うそつき日記 5
mに伝えたいことがいっぱいあった
伝えられなくてfは泣いた
気持ちがあぶくのようにぶつぶつと浮いて
fはあぶくの中で暮らしていた
不安が押しいれのふすまからも天井からもあふれて
fをつぶしてしまうところだった
その番号は暗号のつもりだったんだよとmはいう
あたしをだれだと思ってんのよとfもいう
こんなの暗号でもなんでもない
あんたからのヒントはぜったい見逃さない
つぶつぶのあぶくがぱちんぱちんとはじける
あいたかった
ずっとずっとあいたかった
だから簡単にはあえない
ちょっとやそっと
葉書が届いたくらいでは
電話が通じたくらいでは
あんたにあえる日はやってこない
ぶつぶつぶつぶつぶ
ぱちんぱちんぱちん
そうずうっとずうっと
あいたかった
[つぎ]