最大容積の箱を作ろう

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3次関数の最大値

最大容積の箱作りによって、微分に興味をもち、微分と現実事象との関連性を感じ、

単元の有用性を感じることが、この教材のねらいである。


 30㎝×30㎝の厚紙を使って容積が最大になるような、ふた付きの箱を作ってみよう。

 

6~7人の6つの班に分け、30㎝×30㎝の厚紙を使って容積が最大になるような直方体を作る。

一般的な展開図から作られた箱の容積の最大値を求めるのに、微分を使うことが目的となる

が、厚紙の使い方によっては一般的な展開図よりさらに大きな容積の箱を作ることができる。

①一般的な展開図

図1のような一般的な展開図を考える。各辺の長さが正

であるから、x>0,15-x>0,30-2x>0より、0<x<15

V=x(15-x)(30-2x)

 =2x3-60x2+450x

V’=6x2-120x+450

  =6(x-5)(x-15)より、増減表を書くと下表のようになる。

x   15 
V’
1000

 

 

 

よって、グラフは図2のようになり、

0<x<15から、x=5のとき、Vの最大値は

V=5×10×20=1000となる。

よって、最大容積は1000cm2となる。

 

②段ボール型展開図

図3のような段ボール型展開図を考える。各辺の長さが正

であるから、2x>0,15-2x>0,30-2x>0より、0<x<7.5

V=2x(15-2x)(30-2x)

 =8x3-180x2+900x

V’=24x2-360x+900

 =12(2x2-30x+75)

V’=0となる x=(15±5√3)/2 より、増減表を書くと下表の

ようになる。

x  (15-5√3)/2 7.5 (15+5√3)/2 
V’
750√3-750√3

 

 

 

よって、グラフは図4のようになり、

0<x<7.5から、x=(15-5√3)/2のとき、Vの最大値は

V=(15-5√3)×5√3×(15+5√3)/2=750√3となる。

よって、最大容積は750√3cm2≒1299cm2となり、

①の一般的な展開図のときよりも大きい。

実際の段ボールがこの展開図になっているのは、使い勝手

もあるが、一般的な展開図よりも最大容積を大きくできるからという理由も考えられる。このこと

について考察するとよい。

③お菓子の箱型展開図

図5のようなお菓子の箱型展開図を考える。

底面が1辺が 15√2-x の正方形で、高さが x の直方体である。

各辺の長さが正であるから、2x>0,15√2-x>0より、

0<x<15√2

V=x(15√2-x)2

 =x3-30√2x2+450x

V’=x2-60√2x+150

  =3(x-5√2)(x-15√2)より、増減表を書くと下表のようになる。

x  5√2 15√2 
V’
1000√2

 

 

 

よって、グラフは図6のようになり、

0<x<15√2から、x=5√2のとき、Vの最大値は

V=5√2×10√2×10√2=1000√2となる。

よって、最大容積は1000√2cm2≒1414cm2となり、

①の一般的な展開図、②の段ボール型展開図よりも

大きい。つまり、これがこの厚紙で作ることができる

最大容積の箱ということになる。

④ 実験の考察のポイント

1)切り取って不要となる厚紙の面積が小さいほど容積が大きくなるという考えが出てくるが、

 実際それでは、①~③とも x の値が小さくなり、高さがない容積の小さい箱ができてしまう

 ことがわかる。使う厚紙の面積が大きいほど容積が大きくなるわけではないことがわかる。

2)立方体にした方が、容積が大きくなるという考えが出てくる。これは、長さが一定の針金で

 長方形を作るときに、正方形のときに面積が一番大きくなるという経験の類比からくる。

 しかし、この場合は、立方体のときに容積が一番大きいわけではないことがわかる。

<参考文献>
[1]黒田俊郎(1977),『微分のひみつ』,三省堂.