身のまわりの放物線を2次不等式にして分析することで、2次不等式と現実事象との関連や
単元の有用性を感じるのが、この教材のねらいである。
サッカーで図1のように、V0=10√2m/t(≒51km/h)の速度、45°の角度から少し浮かせた
ループシュートを打つとき、シュートする位置(ゴールまでの距離)と、そのときのキーパーの
位置がそれぞれどのくらいのときにゴールが決まるだろうか。ただし、シュートはキーパーの
正面に打つものとし、キーパーの最高到達点は2.55m、ゴールの高さは2.4m(実際は2.44m)
であるものとする。
x方向の速度Vx=10√2×cos45°=10m/t、
y方向の速度Vy=10√2×sin45°=10m/t
なので、重力加速度を10m/t2とし、空気抵抗、風、打球の回転等を無視すると、
x=10t …①
y=10t-5t2 …② となる。
①より、t=x/10から、これを②に代入すると、y=-x2/20+x…③となる。これを平方完成すると、y=-(1/20)(x-10)2+5となるため、グラフは図2のようになる。
まずこのシュートがキーパーに取られないためには、
シュートを打つ人から見たキーパーの位置が、
シュートがキーパーの最高到達点より高くなるような位置
であればよいので、-x2/20+x>2.55より、
x2-20x+51<0、(x-3)(x-17)<0 から、3<x<17とな
る。よって、キーパーの位置がシュートを打つ位置から見て3mより遠く17mより近い位置に
いるときには、このシュートはキーパーに取られないことになる。
また、このシュートがゴールに入るためには、シュートを打つ人から見たゴールの位置が、
シュートがゴールの高さより低くなるような位置であればよいので、-x2/20+x<2.4より、
x2-20x+48>0から、x<10-2√13≒2.8、x>10+2√13≒17.2
題意より2.8mより近いところからシュートを打つことは考えないとすると、
ゴールから17.2mより離れているところからであれば、このシュートはゴールに入ることになる。
ペナルティーエリアまでの距離が16.5mであるから、ペナルティーエリアのやや外からのシュー
トということになる。
よって2つの結果から考察すると、このシュートはゴールから17.2mより離れているところから
打ち、キーパーがループシュートを打つ人までの距離が2.8mより近いところ(ゴールから14.4m
離れたところ)まで前に出ているということは考えにくいので、キーパーがシュートが到達する
時間までに、ループシュートを打つ人までの距離が17mの地点(ゴール前0.2m地点)まで戻って
ジャンプできないところにいるときに有効なシュートであると分析することができる。
ちなみに、このシュートが打たれてからゴールに入るまでの時間は、17.2=10tより、
t=1.72秒ということになる。