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肩のすべて


いわゆる肩こりは、

そのむかしは トントントントンと肩たたきをしたものである。



今では 肩たたきは、刹那的に気持ちよさはあっても

ただたたくだけでは、いちじしのぎの手当であり

たたくだけで 深い満足を期待する人はきわめて少ない。

ただし実は肩たたきとは ある意味 

からだをからだで治す治療の起源といってもよく

いわば 代替医療の本質的な原初といえるのであって、

そうした意味から 肩たたきを あなどれなく、

子供や孫が こころをこめてトントントントンと 肩たたきする姿は

その愛情が 治癒をもたらす牧歌的構図となっている。



肩こりに悩まされる人は 時代が変わっても依然減ることはなく

むしろ 多くの理由によって ますます肩こりは広がっており

今までは考えられなかった 幼い若年層にまでこれを訴えるケースが蔓延する。

このため 肩こりへの手技治療療法は

独自な展開をみせ 多様なやり方で花開いているのが現在である。。


ただし 肩こり 或いは 肩痛 といっても多様で

単に筋肉性の軽度の硬直しているものだけの症状から

肩が動かず、激しい痛みがおさまらない深刻なものまで

軽重の振幅はかなり広く

疾患そのものは 非常にありふれたものではあるが

慢性化したり 重篤なものは いちじるしく生活の質を悪化させる。

さらに肩そのものの構造が複雑であり よって肩の障害の原因も複雑系であることも多く

的確な見立てと適切な処方がほどこされないと根治できないことも多いのである。

たとえば

いわゆる肩こりは はじまりは 軽微な不快であっても それを放置すると

しだいに背中痛、頭痛、腕のしびれ などを引き起こし

ついには 肩、腕が上がらず 手が使えなくなるという事態に発展することも多く

また 睡眠障害や精神の不安定などへの発症の経緯をたどることもあり

いわゆる肩こりといえども あなどれない。

また

肩関節そのものは 複雑な構造であり

いわゆる肩こり の領域からさらに悪化し

肩の関節の中の障害が起こると 難治性の高い 完治に時間がかかることもあり

いったんは治ったとしても 絶えず違和感が残留し

思いっきり肩を回せないという あなどれない後遺症が起こることもあり

こうなると 日常的な動きの制約を一生受けることになる。


そこで ここでは 肩の痛みと不調のすべてを網羅し

肩のメカニズムから治療法のすべてを解説するのが本稿である。


以降 肩の痛みと不調のすべてを 大きく2つの分野に分けてその視点から説明する。

2つの分野とは

ひとつは いわゆる肩こり

今一つは 肩関節の障害である。

この2つの分野の視点に分けることで より肩の実体がわかりやすくなると思う。

どう違うかというと 簡単にいえば、

いわゆる肩こりは、 骨格筋の筋肉の問題であり、

肩関節の障害は、 肩の関節の内外の一帯のエリアに障害がある。

それに違いがあるのである。


もちろん この2つの分野にまたがって複合的に症状が出ていることは多く、

とくに 肩関節の障害がある場合は 

同時に そのほとんどが肩関節の周囲の筋肉にも問題があることが多く

この肩関節も筋肉群も ともに治療の対象となるのである。


たとえば 以下のような症状は すべて 肩関節の障害、に加えて 同時に 

肩関節を取り巻く筋肉群も問題があることがほとんどである。

肩関節の障害 この様な症状がでる
 
 ほうきを持とうとしたり、

 フライパンや鍋を持つと

 痛みで持ちあがらない

 このため家事に支障をきたす。

 肩が下がっている時は

 痛みが出ない。

 
 
 電気を消そうと肩をあげた時

 痛くて それ以上上がらない。

 電車のつり革が 持てない。

 賛成の挙手ができない。

 万歳ができない。

 高い所にあるものが取れない

 
 後ろに手をやると痛い。

 帯が締めれない。

 衣服の脱着が難渋する。

 車で後ろに手がいかない。

 

