校舎の高さの測定実験

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正接(タンジェント)の応用

高さを測る物の真下から 1(m) はなれた地点から、物の

先端を見上げた角度(仰角)を θ とすると、その物の

高さは tanθ(m) である。

よって、高さを測る物の真下から b(m) はなれた地点

から測ると、図1のように、その物の高さhは、h=btanθ(m) となる。

実験を通じて、三角比の有用性を感じることが、この教材のねらいである。

①外へ出て実験をする

校舎など実際の高さがわかっている物を共通の測定物とし、他は好きな物の高さを測定する

実験を行う。

メジャーと手作りの角度測定器(図2)を用意する。メジャーが用意

できた数だけの班に分けて実験をする。角度測定器は、厚紙と糸と

五円玉などのおもりがあればできるので授業で作ってもよい。

角度測定器の使い方は以下の通りである。

  1. 赤い線を上にし、矢印を目標の方向に向ける。
  2. 目線を合わせ、目標を見る。
  3. 糸のゆれが静止したら押さえ、目盛りを読みって角度を測る。
  4. 測定を何回か繰り返し、平均をとって、それを角度 θ とする。

なお、メジャーを多数用意できない場合は、距離を 10(m) に固定し、10(m) の長さに切った

ひもを用意するとよい。また、ひもを使わずに歩測を使う方法もある。あらかじめ 10(m) に

測った白線をひいておいて、それぞれが 10(m) を何歩で歩けるかを測り、高さを測りたい物

の真下から測った歩数を歩き、角度を測定する。正確性には欠くが、好きなものを簡単に

測れる機動性にすぐれている方法である。

また、角度を 45°に固定すれば、メジャーで測った長さがそのまま物の高さになるが、

必ずしも 45°になる地点まで離れられるとは限らないし、この方法だけで測定すると三角比

を使わないので、実験では避けたい。しかし、解決方法を考える場面では、話題にのぼる

ことを想定したい。

②教室に戻ってデータ処理をする

計測したデータから計算をして、校舎など物の高さを求める。tanθ の値は、教科書の最後に

ついている三角比表で読み取る。この値は図1のように、目線の高さから先端までの長さなの

で、実際の物の高さは、「計算値+目線の高さ」である。

目線の高さは、自分の身長-10cm前後で、きりのいい数値でそれぞれに設定させる。

ある学校の校舎は高さが15.7mであったが、測定結果は、h=10×tan55°+1.6=15.9mで、

誤差は1.2%であった。

(参考文献)
[1]何森仁,小沢健一,近藤年示,時永晃 共著(1995),「角度測定器」,『のびのび数学』,三省堂.
[2]原恵理(1995),「「測る」(三角比)の授業より」,『数学教室1995.4 №521』,国士社.