自動販売機は関数か?

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関数の定義

身近な例を概念モデルとして、関数とは何かをイメージし、関数の定義を理解することが、

この教材のねらいである。

①自動販売機は関数か

自動販売機に対して、入力を「お金」出力を「飲み物」にしても関数にはならない。これは例え

ば、入れるお金を「120円」にしても、それに対する出力は「コーラ」もあれば「オレンジジュース」

もあり、1対1の対応にならないからである。

しかし、入力を「ボタン」、出力を「飲み物」にすると関数になる。押したボタンに対応して、その種

類の飲み物が出てくるからであり、「ボタン」と「飲み物」は1対1対応になっているからである。

つまり、自動販売機において、出てくる飲み物は押すボタン関数であるが、

出てくる飲み物は入れるお金関数ではないのである。

要するに同じ自動販売機についてでも、「何が何の関数か」で変わってくるのである。

この例は、関数を考えるときに、入力と出力、つまり、「何が何の関数か」も考えなければならな

いということをイメージさせる例として利用できる。

○関数×関数でない
 ボタン      ⇒飲み物  お金 ⇒飲み物
  コーラのボタン⇒ コーラ   /⇒ コーラ
オレンジのボタン⇒ オレンジジュース120円 ⇒ オレンジジュース
コーヒーのボタン⇒ コーヒー   \⇒ コーヒー

②喫茶店のウエイトレスの例

上の例から考えていくと、いろいろな機械はあることに対して1つの対応した結果を出してくれる

ので、関数である場合が多い。それに対して、人間はあることに対して、その日の気分などに

よって様々な対応が考えられるので、関数とはいえないと考えることもできる。

例えば、ある人に背中をつつくなどのいたずらをしても(入力)、機嫌のいい日は笑って

すます(出力)が、機嫌の悪い日は怒り出す(出力)というケースも考えられる。

しかし、喫茶店のウエイトレスなどは関数となるケースが多いのではないだろうか?

例えば、ウエイトレスにコーヒーを注文したら、コーヒーが出てくるであろう。水をお願いすると、

水を持ってきてくれる。つまり、ウエイトレスにおいて、「出てくる物」は「注文」の関数といってよ

いだろう。また、水を頼むときに注文の仕方はいろいろあるが、「水ください」といっても、

「お冷やください」といっても、英語で「water,please!」といっても水が出てくる(たぶん?)。

ここで、ウエイトレスにおいて、注文して出てくる物は、注文の言い方関数であるといえるが、

これを間違えて、注文の言い方は注文して出てくる物の関数である」というと、

注文して出てきた物から注文の言い方が決まることになるので、間違いになってしまう。

○関数×関数でない
 注文      ⇒  物  物  ⇒  注文
「水ください」   ⇒\   /⇒ 「水ください」
「お冷やください」⇒ 水水   ⇒ 「お冷やください」
「water,please!」 ⇒/   \⇒ 「water,please!」

上記の話は、例えば、y=x2において、 y は x の関数であるが、 x は y の関数ではないことを

イメージさせる手助けになる。

○関数×関数でない
 x ⇒ y  y ⇒ x
  2 ⇒\  /⇒ 2
      4
 -2 ⇒/  \⇒ -2

③ブラックボックスで関数の実演

上記の話や関数の定義のとき、ダンボールで作った手作りのブラックボックスを用いて実演す

ると理解しやすくなる。このブラックボックスとは、カードを入れると裏返しになって出てくる仕組

みの箱であるが、まず1を入れたら2が出てくるところを見て、次に2を入れたら4が出てくるとこ

ろを見て、「3を入れたら?」(答え"6")とか「この箱のしくみは?」(答え"2倍する")などと実際

になじみの関数を使って話をはじめたり、ボタンのカードを入れたらジュースのカードが出てくる

のを見たりして、利用することができる。

④関数をさがそうコンテストの実施

上記の自動販売機等の話などをしたあと、「関数をさがそうコンテスト」と題して、

身のまわりにあるこのような関数(写像)を探す。数字に関係なくてもよく、1対1対応になって

いればよいので、いろいろな発想が出る。

「ガソリンスタンドにおいて、金額は入れたガソリンの量の関数である」といった関数的なものに

限らず、「電話機において、かけた先の家は、押した番号の関数である」といった1対1対応の

写像的なものや、「車において、加速度は、踏んだアクセルの度合いの関数である」といった

入力が連続性のあるものまで出た。コンテストの結果発表として、MVPや優秀賞など発表して

紹介するとよい。数学が苦手な人がこのコンテスト等で活躍し、意欲を高めている場面が見

られる。コンテストに対する説明が不十分だと、数式(1次関数等)で表せるものばかりになって

しまうので注意である。自由に発想できるように展開していきたい。

(参考文献)
[1]足立久美子,「ティッシュの空き箱でブラックボックス」.