 夜間痛くて 寝れない。

 夜寝ていて 起きてしまう。

 昼間も どんな姿勢でも痛い。

 

 投球ができない。

 腕を振りかぶるだけで痛い。

 野球、テニス、水泳、剣道 等

 スポーツ障害での肩損傷。

 

こうした 肩における障害を2つの分野に分けての さらなる説明は

本稿の後半の

 肩の障害の徹頭徹尾

の中で詳述する。

複雑な肩


肩は、 ヒトとして腕の自由な動きを充分に確保するために

非常に複雑な構造になっている。

 その肩の構造の複雑 動きの柔軟性がある反面、

肩のまわりの組織にかかかる負担に対しては 脆弱な性格となってしまい

肩の障害が出やすい要因となっている。

つまり

腕の自由で繊細な動きの代償として

ヒトの肩のもろさになる という 宿命をもつことになったのである。



このため

一つの組織が傷むと 連鎖的に他の組織に 次々と波及敵に影響を及ぼすという

肩の特性を生む。

だから 肩が痛い、腕が痛い、という訴えに対して

その原因と損傷を受けている箇所が随所にあるということが

肩の疾患の実体となっていることが多い。


また

肩の疾患は 肩以外にも周囲の器官に対し多重の痛みを発症させることも多く

ただに 肩だけの視点でなく その周囲の広域な構造と状態を含めて

治癒が必要なことも多い。

たとえば 首痛、頭痛、背中痛、腕痛、・・ などなど

肩痛と関連する痛みやしびれは 多彩に表れる。


肩関節は まず重力に対して骨格の支持がないというのが大きな特徴で

非常に小さな肩甲骨関節窩に対して上腕骨頭がぶら下がった非荷重関節である。

つまり、骨性支持機構も少なく、荷重による安定性も少ないのが肩関節の特徴。

このため 骨性の支持がないため 何で支えられているかというと

腱板などの靭帯組織と筋肉群が それをになうため

必然的に これらの腱板などの靭帯組織と他の筋肉群の損傷が多くなる宿命を持つ。


肩関節を タイプ的には 、軟部組織で安定性と可動性をもっているボールアンドソケット関節。

膝や肘関節に代表されるヒンジ関節の様に、

骨性支持機構で安定化している単純な構造ではない。



以下の図で 肩関節と股関節の違いを見てほしい。






上の図は 肩関節と股関節の臼蓋の比較である。


同じボールアンドソケット関節の中でも、股関節のように、

比較的大きな臼蓋に対して大腿骨頭が荷重関節を形成しているのではない。

このように 肩関節は 臼は非常に浅い構造で 互いを結ぶ靭帯もわずかで

関節包でかろうじてくっついていると言ってもよい。

このため 肩がぬけると表現する肩脱臼が起こりやすい訳で

その由来も 肩関節の臼蓋の食い込みの浅さからきている。


また 肩関節は ほぼ肩甲骨の存在を基盤にして動いているので

肩という場合 肩関節と肩甲骨の連関動態でとらえることが必要である。

肩甲骨は、胸郭に対しては筋肉での連結しかもたず、

体幹に対しても肩鎖関節を通じて鎖骨を介した骨性連結しかもっていない。

このため 肩甲骨は胸鎖関節を支点として浮いている状態であり

それゆえに 肩甲骨の可動域は骨盤に比べれば ひどく大きいのが特徴である。







肩を分解する


肩の骨の構造

 肩関節は 鎖骨、肩甲骨、上腕骨の3つの骨で構成される。

