上皿てんびんで不等式を作る

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一次不等式の導入

実際に上皿てんびんを用意し、いろいろな重さの物と分銅を使って、不等式を立て、

不等式と等式の関連やその概念、不等式の性質を感じることが、この教材のねらいである。

①等式(方程式)をたてる

不等式と等式(方程式)は全く異なる式であるという認識をしている人も多い。

よって、はじめに不等式と等式の関連やその概念について考えてみる。

まず、重さを量りたい物を3種類(例えば消しゴム、卓球の球、単2電池など)各2個ずつ

用意する。

次に上皿てんびんの左皿に3種類の物のうち、2番目に重い物(ここでは消しゴムとする)2個

と10gの分銅3個を乗せ、右皿には上皿がちょうどつりあう分の分銅(ここでは5個、50gとする)

を乗せる。このときのてんびんの状態を見せ、消しゴムの重さをxgとしたときの式を立てる。

答えは、 2x+30=50 となる。

②等式の性質を確認する

次に、てんびんの両側から分銅を3個(30g)をとり、その状態を式で表現する。

等式の性質を意識して、 2x+30-30=50-30 より、 2x=20 とする。

そして両側の皿に乗っている物を半分にして、 2x/2=20/2 より、 x=10 となる。

③不等式をたてる

今度は、上皿てんびんの左皿に3種類の物のうち、1番重い物(ここでは単2電池とする)2個と

10gの分銅3個を乗せ、右皿にさっきと同じの分銅(5個、50g)を乗せる。左皿の方が重いので、

てんびんは左に傾く。再びこのときのてんびんの状態を生徒に見せ、消しゴムの重さを xg

したときの式を考える。

不等号を用いて表せるということをヒントに、 2x+30 > 50 と表せることを学習する。

電池を卓球の球に変えて、同様に式を立てる。こんどはてんびんは右に傾いているので、

答えは、 2x+30 < 50 である。

④不等式の性質が成り立つことを感じる

てんびんの両側から分銅を3個(30g)をとっても、てんびんが右に傾いている状態は変わらない

ので、 2x+30-30 < 50-30 より、 2x< 20 とできることから、

両辺から同じ数を引いても不等号の向きが変わらないことをイメージすることができる。

また分銅をもとに戻すと、両辺に同じ数をたしても変わらないこともイメージすることができる。

そして両側の皿に乗っている物を半分にしても、てんびんが右に傾いている状態は変わらない

ので、 2x/2 < 20/2 より、 x < 10 とできることから、

両辺を同じ正の数で割っても不等号の向きが変わらないことをイメージすることができる。

分銅をもとに戻すと、両辺に同じ正の数をかけても変わらないこともイメージすることができる。

このとき、「正の数をかけても、正の数で割っても」を強調する必要がある。

ゆえに式から、卓球の球の重さは10g以下であることがわかる。

(卓球の球の実際の重さは3g位である。)

電池でも、不等号の向きを変えて同様なことができる。

(単2電池の実際の重さは60g位である。)

⑤問題点

一番大切な性質である両辺に負の数をかけたり、負の数で割ったりすると

不等号の向きが変わることはてんびんなどの具体物を通して見せることが難しいので、

その部分をどのように学習していくかが課題である。

(参考文献)
[1]「上皿てんびんと身近な品物」,「山口県中学校数学教育会『数学指導ハンドブック第2集』」