平均点を取った人が順位がまん中とは限らないことを考察することから、統計に興味をもち、
統計について理解を深めるのが、この教材のねらいである。
クラスでA君はテストで平均点ちょうどだった。A君はそのことを家でお母さんに報告すると、
お母さんは、「じゃあ、ちょうどクラスでまん中くらいの順位だね。」と言った。
果たして本当にそう言い切れるだろうか?
まず答えを予想し、どのようなケースがあるかを議論するとよい。
例えば、40人のクラスで平均点が50点、A君も50点だとする。
極端な例を出すと、55点の生徒が34人いて、A君が50点、20点の生徒が3人いて、
10点の生徒が2人いるとすると、平均点は(55×34+50+20×3+10×2)/40=50点となる。
しかし、A君の順位は35位である。
これが入試の場合は、平均点を取っても不合格になってしまう可能性が高いのである。
このようなケースの問題作りを通して、平均の理解を深めるとよい。
ところで上記のような例の場合、中央値(メジアン)を求めることが大切になってくる。
上のデータを少し変えて、次のようなデータを考えてみよう。
得点 | 58 | 56 | 54 | 52 | 50 | 20 | 10 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
人数 | 11 | 8 | 2 | 13 | 1 | 3 | 2 |
すると、平均点は(58×11+56×8+54×2+52×13+50+20×3+10×2)/40=50点となる。
A君の点数は50点で平均点と同じだが、やはり順位は35位である。
このとき、メジアンは40人のまん中の20番目と21番目の点数の54点である。
平均値ではなく、メジアンの54点より上かどうかで(あたり前ではあるが)、自分の位置を考える
とよい。
年収の平均などは、あまり意味をなさないことも多い。例えば、ある町の40歳の平均年収が
1600万円としよう。Bさんの年収は800万円である。平均年収の半分なので、Bさんの年収は
低いのか?というと、そうでもないケースが多い。
例えば、100人が年収が以下のような分布だったとする。計算すると平均年収は1600万円
となる。
年収 | 300万 | 500万 | 800万 | 1000万 | 10億 |
---|---|---|---|---|---|
人数 | 27 | 25 | 38 | 9 | 1 |
年収10億円というメジャーリーガー級の給料をもらう人が一人でもいれば、平均値は意味を
もたなくなることが、この例からわかると思う。
このとき、メジアンは50番目と51番目の年収500万円となり、Bさんはまん中より上ということに
なる。また、もっとも度数が多い最頻値(モード)を考える方法もある。この場合のモードは38人
いる年収800万円である。