この3つの肩関節が 鎖骨によって躯体の胸骨と連結してしている。

下図をみればわかるが

つまり 肩関節の3つの骨は 鎖骨と胸骨の連結以外は

骨性の支持がなく 全く浮いているのである。

では どのように位置が固定されているかというと

骨格筋と靭帯と腱で これを支えている。

この構造こそが 肩関節の酷使で障害を生みやすい原因となっている。





 肩甲骨 

 
肩甲骨は三角形の複雑な形をしている。

特に 肩甲骨のなかの部位では、

上腕骨頭と連結される関節窩,

突起物である肩峰,

カギ型に突出した烏口突起, の3つは独特な形状をして

肩甲骨の動きを特徴づけている。




烏口突起は 肩甲骨にある骨突起であり その形状が独特なカギ型をしている。

このカギ型となっている理由は ここに他の靭帯と筋肉が付着しやすいように

この様な形状になっている。

ここには 下図にあるように 3つに靭帯と 3つの筋肉が付着する。

烏口肩峰靭帯、菱形靭帯、円錐靭帯。

上腕二頭筋短頭、烏口腕筋、小胸筋。










 鎖骨


鎖骨は ヒトを正面から見た場合 その本人が太っていなければ 

ほぼ明確に目視できる骨格である。

このため 鎖骨の形状は 正面から見ると 横一文字であるが

これを 上方から見ると S字型のクランク形状となっている。

下図を参考にしてほしい。




このクランク形状が 鎖骨の大きな役割のひとつになっている。

クランクとは そもそも 直線運動を回転運動に変換するコネクターで

クランクは 自転車のペダル、エンジン内部などの機械の中心構造として使われる。

このクランク作用が 鎖骨の動きの特徴を表している。

それを説明すると、

上肢の挙上動作の場合、

まず烏口突起と鎖骨の距離が開いて ここを盾につないでいる円錐靭帯の緊張が始まる。

この時 円錐靭帯の緊張で 鎖骨が引っ張られるが その時鎖骨がクランク状であるため

索引が直線運動の挙上ではなく 回転運動の後方運動に変換される。

この運動変換により 上肢挙上が関節の大きな負担なく行われる。

 上腕骨


肩関節で 上腕骨と肩甲骨は 

すでに述べたように ボールアンドソケット関節で臼蓋を形成している。

このため 上腕骨は自在に動くきわめて自由な可動域をもっている。

下図のように 腕を下げて重量物を持つときは 上腕骨が関節内を上下に動く。





また 腕を挙上するに際しては 上腕骨頭は滑りつつ回転するような動きで

下図の様に 角度を微妙に変えながら挙上できる。





上腕骨をさらに 腕をねじり つまり 回旋しながら挙上できて

ボールを投げる様な回旋しつつ 振り下ろすことができる。





また 肩の関節の周囲には、

下図の水色の線で表したような、関節上腕靭帯と呼ばれるバンドのような組織が存在し

上腕骨の自在な動きを助けている。




肩の筋肉の展開


肩には 以下のような筋肉群が縦横に走り 肩関節の自在な動きを可能にしている。

 三角筋  
 大胸筋  
 小胸筋    
 棘上筋


肩甲骨から起り、
肩峰の下側を通り抜け 
肩関節上を越え
これをまたぎながら,

上腕骨大結節上部に付着する。
 
 棘下筋    
棘下筋(後ろから見たところ)

