ホームランになるか?

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2次関数の最大値

身のまわりの放物線を2次関数の式を用いて分析することで、2次関数と現実事象との関連や

単元の有用性を感じるのが、この教材のねらいである。

①ホームランになるか?


 東京ドームで図1のように、V0=40m/t(=144km/h)の速度、45°の角度でバックスクリーン

 方向に放たれた打球は、天井に当たらずに、スタンドまで届くホームランになるだろうか。

 ただし、東京ドームの天井の高さは56m、バックスクリーンのフェンスまでの距離は120m、

 フェンスの高さは6mとする。

 

x方向の速度V=40×cos45°=20√2m/t、

y方向の速度V=40×sin45°=20√2m/t

なので、重力加速度を10m/t2とし、空気抵抗、風、打球の回転等を

無視すると、

x=20√2t    …①

y=20√2t-5t2 …② となる。

①より、t=x/20√2から、これを②に代入すると、y=-x2/160+x…③となる。

これを平方完成すると、y=-(1/160)(x-80)2+40となるため、グラフは図2のようになる。

よって、打球の最高点は40mで天井には当たらず、

打球は160m飛ぶことになる。

また120m地点のフェンスに当たらないかを調べると、

x=120を代入して、y=-(1/160)(120-80)2+40=30となり、

120m地点でまだ打球の高さは30mもあり、

楽々とフェンスを越えてホームランになることがわかる。

①天井に当たるか?


 東京ドームからの野球のラジオ実況中継でアナウンサーが次のように言った。

 「打ったぁ、これはホームベースの真上に上がったキャッチャーフライ。キャッチャー構えて

 取りました。あわや天井に当たるというかという大飛球でした。」

 打球が上がっている間はちょうど6秒間だった。果たして本当に天井に当たりそうだった

 のだろうか?ただし、東京ドームの天井の高さは56mであるとする。

 

打ち上げた打球の初速をV0m/tとすると、y=V0t-5t2 において、t=6 のときy=0になるから、

0=6V0-180より、V0=30m/t。よって、y=-5t2+30t…④となる。

これを平方完成すると、y=-5(t-3)2+45となり、yの最大値は45mとなる。

天井の高さは56mなので、まだ天井まで11mも余裕があったことがわかる。

最近は東京ドームの天井に当たる打球も多いが、ちなみに56mの天井に当る打球は、

初速V0=4√70≒33.5m/t以上で、滞空時間は(4√70)/5≒6.7秒以上であると考えられる。

(参考文献)
[1]西村圭一(2003),「生徒の学習の必要性を引き出す授業」,『高等学校の数学の授業と授業研究』,
  国立教育政策研究所,pp.126-134.