音楽と数列

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等差・等比・調和数列

音の周波数の中にいろいろな数列が潜んでいることに興味をもち、

等差数列、等比数列、調和数列について理解を深めることが、この教材のねらいである。

①音階と数列

ピアノやギターなどの音階と数列は、密接な関係がある。

音は空気の振動であり、その実体は音波である。この波の大きさ(振幅)が音の大きさであり、

1秒間に何回振動するかという周波数が音の高さになる。

周波数はラの音が440Hz(ヘルツ)とすることが国際的に決められていて、

(日本ではド,レ,ミ…であるが、国際的にはラからA,B,C…と、ラから始まる。)

音階と周波数の関係は、下表のようになっている。

音階ラ#ド#レ#ファファ#ソ#
周波数(Hz)220233247262277293311330349370392415440



   上表の周波数の数列はどんな関係になっているのだろうか。

 また、220Hzのラを初項として、一般項を求めてみよう。

 

隣り合う周波数の比はこれではよく関係はわからないが、1オクターブ(ラから次のラまで)の

周波数は220から440とちょうど2倍になっていることがわかる。また、音階は、ピアノの鍵盤で

見ると、図1のように、ラから次のラの前までには、ラ#・シ・ド・ド#・レ・レ#・ミ・ファ・ファ#・ソ

・ソ#・ラと12個の音がある。その12個それぞれの音の周波数を調べてみると、

ある音の周波数が前の音の約1.06倍になっていることがわかる。

そして1.06倍が12回くりかえされて、1オクターブで(1.06)12≒2倍になるしくみ

となっている。つまり、この各音の周波数は公比1.06の「等比数列」である。

よって、一般項はan=220(1.06)n-1と求めることができる。

これは図2のように、ギターを押さえて振動させるときの弦の長さの比にもなっているが、

振動させる弦の長さは、音が低いほど長く、ラの音に対して1オクターブ低いラの音は、

弦の長さが倍になっている。つまり、周波数と振動させる弦の長さは、逆数の関係にある。



②和音と数列

音には和音というものがある。Ⅰ度の和音(コードC)は「ド・ミ・ソ」、Ⅳ度の和音(コードF)は

「ファ・ラ・ド」、Ⅴ度の和音(コードG)は「ソ・シ・レ」で、この3つが主要3和音である。

この和音の3つの音の周波数の関係を調べるために、前の音階と周波数の表の周波数を11で

割って四捨五入した比、つまり、周波数440Hzのラを40としたときの主な音の周波数比を求めた

ものが下表である。ラを40として比を求めたのは、比べやすくするためである。

音階ファ
周波数(Hz)2022242730323640454854


その結果から3つの音の周波数の関係と、周波数の比の逆数である弦の長さの比をまとめたの

が下表である。

コード
和音ド  ミ  ソファ  ラ  ドソ  シ  レ
周波数の比24  30  3632  40  4836  45  54
弦の長さの比1/24 1/30 1/361/32 1/40 1/481/36 1/45 1/54



   上表から、和音を作る3つの音の周波数にはどんな関係があるといえるだろうか?

 

上表から、周波数の比が、Cが公差6、Fが公差8、Gが公差9の「等差数列」になっているのが

わかる。ということはその逆数である弦の長さの比は「調和数列」ということになる。

この調和数列という名前は、このように弦の長さの比が調和数列になっているときに調和する

音が得られることからついている。

[1]ベングト・ウリーン著,丹羽敏雄,森章吾 共訳 (1995),『シュタイナー学校の数学読本』,三省堂,pp.77-87.