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肩のすべて | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
いわゆる肩こりは、 そのむかしは トントントントンと肩たたきをしたものである。 今では 肩たたきは、刹那的に気持ちよさはあっても ただたたくだけでは、いちじしのぎの手当であり たたくだけで 深い満足を期待する人はきわめて少ない。 ただし実は肩たたきとは ある意味 からだをからだで治す治療の起源といってもよく いわば 代替医療の本質的な原初といえるのであって、 そうした意味から 肩たたきを あなどれなく、 子供や孫が こころをこめてトントントントンと 肩たたきする姿は その愛情が 治癒をもたらす牧歌的構図となっている。 肩こりに悩まされる人は 時代が変わっても依然減ることはなく むしろ 多くの理由によって ますます肩こりは広がっており 今までは考えられなかった 幼い若年層にまでこれを訴えるケースが蔓延する。 このため 肩こりへの手技治療療法は 独自な展開をみせ 多様なやり方で花開いているのが現在である。。 ただし 肩こり 或いは 肩痛 といっても多様で 単に筋肉性の軽度の硬直しているものだけの症状から 肩が動かず、激しい痛みがおさまらない深刻なものまで 軽重の振幅はかなり広く 疾患そのものは 非常にありふれたものではあるが 慢性化したり 重篤なものは いちじるしく生活の質を悪化させる。 さらに肩そのものの構造が複雑であり よって肩の障害の原因も複雑系であることも多く 的確な見立てと適切な処方がほどこされないと根治できないことも多いのである。 たとえば いわゆる肩こりは はじまりは 軽微な不快であっても それを放置すると しだいに背中痛、頭痛、腕のしびれ などを引き起こし ついには 肩、腕が上がらず 手が使えなくなるという事態に発展することも多く また 睡眠障害や精神の不安定などへの発症の経緯をたどることもあり いわゆる肩こりといえども あなどれない。 また 肩関節そのものは 複雑な構造であり いわゆる肩こり の領域からさらに悪化し 肩の関節の中の障害が起こると 難治性の高い 完治に時間がかかることもあり いったんは治ったとしても 絶えず違和感が残留し 思いっきり肩を回せないという あなどれない後遺症が起こることもあり こうなると 日常的な動きの制約を一生受けることになる。 そこで ここでは 肩の痛みと不調のすべてを網羅し 肩のメカニズムから治療法のすべてを解説するのが本稿である。 以降 肩の痛みと不調のすべてを 大きく2つの分野に分けてその視点から説明する。 2つの分野とは ひとつは いわゆる肩こり、 今一つは 肩関節の障害である。 この2つの分野の視点に分けることで より肩の実体がわかりやすくなると思う。 どう違うかというと 簡単にいえば、 いわゆる肩こりは、 骨格筋の筋肉の問題であり、 肩関節の障害は、 肩の関節の内外の一帯のエリアに障害がある。 それに違いがあるのである。 もちろん この2つの分野にまたがって複合的に症状が出ていることは多く、 とくに 肩関節の障害がある場合は 同時に そのほとんどが肩関節の周囲の筋肉にも問題があることが多く この肩関節も筋肉群も ともに治療の対象となるのである。 たとえば 以下のような症状は すべて 肩関節の障害、に加えて 同時に 肩関節を取り巻く筋肉群も問題があることがほとんどである。
こうした 肩における障害を2つの分野に分けての さらなる説明は 本稿の後半の
の中で詳述する。
肩は、 ヒトとして腕の自由な動きを充分に確保するために 非常に複雑な構造になっている。 その肩の構造の複雑 動きの柔軟性がある反面、 肩のまわりの組織にかかかる負担に対しては 脆弱な性格となってしまい 肩の障害が出やすい要因となっている。 つまり 腕の自由で繊細な動きの代償として ヒトの肩のもろさになる という 宿命をもつことになったのである。 このため 一つの組織が傷むと 連鎖的に他の組織に 次々と波及敵に影響を及ぼすという 肩の特性を生む。 だから 肩が痛い、腕が痛い、という訴えに対して その原因と損傷を受けている箇所が随所にあるということが 肩の疾患の実体となっていることが多い。 また 肩の疾患は 肩以外にも周囲の器官に対し多重の痛みを発症させることも多く ただに 肩だけの視点でなく その周囲の広域な構造と状態を含めて 治癒が必要なことも多い。 たとえば 首痛、頭痛、背中痛、腕痛、・・ などなど 肩痛と関連する痛みやしびれは 多彩に表れる。 肩関節は まず重力に対して骨格の支持がないというのが大きな特徴で 非常に小さな肩甲骨関節窩に対して上腕骨頭がぶら下がった非荷重関節である。 