オリンピックの競技で もっとも注目するのは 最大の力がでる様に競技直前に選手がそれぞれ行うリラックスの方法である
なかでも ジャマイカのウサイン・ボルトのおこなう競技前の意識的演技的な身体の動かし方は
脱力とリラックス 集中と弛緩 の深淵をのぞかせ
その記録そのものより 魅惑的である
しかも その独特な身体の動かし方は競技前のみならず スタートの号砲が鳴った後もひき続き 競技中から競技後まで
一貫して 独自な身体の動きで終始する
競技中の走行は全身がうねるような動きで 爬虫類をおもわせ柔軟な筋肉群のうごきは まるで泳いでいるようである
さらに 競技後の爆発するパーフォーマンスは いうまでもないだろう
ウサイン・ボルトの走りの特徴は 簡単に言えば そのフィニッシュに至るまでリラックスに終始することで
とくに その後半のリラックスする走りは 様々な解釈を生むことになり
運動生理学、バイオメカニズム、運動神経学、などの見地から
諸説がうまれ 実に興味深い
整体的な角度から ウサイン・ボルトのこの独特な走りを解釈するひとつを紹介すると
ウサイン・ボルトの走りには 『共縮』を回避する手法がとられている
というものがあります
『共縮』とは 伸筋と屈筋が同時に収縮してしまい 身体が硬直して運動能力とパワーが鈍ってしまうことです
本来 運動の一つ一つは 伸びる筋肉と縮む筋肉が拮抗して活動しながら大きなパワーをつくるのですが
異常に興奮したり 強烈な意志で身体を動かそうとしたり 焦燥したりすると
これらの筋肉が同時に収縮してしまう現象をいうのです
たとえば 走行時に 拮抗するのは
太ももでいうと 大腿直筋と大腿二頭筋で
ふくらはぎでいうと 前脛骨筋と腓腹筋です
本来 これらの筋肉は時間的に交互に相反して活動しますが
走速度が加速するにつれて同時に活動してくるのです
これを『共縮』というのです
短距離走行の後半に失速してしまうのは こうした『共縮』している発生が高いのです
つまりウサイン・ボルトの走りには 『共縮』を回避する意図的な戦略があるのです
それは リラックスであり脱力であり弛緩であります
もちろん それを指示するのは
ウサイン・ボルトの脳であり運動神経であります
最大の勝負をかけるタイミングである走行の後半に こうしたリラックスであり脱力であり弛緩を実現できるために
競技前から 周到な準備をしている
のがウサイン・ボルトです
ロンドンではオリンピックが終了し
日本では街路にサルスベリの真っ赤な花が咲き乱れています
うだる暑さのなかで 舞踏するように咲いているここかしこのサルスベリをみていると
まるで ウサイン・ボルトのおどけた踊りのようにみえるのは 暑さのせいでしょうか
そして
そのおどけた踊りの背後にひそむ おそるべき哲理におもいをはせると
いっしゅんに 寒くなるのです
整体的見方とは つまり こういうことです
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