何人かでくじを引くとき、何番目に引くのがよいかを考察することで、確率について深く理解し、
確率に興味をもち、単元の有用性を感じるのが、この教材のねらいである。
プロ野球のドラフト会議で、ある有望なX選手を8球団が指名したため、
8球団でくじを引くことになった。A球団から順に、B,C・・とH球団まで8球団がくじを引くとき、
どの球団が一番有利だろうか?(実際のドラフト会議では下位チームからくじを引くのだ
が・・・)
計算する前にまず予想してみよう。予想を聞いてみると、引く順番が後ろにいくほど当たりが先
に出てしまう印象が強いのか、A球団が有利という予想も出てくるが、当たりくじが1本だから
全球団同じという予想も多いだろう。
各球団の当たる確率を、まずは条件付確率を使って計算してみよう。
当たりが1本なので計算は楽である。
A球団が当たる確率は、1/8
B球団が当たる確率は、A×B○しかないので、(7/8)×(1/7)=1/8
C球団が当たる確率は、A×B×C○より、(7/8)×(6/7)×(1/6)=1/8
D球団が当たる確率は、A×B×C×D○より、(7/8)×(6/7)×(5/6)×(1/5)=1/8
以下同様にすると、E~Hの当たる確率も1/8であることは容易に考察できる。
よって、「残りものに福がある」ということわざもあるが、くじを引く順番にかかわらず当たる
確率は同じであることがわかる。
次に順列を使って計算してみる。考え方は難しいが、これはB~H球団をまとめて考えること
ができる。8本のくじを1列に並べることを考えると、全事象は8!で、そのうちB球団の場合
2番目に当たりのくじとはずれ7本を並べる場合なので、並べ方は1×7!となる。
よって当たる確率は(1×7!/8!)=1/8である。
これはどの球団に対しても同じ式になるので、確率も同じであることがわかる。
次に当たりくじの本数を増やすことを考える。次の例で予想すると、先に引く方は有利という
予想が前のドラフト会議の例よりも増えることが考えられる。
10人でパーティーをしていた所、最後にケーキが3つ余り、誰が食べるかをくじ引きで
決めることになった。つまり、くじは10本中当たりは3本である。くじを引く順番は
Aさん,Bさん,Cさん・・Jさんとなった。さて誰が一番当たる確率が高いだろうか。
まずはそれぞれの当たる確率を条件付確率を使って計算してみる。考え方は簡単であるが、
当たりが3本なので計算は大変である。
Aさんが当たる確率は、3/10
Bさんが当たる確率は、A○B○またはA×B○なので、
(3/10)×(2/9)+(7/10)×(3/9)=2/30+7/30=9/30=3/10
Cさんが当たる確率は、A○B○C○またはA○B×C○またはA×B○C○またはA×B×C○
なので、(3/10)×(2/9)×(1/8)+(3/10)×(7/9)×(1/8)+(7/10)×(3/9)×(2/8)
+(7/10)×(6/9)×(3/8)=6/720+42/720+42/720+126/720=216/720=3/10
以下同様にすると、E~Hの当たる確率も3/10となるが、計算は大変である。
よって、次にに順列を使って計算してみる。考え方は難しいが、これもB~Jさんをまとめて
考えることができる。
10本のくじを1列に並べることを考えると、全事象は10!で、そのうちBさんの場合2番目に
当たりのくじを並べ、残りの当たり2本とはずれ7本を並べる場合なので、並べ方は
{(1×9C2)×3!}×7!となる。
よって、当たる確率は{(1×9C2×3!×7!)/10!}=3/10である。
これは誰に対しても同じ式になるので、こちらの例でも確率も同じであることがわかる。