棘下筋を 赤で示す。

棘下筋(赤  )は、
肩甲骨(緑  )の棘下窩から起こり、
上腕骨(青  )の大結節に停止する。
 小円筋


右図で2本のラインで示した
上部の黒ラインが小円筋
下部の紺ラインが大円筋


小円筋は
棘下筋に一部分に被われて
肩甲骨後面の
外側縁部から起こり、
上腕骨大結節の下部に着
く。

小円筋と棘下筋の
起始、停止、作用などは
ほぼ似通っていることから
これら2つの筋肉は同時に働き、
とりわけ肩関節の外旋

水平伸展に関与する。
 
 
 大円筋

大円筋の停止部は
広背筋と近いところにあるので
似た作用を持つ。

小円筋も
大円筋と隣接している筋肉であるが
それぞれ付着部が異なるので
運動動作は
まったく反対の働きをする。

大円筋は
運動動作においては
広背筋と伴に
肩関節の内転、内旋、伸展動作に関与している。

この筋肉は
広背筋と共同し
働くことが多い筋肉なので
”広背筋の小さなヘルパー”と
呼ばれる。

広背筋と大円筋が
上腕骨に付着する部位で
集合し
終結する。 
それが右図である。




 肩甲下筋  
 烏口腕筋    
 僧帽筋    
 菱形筋    
 肩甲挙筋    
 前鋸筋    
上腕二頭筋  
 上腕二頭筋は
名の通り起始部を
2つ持っていて
短頭と長頭から成る。
短頭は、
肩甲骨の烏口突起に
付着している。
短頭も長頭も
最後に付着している部分は同じ。

 


胸の視点から見る 肩まわりの筋肉群

肩まわりの筋肉群をよりよく理解するために

胸部の筋肉の視点で筋肉群をみてみると以下の様になる。

右側が 表層筋

左側が 深層筋




肩の障害の徹頭徹尾 


肩の障害を 大きく2つに分けると

ひとつは いわゆる肩こり、今一つは 肩関節の障害であることは

すでに述べた訳で、ここでは それをさらに詳述して

いわゆる肩こりから肩関節の障害までの 肩の障害の代表的なものを解説する。

肩の障害を かように2つの分野に分ける図解は以下、

 肩の障害のすべて
 いわゆる肩こり   肩関節の障害
骨格筋の筋肉の問題  肩関節内の問題 


硬直が強いか、
へたりの強い、
骨格筋を探り出し
その回復に努める。
また
筋膜全体の緊張度が
強い場合もあり
この場合 
広域な施術展開となる。


腱板損傷 ・腱板断裂
インピンジメント症候群
胸郭出口症候群
石灰沈着性腱板炎
変形性肩関節症
上方関節唇損傷


肩の障害を訴える患者に対して、

その障害が まず上記のいずれに属するのかを判断するのが初歩的な診断である。

いわゆる肩こり なのか 肩関節の障害 なのか である。

このうち 肩関節の障害 の病名が明確なものを逐次 説明しよう。

もちろん すべてが 整体の対象となる。

 腱板損傷・腱板断裂

腱板と呼ばれる筋肉の骨格の付着部である腱組織は下の絵のように腕を上げたり、

腕をねじったりするときに働く。 

   


酷使すると、摩耗するような形で部分的に損傷を受けたり、断裂して切れてしまったりすることがあり、

転倒などによって肩を強く打ったり、手をついたりすることで切れてしまうこともある。

こうして 腱が断裂すると腱が骨頭からはがれてしまうのである。

   


腱板とは、

棘上筋棘下筋小円筋肩甲下筋の4つの筋肉が

上腕骨の骨頭に付着する腱にによって構成されている。

   



腱板損傷・腱板断裂とは この4つの腱が損傷・断裂を受けていることを指す。以下の図である。

 



腱は 骨格筋が骨に付着する直前に

細くなって骨の動きをなめらかに動くように細く柔軟を増している部分を指す。

したがって 自在に動きやすいように腱はやわらかい半面 圧力や酷使には脆弱で

損傷しやすいようになっている。

腱板損傷・腱板断裂とは そうした腱の特有の性状から由来するものなのである。


では 4つの腱板のうち 棘上筋の腱が どのようになっているのか図解してみよう。

下図は 肩を冠状面の断面である。

黄色が棘上筋腱となっている。

棘上筋腱は骨頭に付着し そこで 上下の2つの滑液包にはさまれ保護されている。

肩峰下滑液包

上腕骨と肩峰の間にある。

肩を上げていく時、上腕骨頭が肩峰の下を通ってゆくが、

その際スムースに動くよう肩峰下滑液包が、クッションの役割をしている。

肩関節関節包

上腕骨と肩甲骨の間にある。これも、クッションの役割をしている。

   


