独断的JAZZ批評 611.

KEVIN HAYS
メリハリがないし饒舌、長広舌
忍耐を必要とするピアニストだ
"LIVE AT SMALLS"
KEVIN HAYS(p), DOUG WEISS(b), BILL STEWART(ds)
2008年8月 ライヴ録音 (SMALLS LIVE : SL-0002)

KEVIN HAYSというピアニストは僕にとって悩ましいピアニストの一人だ。捉えどころがないというのか、本当の姿がどれなのか良く分からない。例えば、このアルバムと同じメンバーで2005年に録音した"FOR HEAVE 'S SAKE"(JAZZ批評 347.)では小気味の良い演奏をしている。特に5曲目の"BEAUTIFUL LOVE"なんかは3者の一体感や躍動感が横溢する素晴らしい演奏だった。対して、2006年録音の"THE DREAMER"(JAZZ批評 440.)では最後まで聴き通すのが苦痛なほどで、僕の紹介したアルバムの中では数少ない星ひとつという栄誉(?)を進呈したアルバムだった。
今回のアルバムは前掲のDAVID KIKOSKIに続いて"SMALLS"におけるライヴ録音盤。聴衆を目の前にしてどんな演奏をしてくれるのだろうか?


@"CHERYL" 
CARLIE PARKERの書いたブルース。前掲のDAVID KIKOSKIもPARKERのブルース"BILLIE'S BOUNCE"を演奏しているけど、ライヴという環境になると乗りの良いブルースを演奏したくなるものなのだろう。でもこのピアニストは一癖も二癖もあるね。容易に快い躍動感とはいかない。中音域でピアノの鍵盤を行ったり来たり。そして、饒舌だ。言ってみれば、しゃべりっぱなしで休まる暇がない。演奏にもメリハリがないので最後は飽きてしまう。
A"THE ANNIVERSARY WALTZ" 
どこかで聞いたことのある曲だと思っていたら、これが「ドナウ川のさざなみ」 流麗なワルツという印象はなくて、無骨、朴訥という印象。STEWARTのサクサクとしたブラシが聴けるのだが、3者の一体感が希薄。 
B"LOVING YOU" 
C"SCO MORE BLUES" 
似たようなフレーズ、似たような展開が延々と続く。変わり映えしないなあ。はっきり言って、何にも面白くない。9分間の忍耐。
D"LUDUS TONALIS" 
以下同文。
E"SWEET AND LOVELY" 
ベースがアルコに持ち替えて少々重苦しいテーマ演奏になっている。徐々にテンションは上がっていくが、これも忍耐の12分。
F"THE DREAMER"
 HAYSのオリジナル・バラード。このバラードは6分までで、一転して、多ビートの定型パターンを刻みだす。すると徐々に昂揚感を増した演奏にシフトしていく。しかし、鎖につないだ犬のように同じ場所をぐるぐると回るだけ・・・という感じを受けてしまう。14分以上続いて終わるときには、聴く側も「疲れた!」
 

結局のところ、今回もK. HAYSのピアノは冗漫な長広舌という印象を拭いきれないのだ。メリハリがないし饒舌、長広舌。僕には忍耐を必要とするピアニストだ。
B. STEWARTのドラミングも日頃の冴えがないね。いつもの、それを聴いているだけで楽しくなるような躍動する4ビートもないし、踊るような多彩なスティック捌きもない。
"SMALLS"のライヴ盤2枚を紹介したが、どうせ買うなら、DAVID KIKOSKIの方をお勧めしたい。録音はあまり良くないが演奏が良い。KEVIN HAYSのこのアルバムは録音はそこそこだけど演奏内容が良くない。どちらを選ぶかといえば、当然、演奏内容の良いアルバムでしょう。   (2010.03.04)

試聴サイト : http://www.smallslive.com/inner.cfm?siteid=372&itemcategory=37888&priorId=0&ProductId=27576



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