、してみたらどうだ?」 「え?」 バスが止まって、 「オレが教えてやるよ」 扉が開いた。 「………え………?」 何、今。 何て、言った? 「ほら、リナ。バス乗ろうぜ」 「え。あ……う、うん。って、そうじゃなくて、ガ、ガウリイ?」 一段階段を上ったガウリイが、にっと笑った。 「いっとくが、オレは本気だからな」 言って、あたしを置いてさっさと行ってしまう。 あたしは、というと。 「うぇえぇぇえっ!?」 ――――――――――――――― Please tell me a romance ! |
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