この 2つの肩峰下滑液包と肩関節包が棘上筋腱を保護しており

たとえ腱が少々の損傷を起こしていたとしても 緩衝の役割を果たしていれば

肩は正常に動く。 が さらに肩峰下滑液包と肩関節包に負担がかかることにより

肩峰下滑液包と肩関節包そのものが変容してくると 

肩がある角度で腱に対して挟み込むことになり 異変が生じてくるのである。

腱板損傷・腱板断裂とは つまり 

腱板本体の損傷 それにプラスして 滑液包と関節包の損傷が 加わる病態をいう。

最初は 引っかかったような感じがし それがこうじると痛みとなる。


滑液包の動態をみてみよう。

下図のピンクが肩峰下滑液包を示す。肩を下ろしている時の状態である。

   

これが 肩をあげていき 60〜120度の範囲で はさまれたような形になって違和感や痛みがでる。

 


さらに上げていき 180度に近くなると 肩峰下滑液包がはさまれることがなくなり

違和感や痛みがなくなる。

   


こうして 肩があげつらくなり さらに痛みが出だすと ほぼ肩そのものをあげる事が減少し

肩まわりの筋肉は 萎縮したり硬直したりして 腱と滑液包と関節包は悪化して

ひどくなると 肩を動かさなくても痛みが出たり 夜間の痛みが出たりする。


さらに、腱板が働かない状態を続けていると、

上腕骨頭や肩峰に骨の変形が現われてきたり、変形性関節症の様相を呈してしまうこともある。

   

