点字のしくみ
重複順列
点字のしくみと成り立ちを順列の考えを利用して考察することで、現実事象との関連や単元の
有用性を感じるのが、この教材のねらいである。
点字は下図のように、6つの点で文字や数字を表している。ここでは、「あ」から「ん」までの46音
の表し方について考察する。
まず、6つの点で表される点字の組合せを考えると、6つの点のONとOFFの重複順列なので、
26-1=63通りで表すことができることがわかる。
26から1を引くのは、すべての点がOFFになっているときは表せないからである。
しかし、この63通りに順番に「あ」から「ん」までを割り当てていくのでは、点字を覚えにくいので、
覚えやすいように行と段で割り当てている。
まず、段は「あ段」から「お段」まで5通りあるので、割り当てる点が3つ必要(8=23より)なため、
上図の①、②、④を使って表している。つまり、「あ段」から「お段」は以下のように表すことに
なっている。
一方、行は「あ行」から「わ行」まで10通りあるので、残り3つの点では表すことができない。
よって、「あ行」から「ま行」までと「ら行」の8通りを、③、⑤、⑥の3つの点を使って表している。
例えば、「と」は、「お段」「た行」なので、以下のように表す。
残りの「や」「ゆ」「よ」「わ」「を」「ん」の6つの字は、表し方が別になっている。
濁点、半濁点は、点字1つ(6つの点)で表すことはできず、点字の前に以下のような点字を
もうひとつつけて表す。
例えば、「ど」は、「と」の前に濁点の点字をつけて、以下のように表す。
6点式の点字は1825年にフランスのルイ・ブライユが開発したといわれ、
日本式点字は1890年に石川倉次が考案したといわれている。
歴史とともに、どうしてこのようなしくみになったかを数学的に考察するとよい。
(参考文献)
[1] 茂木悟(2003)「身近な事象を題材にし、探究的な活動を通して数学のよさを味わう」,
『高等学校の数学の授業と授業研究』,国立教育政策研究所,pp.27-42.