オスのマッコウクジラの社会


マッコウクジラは、高度に社会的な動物です。メスたちはユニットと呼ばれる母系の集団を作り、基本的に一つのユニットの中で一生を過ごします。太平洋ではいくつかのユニットがまとまって一つのグループを作っています。メスのグループは基本的に温かい海域で生活しています。

一方、オスのマッコウクジラは、性成熟前に生まれた群れを離れて、同じような大きさの他のオスと群れを作ります。不思議なことに、この群れは個体の成長とともに構成頭数が減っていきます。最初は十数頭ほどの群れですが、徐々に減って最後は2頭か単独になります。さらに成長するにつれ生息海域を高緯度に移していきます。このような情報は、かつて大規模に行われた捕鯨で得られた標本から推測されてきたことです。

しかし、このオスの群れはどのように作られるのでしょうか。また群れはどの程度の期間維持され、どのように頭数が減っていくのでしょうか。これらのことは全くわかっていません。

マッコウクジラのユニットにいるメスの数と出産間隔を考えると、オスの群れが近縁個体だけでできているとは考えられません。複数の集団から来た個体が一緒に過ごすようになると考えられます。彼らはどのように見ず知らずの個体との結びつきを作るのでしょうか。そして、その結びつきがどのように解消されていくのでしょうか。これを明らかにすることを目的に、北海道根室海峡と長崎県の五島南方海域において個体識別に基づく長期調査を行っています。

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