インピンジメント症候群 
 
インピンジとは”衝突“を意味する。したがって インピンジメント症候群とは、肩の衝突である。





これは 野球の投球などの過度の肩の酷使で発症しやすい。

投球で 肩が最大に外旋した位置(肘が頭の後方に来るトップの位置)からボールを加速してリリースし、

フォロースルーまでの間に肩は最大外旋から急激に内旋される。

この時 肩の開きが早かったり、肘が下がって肩にあそびができぶれると、

肩関節の前方に大きな力が加わる。

前方に大きな力がかかると腕の骨(上腕骨頭)が屋根の骨(肩峰)に衝突し、

その間にある腱や滑液包が炎症を起こしたり、損傷が起きる。

ボールを投げすぎると腱板は疲労し肩を支える力が弱くなり、肩がぶれてインピンジ(衝突)を起こしやすくなる。

特にピッチャーやキャッチャーはボールを投げる機会が多いため、

インピンジメント症候群になりやすいといえる。

腱板は肩関節の周りを取り囲み肩を支えている4つの筋群(筋肉―腱)。

肩峰下滑液包(けんぽうかかつえきほう)は、

腱板が屋根の骨の下をうまくくぐれるようにすべるクッションの働きをしている。


インピンジメント症候群を回避する身体訓練の基本は、

衰弱している腱板を鍛える いわゆるインナーマッスルトレーニングである。

ただし腱板は肩甲骨から出ている筋肉なので 

土台である肩甲骨が不安定だとうまく腱板を鍛えることは不可能。

このため 腱板を鍛えるには、まず肩甲骨周囲の筋肉トレーニングが前提となる。


胸郭出口症候群 
 

胸郭出口症候群とは、その多くは神経症状が主体となる疾患であり,

主に 手のしびれ、手の脱力感、鈍重感、手の動作の不如意、等の神経症状が起こる。

この原因は、 頸椎からのびる腕神経叢、血管が これらの走行途中の 

筋肉の斜角筋群、鎖骨、肋骨、筋肉の小胸筋 などで圧迫・狭窄されておこる。

したがって 整体におけるその治療の基本は、

この 筋肉の斜角筋群、鎖骨、肋骨、筋肉の小胸筋 などでの圧迫・狭窄を

確実に 解除することである。





上肢の神経は、第5頸髄から第1胸髄の脊髄から分岐して、各神経根となり、

脊椎椎間孔というトンネルから脊椎管の外にでる。

この後、各神経根は、大変複雑なネットワークを形成しながら腕・手に走行する。

腋の下を通過するまでに、筋肉や、鎖骨と肋骨の間など大変狭い部位を、

腕に行く血管と一緒に通過する。


なで肩の人は、この通路が特に狭い身体特性の傾向があり

神経・血管が圧迫されやすく 胸廓出口症候群を発症しやすい。

このため 女性で かつ なで肩の人は、注意を要するわけである。


この症候群は、神経障害、血行障害、血行虚血、血管循環不全、 などにより

その発症の様相は 多彩ね展開され 個人差も大きい。


また 手指全域 あるいは 手指と前腕の小指側(尺側)に強い場合が多くみられる傾向がある。


さらに この症候群は、肩 背中などの強い打撲によっても発症するケースも頻度が高く、

交通事故などの外傷によっても 後遺症として長く苦しめられることも多い。


自己診断のやり方は、

手首の脈をはかりながら腕全体を横から上に挙げる。

同時に 頚を挙げた腕の方向に向け、指先を見るように上を見る。

大きく息を吸って、吸った状態で息を止め

シビレが強くなり、動脈の脈が止まってしまうようなら 胸廓出口症候群の疑いが強い。


石灰沈着性腱板炎
 

不思議と、

夜間に突然生じる激烈な肩関節の疼痛で始まる事が多いのが この石灰沈着性腱板炎である。

強い痛みで睡眠ができなくなり、肩が動かなくなってしまう。

従来までは、いわゆる四十肩、五十肩のひとつといわれてきた代表的な病態のひとつである。

体の中にもともと存在するカルシウムなどの石灰分が肩に沈着し、

腱板部分にたまって それが激痛をもtらす症状。

40〜50代の女性に多く発症する特徴がある。






たとえば、

2018年12月 突然 肩の激痛が始まったのが 女優 石田ゆり子 当時49歳 である。




ある日 やはり 朝から 右肩が激痛がおこり その後 数日 人生で最高級の痛みで苦しんだという。

発症の数か月前には ニューヨーク、パリ、東京で多忙なロケが続き 疲労が蓄積していた。

それが引き金になり 肩にも石灰が蓄積して 石灰沈着性腱板炎となった。

この石灰は、当初は濃厚なミルク状で、時がたつにつれ、練り歯磨き状、石膏(せっこう)状へと硬く変化していく。

石灰が、どんどんたまって膨らんでくると痛みが増す。

その後、腱板から滑液包内に破れ出る時に激痛となる。

病院では、X線(レントゲン)撮影によって腱板部分に石灰沈着の所見を確認する事によって診断。

石灰沈着の位置や大きさを調べるためにCT検査や超音波検査などもされる。




急性であれば ほどなく 回復するが、

慢性的になると 非常に厄介な症状を繰り返して、