つまり、骨性支持機構も少なく、荷重による安定性も少ないのが肩関節の特徴。 このため 骨性の支持がないため 何で支えられているかというと 腱板などの靭帯組織と筋肉群が それをになうため 必然的に これらの腱板などの靭帯組織と他の筋肉群の損傷が多くなる宿命を持つ。 肩関節を タイプ的には 、軟部組織で安定性と可動性をもっているボールアンドソケット関節。 膝や肘関節に代表されるヒンジ関節の様に、 骨性支持機構で安定化している単純な構造ではない。 以下の図で 肩関節と股関節の違いを見てほしい。 上の図は 肩関節と股関節の臼蓋の比較である。 同じボールアンドソケット関節の中でも、股関節のように、 比較的大きな臼蓋に対して大腿骨頭が荷重関節を形成しているのではない。 このように 肩関節は 臼は非常に浅い構造で 互いを結ぶ靭帯もわずかで 関節包でかろうじてくっついていると言ってもよい。 このため 肩がぬけると表現する肩脱臼が起こりやすい訳で その由来も 肩関節の臼蓋の食い込みの浅さからきている。 また 肩関節は ほぼ肩甲骨の存在を基盤にして動いているので 肩という場合 肩関節と肩甲骨の連関動態でとらえることが必要である。 肩甲骨は、胸郭に対しては筋肉での連結しかもたず、 体幹に対しても肩鎖関節を通じて鎖骨を介した骨性連結しかもっていない。 このため 肩甲骨は胸鎖関節を支点として浮いている状態であり それゆえに 肩甲骨の可動域は骨盤に比べれば ひどく大きいのが特徴である。
肩の骨の構造 肩関節は 鎖骨、肩甲骨、上腕骨の3つの骨で構成される。 この3つの肩関節が 鎖骨によって躯体の胸骨と連結してしている。 下図をみればわかるが つまり 肩関節の3つの骨は 鎖骨と胸骨の連結以外は 骨性の支持がなく 全く浮いているのである。 では どのように位置が固定されているかというと 骨格筋と靭帯と腱で これを支えている。 この構造こそが 肩関節の酷使で障害を生みやすい原因となっている。
肩甲骨は三角形の複雑な形をしている。 特に 肩甲骨のなかの部位では、 上腕骨頭と連結される関節窩, 突起物である肩峰, カギ型に突出した烏口突起, の3つは独特な形状をして 肩甲骨の動きを特徴づけている。 烏口突起は 肩甲骨にある骨突起であり その形状が独特なカギ型をしている。 このカギ型となっている理由は ここに他の靭帯と筋肉が付着しやすいように この様な形状になっている。 ここには 下図にあるように 3つに靭帯と 3つの筋肉が付着する。 烏口肩峰靭帯、菱形靭帯、円錐靭帯。 上腕二頭筋短頭、烏口腕筋、小胸筋。
鎖骨は ヒトを正面から見た場合 その本人が太っていなければ ほぼ明確に目視できる骨格である。 このため 鎖骨の形状は 正面から見ると 横一文字であるが これを 上方から見ると S字型のクランク形状となっている。 下図を参考にしてほしい。 このクランク形状が 鎖骨の大きな役割のひとつになっている。 クランクとは そもそも 直線運動を回転運動に変換するコネクターで クランクは 自転車のペダル、エンジン内部などの機械の中心構造として使われる。 このクランク作用が 鎖骨の動きの特徴を表している。 それを説明すると、 上肢の挙上動作の場合、 まず烏口突起と鎖骨の距離が開いて ここを盾につないでいる円錐靭帯の緊張が始まる。 この時 円錐靭帯の緊張で 鎖骨が引っ張られるが その時鎖骨がクランク状であるため 索引が直線運動の挙上ではなく 回転運動の後方運動に変換される。 この運動変換により 上肢挙上が関節の大きな負担なく行われる。
肩関節で 上腕骨と肩甲骨は また 腕を挙上するに際しては 上腕骨頭は滑りつつ回転するような動きで 下図の様に 角度を微妙に変えながら挙上できる。 上腕骨をさらに 腕をねじり つまり 回旋しながら挙上できて ボールを投げる様な回旋しつつ 振り下ろすことができる。
肩まわりの筋肉群をよりよく理解するために 胸部の筋肉の視点で筋肉群をみてみると以下の様になる。 右側が 表層筋 左側が 深層筋
肩の障害を 大きく2つに分けると ひとつは いわゆる肩こり、今一つは 肩関節の障害であることは すでに述べた訳で、ここでは それをさらに詳述して いわゆる肩こりから肩関節の障害までの 肩の障害の代表的なものを解説する。 肩の障害を かように2つの分野に分ける図解は以下、
肩の障害を訴える患者に対して、 その障害が まず上記のいずれに属するのかを判断するのが初歩的な診断である。 いわゆる肩こり なのか 肩関節の障害 なのか である。 このうち 肩関節の障害 の病名が明確なものを逐次 説明しよう。 もちろん すべてが 整体の対象となる。
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