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膝の悲鳴 膝の解剖学的弱点 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
膝は スポーツ障害において最も損傷の多い部位であり また高齢になるにつれ痛みを最も訴える関節が 膝である。 では なぜ膝がこれほど悲鳴をあげやすいのか? 膝に疾患がでやすいのはなぜなのか? 今回は それを膝の解剖学的な視点からさぐっていこう! ではまず 膝関節の最も特徴的な事を切り口にして膝を見ていく。 膝の関節の最も大きな特徴は ヒトのすべての関節の中で 一番の大きいサイズということである。 これは何を意味するかというと 膝関節は他の関節群にくらべ 非常に頑強で堅固な関節という事である。 つまり 膝は非常に大きな負荷がかかってもそれに耐える 構造をそもそも有している事を意味する。 では なぜ一番大きく頑丈堅固にできている膝に スポーツ障害における損傷が集中するのか? また 膝を痛める人の数が圧倒的に多いのか? 不可思議である・・ その答えは、 膝関節のもつ今ひとつの別の重大な特徴に由来する。 つまり 膝関節は基本的に 縦方向(荷重を真上から真下に受ける)の荷重には強いが 横や斜めからの荷重や衝撃に弱いという特徴である。 下図の様に膝は上部の荷重を受ける役割をになう。 ヒトの2足歩行を実現するためには 上部の荷重を2本の膝で受ける強固な造りが必要なのである。
ところが 膝は、横や斜めからの荷重や衝撃に弱いのである。 この2つの膝関節の特徴をしっかり記憶して 以下の膝関節の構造を学ぶと 膝の解剖学的な長所と弱点が実によく理解できる。 膝関節にかぎらず ヒトのすべての関節の構造は基本的に 骨 骨格筋 腱 靭帯 保護組織 の5つの部分から構成される。 この5つの部分が協調し合ってこそはじめて 関節は滑らかに動くのである。 膝関節以外の各関節の独自性もそれぞれが この5つの部分の 独特の配置と形状を持つ事で発揮される。 膝関節もまさに この5つの部分が独自な配置と形状をもつ。
以上の5つの部分で成り立つ膝関節は、 他の関節と同様 この5つの部分がそれぞれの関節ごとに 独自な形と構成を形成して各自の個性ある 独特な関節となっている。 このうちまず 膝関節の骨の部分をみていこう。 膝関節の骨の部分は次の3点から成り立つ。 下図を見てみよう。 膝関節の骨は次の3本から成り立つ。
この3つの骨があつまり膝関節を形成する。 膝関節がヒトのすべての関節の中で一番の大きいとは この3つの骨の集合体の大きさを指す。 膝関節は、 大腿骨遠位端と脛骨上関節面が上下に組み合わさり それを 大腿四頭筋の腱と膝蓋腱でささえられた膝蓋骨が ヒトの前面に配置されている。 つまり膝関節の骨はこの3本で構成されている。 膝蓋骨とは、俗にいう膝の皿である。 この骨の配置から 膝関節の可動の特徴がわかる。 ここで注目すべきは 膝関節の可動域は意外に小さく狭い事である。 以下の図が膝の可動である。 つまり 膝とは正面方向のみに 120度の範囲でしか伸展屈曲しかできない 非常に狭い可動域の関節なのである。 これを肘関節と比べると 肘関節と可動域の様相は当然に酷似しているが 肘関節との決定的に違うのは 肘関節には 膝関節がになう体重の重さの荷重を受ける役割を もたなくてもよいという事なのである。 肘関節の最大の役割は 指先の繊細で多彩な動きをなめらかに動かす事である。 つまり膝関節のミッションは 正面に向いた身体が 120度の可動域での伸展と屈曲の範囲内で 膝から上の荷重をしっかり支える事にある。 このため こうした機能能力の範囲内であれば スポーツ中の様々な局面でも膝損傷が少なく また高齢になるにつれ発症する膝痛も少ないのである。 逆に 膝損傷と膝痛が出やすい局面は スポーツ中では、 膝の横サイドないしは斜めサイドからの圧迫や 膝の中心線に対してのネジレと回転で 損傷を起こしやすい。 また 高齢になるにつれ O脚などにより重心線が破綻し 膝関節内で荷重の不均衡状態が常態化すると 膝痛を生んでしまう原因となるのである。 すなわち 可動域がそもそも小さい膝関節は 可動域から逸脱するような動きをすることで 損傷を受けやすく又 膝痛が出やすい。 さらに ここで膝関節の構成される骨の様相をみて 意外に骨構成に安定感がないと感じないだろうか? 私は最初に膝関節の骨構成を目にした時の 感想は、 ひ弱そうな骨の組み合わせだな! というひどく意外なものだった! これで重い体重がささえれて、 多彩な運動能力が保証できるのだろうか? という深い疑問であった。 もちろんそれをカバーする為に 膝関節のまわりには、頑強な骨格筋が配置され 腱と靭帯が強固に固め 保護組織が防衛する という防備体制が存在している事は理解できるが さらに骨構成を強固にするちがう設計が 生まれなかったのはなぜだろうか? という疑問をずっといだき続けてきたのである。 当然 骨自体でもって骨組みをより強固にしていく場合 強靭にはなるが 柔軟性は減少していくという状態になる。 このため 関節における骨組みの構成は たえず強固さと柔軟性の兼ね合いで決定される。 膝関節は結局 骨の脆弱性を残しつつ 骨以外の 骨格筋、腱、靭帯、保護組織を多用し それらの積極的な援用によって 膝関節の保護をめざした組織となったのである。 これが膝関節の解剖学的な特色となった。 こうした膝関節の特色が つまり 膝特有の疾患を生み出す背景となる。 すなわち膝関節は 腱と靭帯と保護組織に大きく依存し その健全性を維持する体勢となったのである。 たとえば 膝関節の靭帯のなかで 十字靭帯という膝関節特有の靭帯がある。 十字靭帯は前十字靭帯と後十字靭帯の2つある。 この靭帯の注目すべきは 靭帯の場所が関節内に存在することで 通常の関節の靭帯は関節の外に存在する事が多い。 なぜ前十字靭帯と後十字靭帯が関節内にあるかというと 膝関節においては 骨の配置構成だけでは 非常に安定性を欠くという理由による。 すでに見てきたように 骨の構成だけでは頼りない膝関節が それを補強し膝を保護するために 膝関節内に靭帯が配される事になったわけである。 この前十字靭帯と後十字靭帯が 大腿骨と脛骨の中間に配置されることで見るからに 衝撃を吸収してくれる安心感がある。 このように膝関節は他の関節に比して 腱と靭帯と保護組織に健全性が大きく依存する 体勢が特徴である為 これらが変性、劣化、損傷を受けるや 膝痛に直結する事になる。 スポーツ障害においては 膝に対してあらゆる方向からの 衝撃、刺激、がもたらされ 真下への直下型の衝撃に強いだけの膝の特性は それ以外の方向からの衝撃や荷重に脆弱な膝は ひとたまりなく影響を受けてしまう。 また 下肢全体の形状、とりわけ O脚のように重心ラインが著しく破壊すると 膝への荷重はまっすぐに降りず 腱と靭帯と保護組織は徐々に崩壊していき 変形性膝関節炎となっていく。 膝の悲鳴がおこりやすいのは、 このように膝の解剖学的弱点が原因の一端 であることが言えるわけである |
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