ドラえもんのバイバイン

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指数・対数

非現実的ではあるが、漫画「ドラえもん」の現象を分析することから、指数・対数に興味をもち、

指数の発散のすごさと常用対数の有用性を感じるのが、この教材のねらいである。

漫画「ドラえもん」の17巻に「バイバイン」という話がある。これは、「バイバイン」という

薬をくりまんじゅうにかけると、食べない限り5分間で2倍に増えていくというものである。

しかし、のび太が食べきれなかったので、くりまんじゅうが増えすぎてしまい、仕方なく

ドラえもんが宇宙のかなたに送ってハッピーエンドという話である。

ドラえもんとしては、宇宙は広いので大丈夫ということなのだろうが、くりまんじゅうは

宇宙でも増え続け、いつか宇宙をうめつくすだろう。それはいつだろうか?

予想して次の中から選んでみよう。

①1日位,②1年位,③100年位,④1000年位,⑤それ以上。

実際に聞いてみると、②の予想、つまり「1年で埋めつくす」という回答が多かった。

①宇宙の大きさ

宇宙を半径150億光年の球として考える。1光年は光が1年間に進む速さである。

光は1秒間に地球を約7周半するから、1秒間に4万km×7.5=30万km進むので、

1年間では30万×60秒×60分×24時間×365日=9兆4600億kmである。

よって、1光年を約10兆km=1013km=1016として考える。

すると150億光年は、1.5×1010光年=1.5×1010×1016(3/2)×1026

ゆえに、宇宙の体積は、(4/3)π×{(3/2)×1026}3(27/2)×10783と考える。

(※π≒3として計算した。)

②くりまんじゅうの大きさ

くりまんじゅう1個の大きさを100cm310-43とする。

くりまんじゅうは5分で2倍になるので、1時間では12回分裂して212倍になる。

よって、1個のくりまんじゅうはn時間後には、12nになるので、

n時間後のくりまんじゅうの体積は、12n×10-43と考える。

③くりまんじゅうの体積が宇宙の体積と同じになるのは何時間後?

指数方程式12n×10-4=(27/2)×1078を解けばよい。

    212n=(27/2)×1082で、両辺の常用対数をとると、

  log1012n=log10{(27/2)×1082

ここで、log102≒0.3010、log103≒0.4771とすると、

12n×log102=log1027-log102+log101082 = log103-log102+82

        =3log103-log102+82

 12n×0.3010=3×0.4771-0.3010+82

    3.612n=83.1303

よって、n≒23.015(時間)となり、連続量で考えると約23時間1分

実際は5分で分裂するので、23時間5分になったとき、つまり、1日もしないうちに

宇宙はくりまんじゅうに埋めつくされてしまい、この話はハッピーエンドではないことがわかる。

④対数を使わないで考える場合

指数の範囲だけでこの話題を扱う場合には、210=1024であるから、210≒103の近似

を使って求めるとよい。

1日後のくりまんじゅうの大きさは、n=24とすると、212×24×10-4=2288×10-43となるが、

ここで、2288×10-4=(210)28.8×10-4=(103)28.8×10-4=1086.4×10-41082.43

と近似できる。宇宙の大きさは、(27/2)×10781.35×10793だから、

1日後のくりまんじゅうの大きさの方が大きく、この計算でも1日もしないうちに宇宙は

くりまんじゅうに埋めつくされてしまうことがわかる。

実は最近のテレビバージョンでは、ドラえもんがくりまんじゅう1個を宇宙に送り忘れている

というオチで終わるのであるが・・・

(参考文献)
[1]何森仁,小沢健一,近藤年示,時永晃 共著(1995),「漫画「ドラえもん」で倍々法則」,『のびのび数学』,三省堂.