めまい

 
 
めまいは

その背後に様々な原因が想定され

いわゆる良性の軽微なものから 見逃せば致死となるものまで

幅の広い警戒すべきものである。


整体もめまいを対象とするが

整体の対象としない めまいもあるので その仕訳を明快にしないといけない。

回転するようなめまい

気の遠くなるようなめまい

ふらふらするふらつき感

頭痛をともなうもの

ろれつも同時に回らない

しびれがでるめまい

何度も繰り返す突然くるめまい

耳鳴り・難聴・耳の閉そく感が同時に起こる

等々・・


めまいの原因がどこにあるのかを まず見極めることが

もっとも大切なこととなる。

めまいの原因のありかを大別すると 大きく次の様に分けられる

 1  脳の中
 2  耳の中
   首の中
 4  血液の不安定
 5  内分泌・代謝異常
 6  心因性・精神疾患

1の脳の中の場合、

脳の血管障害、脳梗塞、脳腫瘍、が代表的なものである。

この場合 整体は対象としない。

2の耳の中の場合

耳の内耳にある三半規管の異常、内耳リンパのかく乱、が代表的。

3の首の中の場合

首の筋肉群 斜角筋などによる椎骨動脈の圧迫。

4の血液の不安定の場合

低血圧症、高血圧症、貧血がめまいの原因となる事がある。

5の内分泌・代謝異常の場合

糖尿病、脂質異常、メニエール病、女性ホルモン異常 等が代表的。

6の心因性・精神疾患の場合

ストレス、恐怖、うつ病、不安障害 等からくる。

このうち 整体の対象となるのは

2、3、4、5、6、 となる。

まず

2の耳の中に原因がある場合


めまいの中でも 圧倒的に多い原因である。

すでに めまいで苦しんで来た人は

耳鼻科の診断を受けたことがあるのはほとんどで

そこで芳しくないので 整体へというコースが多い。

この場合 次のような状態に分類される;

 良性発作性頭位めまい症
 メニエール病
 前庭神経炎

  良性発作性頭位めまい症

これは

頭の位置を変化させた時に 生じる奇妙な感覚のめまいであり

その特徴は

時間とともに めまいは減ってくることにある。

西洋医学による説によると 原因は

内耳の三半規管内に耳石が侵入・浮遊し

三半規管内に満たされているリンパ内に

かく乱をもたらす、すると三半規管内のセンサーが

誤作動を起こし

間違った情報を脳に送る。

それが めまい となる。

つまり 耳石がリンパをみだし めまいとなる。

当然 頭の動きで侵入・浮遊する耳石も動くので

頭の位置を変化で めまいが出やすいことになる。

という機序が 西洋医学の定説。


では なぜ耳石が浮遊・沈着する様になるのか?


その前に そもそも耳石とは何なのか?

それは炭酸カルシュウムの結晶で平衡を感知する砂の様な物体。

これが内耳の蝸牛と三半規管の間にある耳石器にある。

その耳石器にある耳石が

三半規管の中に侵入し浮遊しだすというメカニズム。

 



耳石器の位置 






白いのが耳石で
数万個ある。
黄色が土台。
人の動きに合わせ
耳石も移動する。




耳石器から
耳石がこぼれ
緑色の三半規管の中に
侵入する。




では 一体 なぜ耳石が耳石器から飛び出してしまうのか?

私の説は こうである;

