長崎沖のハンドウイルカの調査

ハンドウイルカは水族館でもおなじみのとてもよく知られたイルカです。日本で飼育されているハンドウイルカはほぼ全て和歌山県の太地町で追込み漁業により捕獲されています。本来は食用として捕獲されていましたが、現在では食用よりも飼育用の需要が大きいようです。

この追込み漁業での捕獲数は、資源評価に基づいて水産庁が和歌山県に配分しているものです。資源評価には、単純にイルカの数だけでなく、捕獲しているイルカの個体群がどの範囲のものかという情報が不可欠です。しかしながら、イルカの個体群の情報は基本的に目視調査で得られた分布情報に基づいており、日本の太平洋沿岸の広い範囲に分布するハンドウイルカが一つの個体群なのか、小さな地域個体群に分かれているのかはきちんとわかっていないのです。

最近、個体識別に基づく小型ハクジラの個体群や社会構造の調査が行われるようになってきました。それによると同じ個体群の中に、個体の行き来が少ないコミュニティが存在することや、別の社会集団が同じ生息地を利用している例が報告されてきています。このような構造は、単純な目視調査ではわかりません。またこのような個体群構造をどのように漁獲可能数に反映させるかについても難しい問題があると思われます。

我々は、長崎の沿岸に生息するハンドウイルカを対象に、個体識別に基づく長期生態調査を行っています。このハンドウイルカは漁獲の対象にはなっていませんが、この個体群の実態を明らかにすることで、他の海域のハンドウイルカ個体群構造にも応用可能な情報が得られるものと考えています。

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