消防法や建築基準法に出てくる数字には根拠があり、その根拠を三角比を用いて考察する
ことで、この単元の有用性を感じることが、この教材のねらいである。
はしご車は、はしごの長さが30mのものが一般的であり、はしごが最大75°の角まであがる
ということである。このとき、どれくらいの高さまではしごをかけることができるだろうか?
またそのときに必要な道路の幅も考えよ。ただし、消防車の高さは3m、幅は2mであると
する。
高さ h=3+30×sin75°≒3+30×0.9659=31.977m
必要な道路の幅 x=2+30×cos75°≒2+30×0.2588=9.764m
となる。これによると、高さ約31m、ビルにして10階くらいの高さに
はしごをかけることができる。しかし、いくらはしごの高さが足りて
も、道路の幅が約10mないと、はしごをかけることができないこともわかる。
消防法第8条の2によると、31mを超えるビルを高層建築物という。いわゆる高層ビルである。
31mというと10階建てのビルに相当する。東京消防庁は、「共同住宅以外の高層建築物では、
火気使用設備に都市ガスを使用する器具はなるべく使用せず、やむを得ず使用するときは、
31m以下の階で使用する。31mを超える階では展望を目的とした飲食店など、機能上必要と
認められるものに限られる。」などと行政指導している。この31mというのが、はしご車が届く
距離からきていると考えられる。
また、建築基準法では、道路斜線制限という法律で目の前の
道路の幅に対する建物の高さを制限している。これは、まず
建物は幅2m以上道路に接している必要があり(消防車が
通れる幅ということだろう)、ビルなどの商業系用途の場合、
その前面道路の反対側の境界から敷地に向かって、
図2のように、1:1.5の斜線内に入る高さに立てなければならないのである。
つまり、31mの高さの建物を建てるためには31÷1.5≒20.67mの幅が必要ということである。
これは、はしご車がはしごをかけるために必要な幅としては十分である。ちなみにこのとき、
tanθ=1.5のときのθ≒56.3なので、はしご車のはしごを56.3度まで立てればよいことになる。
住宅地の場合は少し厳しく1:1.25である。例えば高さ8mの3階建ての家を建てるのに必要な
幅は、8÷1.25≒6.4mとなる。
はしご車で、はしごの長さが最長のものは50mである。同様にはしごが最大75°の角まで
あがるとき、最大どれくらいの高さまではしごをかけることができるだろうか?
またそのときに必要な道路の幅も考えよ。
高さ h=3+30×sin75°≒3+50×0.9659=51.295m
必要な道路の幅 x=2+30×cos75°≒2+50×0.2588=14.94mとなる。
これによると、高さ約52m、ビルにして16~17階くらいの高さにはしごをかけることができる。
しかし、いくらはしごの高さが足りても、道路の幅が約15mないとはしごをかけることが
できないこともわかる。