円周上の点を結ぶ弦による円の分割

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数列の一般項と漸化式

円の分割という操作的な活動を通して、数列の漸化式の理解を深め、数列を一般項で表す

必要性を感じ、数列に興味をもつことが、この教材のねらいである。


 円周上にn個の点を取るとき、それらを結ぶ弦によって円はいくつの領域に分割される

 だろうか。ただし、どの弦も平行でなく、また3本以上の弦が1点で交わることのないとする。

 

円が分割される領域の数をとすると、

n=1のときは円は分割されないから

=1である。

次に、n=2のときから順に図を書いて

考察してみると、図1のようになり、

領域を数えると、

=2,a=4,a=8,a=16となる。

このことから、aを推測させると、

=32で、さらに=2n-1と推測する

人が多いであろう。しかし、実はこれは正しくない。

実際に図2のように図を書いて、領域を数えてみる

と、=31となる。このしくみについて考えてみよう。

まずは円周上にとる点の数を5個から6個に増やした

ときで考える。

図2で①~⑤の点に対して⑥の点を増やしたとき、

点の番号を k とすると、

⑥の隣りの点である①に向かって弦を引いたとき、

すなわち k=1のときは、領域の数がつ増えるだけである。

次に、⑥から⑥の2つ隣りの点②に向かって弦を引いたとき、すなわち k=2のときは、

交点の数は⑥と②の間にある1個の点①から、⑥と②以外の点③、④、⑤の3個の点に向かっ

て引く弦の数と同じになるので、交点は1×3=3個であることがわかる。

このとき、(円周上の点が5個のときにあった弦と新たに引いた弦との交点の数+1) だけ

できる領域が増えるので、領域は1+1×3=4つ増える。

また、⑥から⑥の3つ隣りの点③に向かって弦を引いたとき、すなわち k=3 のときは、

交点の数は⑥と③の間にある2個の点①と②からそれぞれ、⑥と③以外の点④、⑤の2個の点

に向かって引く弦の数と同じになるので、交点は2×2=4個であることがわかる。

このとき、領域が1+2×2=5つ増える。

同様に、k=4のときは1+3×1=4つ増え、k=5のときはつ増える。

これを一般化すると、点の番号 k に対して、1+(k-1)(5-k)つ増えることになるから、

-a=(k=1Σ5){1+(k-1)(5-k)}であることがわかる。

よって、円周上にとる点の数をn個から(n+1)個に増やしたときの漸化式は、

n+1-a=(k=1Σn){1+(k-1)(n-k)}となる。

n+1-a=n+(n3-3n2+2n)/6 と計算できるから、

この漸化式を解くと、a=a+(k=1Σn-1){k+(k3-3k2+2k)/6 }より、

=1+n(n-1)/2+n(n-1)(n-2)(n-3)/24 となる。

これは、=1+ と見ることのできる式である。

このが弦の本数が弦と弦の交点の個数であると考えると、この式は理解できる。

この一般項から、を計算すると、=1+=1+21+35=57となる。

ところで、この数列{a};{1,2,4,8,16,31,57,…}の階差数列を3回とると、

{b};{1,2,4,8,15,26,…}

{c};{1,2,4,7,11,…}

{d};{1,2,3,4,…} となり、

=n と推測すると、

=1+(k=1Σn-1)k

  =(1/2)(n2-n+2)

=1+(k=1Σn-1)(1/2)(n2-n+2)

  =(1/6)(n3-3n2+8n)

=1+(k=1Σn-1)(1/6)(n3-3n2+8n)

  =(1/24)(n4-6n3+23n2-18n+24)

となり、これは、a=1+n(n-1)/2+n(n-1)(n-2)(n-3)/24 と一致する。

<参考文献>
[1]白石和夫(2004),「数学科教員養成において分割の数を利用する試み」,
  「2004年度数学教育学会夏季研究会」.