西洋医学では 

侵入した耳石がリンパをかく乱するとしているが

私は

先にリンパのかく乱・異常が発生し

その刺激と振動により

耳石が耳石器から三半規管に侵入してしまうという説である。

つまり まずリンパのかく乱・異常が先にある。

なぜ こうした説を提示するかというと

この良性発作性頭位めまい症の患者のほとんどが

耳以外の身体にリンパの動きが悪い症状が

出ているからで

身体全体のリンパの動きの中で

耳もその影響を受け 内耳の中のリンパが全体のかく乱を呈し

その刺激と振動で耳石器から耳石がこぼれてしまう

という機序が想定されるのである。

最初にあるのは リンパの異常である。

めまいのある人は 耳の内耳のリンパのみが悪いのではなく

耳以外の全身性のリンパの動きも悪化しているのである。

その悪化が 耳に強く出た場合 めまいを引き起こしやすい

といえる。

したががって

この良性発作性頭位めまい症の整体は

全身のリンパの状態を視野に入れての施術となる。

もちろん 耳を中心として

頭部〜頸部〜肩のリンパの流れを良好にすると

その効果がいちじるしい。

また

良性発作性頭位めまい症の患者のほとんどは

なべて頭部〜頸部〜肩の強い筋肉硬直を伴うことで

リンパの異常・かく乱が

頭部〜頸部〜肩の筋肉硬直によって引き起こされている

という見方もできる。

西洋医学における

良性発作性頭位めまい症の治療の代表的なものは

Epley法といい 頭部の回転や回旋を行い

耳石の位置を修正するやり方を採用するが

私の見解をいえば

このEpley法の核心は 耳石を動かしているのではなく

実は 内耳のリンパのかく乱をおだやかにして

耳石の動きを止めているのが実情といえる。

それは なぜかというと

古来より整体の施術において

良性発作性頭位めまい症の対応は

頭部と頸部を回転回旋、屈曲伸展させ

内耳のリンパの動きを狙っておこなうものであり

その効果は絶大であるからである。

 メニエール病

メニエール病は 比較的診断がつきやすいので

私はメニエール病です という人は多い。

活発に活動している人が

突然 めまい・難聴・耳鳴り・耳詰まり

におそわれことが くりかえされる。

原因は 内耳の内リンパの膨張と確定されている。

なぜ内耳の内リンパが腫れるのかは

定説はなく 諸説がある。

内耳を構成する 三半規管と蝸牛 かぎゅう には

リンパ液でみたされ それも内リンパと外リンパの2つに分かれている。

下図で Aが正常、Bがメニエール病の状態。

青が外リンパ、黄が内リンパである。

Bが内リンパが膨張していることが分かる。

この状態を内耳の内リンパ水腫という。



整体では

内耳が内リンパ水腫にこうむることは

全身のリンパ・体液の流通に同様の問題があり

それが 内耳に先鋭的に表れているとみなす。

したがって

メニエール病の整体は

全身的リンパ水腫の施術を基本とし

リンパドレナージュ、血行改善、腎臓機能強化

を行う。

もちろん 内耳のリンパに向かってより効果のある様に

頸部〜頭部にかけての部位をより入念にする。


注目すべきは 内耳の総体的な血流量で

内耳に集まる血流量は かなり少なく

わずかな刺激で 反応が速いことを意味する。

また 内耳への動脈は小脳動脈から分かれたものであり

外耳・中耳は頸動脈から分かれたものであり

この意味で 内耳血流は 脳血流系といってよく

頭部への刺激は内耳の血行に大きく影響される。


メニエール病は 大きな視点でとらえれば

体液つまり水の流れの停滞・鬱積で発症するものであり

緑内障、むくみ、冷え、腎臓疾患、膀胱疾患

等と同類とみなす。

こうした意味で メニエール病は

全身疾患の見地から治療方針を決定すべきである。

  前庭神経炎

突然の激しい回転するめまいに見舞われ

吐き気 嘔吐 もある場合

この前庭神経炎を疑う。

内耳から脳に向かう前庭神経の炎症である。

これは 神経路の炎症であるため

ウイルス感染 或いは 血行障害の

原因との説が濃厚である。

整体の対象であり

何よりも 神経の慰撫を行う。





3の首の中に原因がある場合

 
首に原因があるめまいは 頸性めまいとも呼ばれる。

具体的には

斜角筋の硬直により椎骨動脈が圧迫され めまいを誘発、

いわゆる頚椎症で 頸椎の骨格が変性され動脈圧迫で

めまいが誘い出される 等。

これらの場合は 首を施術の対象とすることで

硬直筋肉群の緩解

頚椎症の改善

頸椎の骨格変性の矯正

により めまいを軽減する。

すべて

整体の対象となるのである。

4の血液の不安定に原因がある場合


よくあるのが 起立性低血圧といい

立ち上がる時に めまいをおこす症状である

その原因は ほぼ分かっている

つまり 自律神経の不調で血圧障害となり

これが 立ち上がって数分以内に

めまいを引き起こす。

朝の起床時や 椅子から立ち上がる時

クラクラ来る。

この場合

まず自律神経失調の治療をする整体からおこなう。


高血圧による めまいは少ない。

 

 5の内分泌・代謝異常の場合

 
めまいは

内分泌・代謝機能の疾患が原因でもおこる。

その発症にいたるメカニズムはまだ解明度は鈍いが

めまいの特性を多面的に追及する意味において

こうした角度からの可能性は めまいの対処に

奥行きを与える。


糖尿病に代表される糖の代謝異常では

頻度の高いめまいの例が多い。

これは 耳の内耳が糖の代謝と密接な関係があることに由来する。

内耳の内リンパの中には インシュリンの受容をうけ

蝸牛血管には グルコースのトランスポーターが存在し

前庭は血糖値とインシュリンの小さな変動にも敏感に反応する。

こうしたことから 糖の代謝異常が内耳を刺激し

めまいを誘発する。


また 女性の生理期における ホルモンバランスの変化により

内耳のリンパに貯留がおこり

めまいを引き起こすことがある。


血清中のナトリウム及びカルシウム及びカリウム濃度の異常で

めまいを引き起こすこともある。

これは特に高齢者に多く

不安定な電解質異常といわれる。




6の心因性・精神疾患の場合

 
心因性・精神疾患による めまいは

その発症のメカニズムと対処は 複雑性を帯びるため

患者との数回のやりとりがないと 時に いきずまることがある。


一つの例として 以下の様なストーリーが考えられる。

強い心因性のストレスが

間脳の視床を経由し 扁桃体に伝達されると

不安や恐怖が生み出され

それが

脈拍、副腎ホルモン分泌に影響を与え 自律神経の乱調を呼び

めまいを生み出す。

そのめまいが さらに不安と恐怖となり 新たなストレスとなり

さらに視床を刺激して・・ という悪循環を生む。

こうした心の葛藤が 難治性のめまいとなる。

また

うつ病からめまいが誘発されることがある。

うつ病は 身体の不定愁訴がでやすく

倦怠感、疲労感、肩こり、頭痛、

などから めまいがおこることがある。

さらに

パニック障害、不安障害 から

めまいが発症することがある。

いずれも 整体がカバーする症状である。

こうしたケースでは

めまい そのものというより

それを引き起こす身体的体質を改善することに注力する。

つまり

不安症、恐怖症、自律神経失調症、易疲労感、

全身倦怠感、慢性蓄積疲労、

を軽減させることで めまいを治療することが主となる。


以上のように めまいの原因は多岐にわたり

その原因の特定が まず重要なこととなる。

めまいの整体施術の決定は めまいの原因によっておこなわれる。

また めまいは 原因の追究が困難の場合も多々あるので 一筋縄ではいかない。