腕の挙上で痛みがあり、酷使で痛みがでる。

原因は、石灰物質の刺激で 肩峰下滑液包の炎症であり これにより周囲の筋肉が硬化が解けず

凍結した肩のようになり これにより ますます痛みが広がる。

整体では この様な状態を 肩のロック化と呼び、まず肩の強い硬直を弛緩することから治療する。


私の今までの 施術の症例からまとめると、

大体において 女性は 重症になる前に 急性時の段階で徹底的に完治しようと努力し治療に専念するが、

男性の場合は、相当な重症になってから 整体に来院することが多く 治療に時間を要する例が多い。


変形性肩関節症 
 

変形性関節症は、主に膝関節と股関節に頻繁に起こる疾患であり、

これに比し 肩関節における変形性関節症は、

膝関節と股関節よりは荷重がかかりにくいために 罹患頻度は やや低い。

それでも 特に 肩を酷使してきたり、筋肉構成の脆弱な人においては、中年以降に発症するのである。


変形性関節症とは、簡単にいうと、

関節内の軟骨がすり減ってしまい 関節を構成する骨格どうしが衝突して 

関節周囲を取り囲む滑膜の炎症が併発して変性が加速する状態をいう。

また 同時に 関節周囲の骨軟骨形成などの増殖性変化を伴うこともあり、

それらの変化により血管増生や神経線維の増生をともなう関節包の線維化が起こり

疼痛が出やすくなる。





関節の軟骨は軟骨細胞とコラーゲンとプロテオグリカンで構成される。

関節の軟骨には血行や神経線維の分布はないのが特徴であり、

血液分布が存在しないことが 軟骨の摩耗の回復に時間がかかる要因となり、

また

神経の分布がないことが 軟骨そのものでの痛みの発生はない。

疼痛は、関節周囲を取り囲む滑膜や関節包の炎症によっておこるものである。

つまり 軟骨の減少により 滑膜や関節包に対しての強い衝撃となることが炎症を生む。

さらに これが進行すると、肩峰などの骨格に骨棘形成が進行することがあり、

骨格の変性であるトゲのような骨棘は それ自体の刺激で疼痛をより複雑にするのである。






こうして 変形性関節症とは、軟骨、骨格、靭帯、腱、筋肉、など多方面の変形が進行し、

肩関節の環境全体が 徐々に変形していく病態である。


その病態は、

水腫,腫脹や熱感、圧痛やしびれ、

安静時痛および夜間時痛、

運動時痛、可動域制限、などなど様々な様相が出現する。


変形性肩関節症の重症度を判定する上において 大きな要素となるのが、

腱板が残っている場合と腱板が残っていない場合に分けられる。

腱板が残っていない場合は、上腕骨が上にずれてしまい、

著しい変形を起こしている段階となる。


上方関節唇損傷
 

関節唇とは 何か? 言葉どうりで言えば、関節にある唇 くちびる のこと。

下図は 肩関節を矢状面で切りとった断面である。実際 唇 くちびる のような形をしている。




肩関節は球関節に分類される。

上腕骨の端の球状の部分(上腕骨頭)が肩甲骨の凹み(関節窩)にはまり、広い可動域をもっている。

ただし、上腕骨頭にくらべて肩甲骨関節窩は小さく浅いため、

それを補うためのリング状の組織が関節窩の周囲に存在する。

これが関節唇である。関節唇は、肩の受け皿となる骨の輪郭を覆っている線維性の軟骨。

関節唇は上方関節唇、前方関節唇、下方関節唇、後方関節唇に分けられ、

肩関節を安定させるとともに、衝撃などを吸収するクッションの役割をしている。

通常、関節唇は骨に付着しているが、肩を使うスポーツ動作や肩関節の脱臼などではがれることがあり、 

上方関節唇とは、この上方関節唇の部位が損傷してしまう事を言う。


下図が その様相である。








 上方の関節唇がはがれると肩関節の安定性が失われ、

たとえば 野球において 投球時に肩の痛みや引っかかるような違和感で苦しめられる。

これは、投球などの反復動作が過大になってくると、上腕二頭筋がオーバーワークとなる。

上腕二頭筋の長頭腱の起始部が ちょうど関節唇の上方にあるため

この部位に過度の負荷がかかり、関節唇の上方に損傷を起こすことになる。


野球の世界では、

投手にとって かつては「肩を壊す」ということは 選手生命の終止符を意味していた.

なぜならば、肩の中の何が壊れているのかは 以前では 十分解明されていず、

確実な治療法が確立できていなかったからである.

しかし その後 投手が「肩を壊す」 病態が解明されるに及び、

今では、野球の投手が 「肩を壊した」 としても 的確な治療をほどこせば、

選手生命を絶たれることは 回避されるようになってきた。

つまり それは、肩関節唇の損傷と肩回旋腱板の損傷であると明解になったのである。


以上 いわゆる肩こり と 肩関節の障害 の分別をおこなった。


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