うそつき日記 3
改札口に時間ぴったりにあらわれるなんて
いったいぜんたいどうしちゃったの
といいながら
fの視線はmのよごれた服の上に固定されてしまう
どうしてまたこんなにきたないかっこうでいるの
そうは思っても口には出せない
泊めてもらう家がもうないんだ
なんてなさけないm
なのにここまで来る電車賃がよくあったよね
そんなことはもういい
とにかくあえてよかったよ
あいたかったよ
あいたかったんだよ
fがmの腕に手をまわすと
mはぱらぱらとこわれたパズル
はずれてしまった部品をさがしにいく足どりはおもい
あんたのそのよごれた服をなんとかしなくちゃね
何か買ってあげるから
駅ビルの二階へあがるエスカレーターをさがす
ここには前にも来たことがあるね
それはもうずいぶんむかし
どうりで店のかまえが時代おくれなんだね
ねえこれはどう
振り向くとmはいない
用水路にそった道を行く
高速道路の高架下で
くるまの音が降ってくる
振り向くたびにmはいない
でもこんなにあいたいと願ってきたんだから
あいたくてあいたくてしかたなかったんだから
たとえぼろぼろの服着ていようとうれしかったんだよ
でもごめんね
あたしの家に泊めてあげるわけにはいかない
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